12.リィと弟
「ふっざけるナァ!」
自信満々で言った明日葉の言葉を、リィの叫びが邪魔をした。
不意を突かれて、きょとん、という顔をする明日葉を見て、リィが、ハッ、という顔をする。すぐに、頭をかきながら、明らかに「やってしまった」という顔になった。
「……おまえが白星の弟であるわけがないだろウ?」
「なぜそんなことが言える? 現に、オレはあんたらの名前を知っていたぞ?」
明日葉の言葉を聞き、開き直った様に、リィが小さく笑う。謎解きを楽しむような、人を小馬鹿にするような笑み。いつも、からかうことはあっても、人を馬鹿にすることはないリィには珍しい笑い方だ。
「おまえは、俺の名を知らなイ」
「はぁ? おまえは、リィだろ?」
明日葉が、意味が分からない、という風に笑う。思いっきり、人を馬鹿にしている態度だ。
――そうか。
リィのもう一つの名を知っている渚沙は、刀を持つ手に力を入れる。
――そうなると、“月弓”が本当の名……?
小松が、「大人げないぞ」といって、リィをなだめる。
「なんでそんなにこだわるのかは知らんが、白星というのは、たしか、政前皇帝に仕えていた時見だろう? それに、白星に兄弟がいるのは、事実だろう?」
その言葉に、明日葉が自信を取り戻したように、語気を強めた。
「それでは、オレが白星の弟ではない、という証明にはならないだろ? 何でそんなに疑うのか知らないけど、オレは、白星の弟」
「俺が、白星の弟だからダ」
明日葉の言葉を遮り、淡々と、リィが言った。そして、杖に巻いていた布を取り去る。
金色で細身の杖があらわになる。小さな輪は、左右3つずつ、合計6つ。
「あんただって、証拠はないだろう?」
“時見の杖”を見ても、態度を崩さない明日葉。
「まだ信じないか? では、時を見てやろうか」
そう言って、リィは、杖を振る。シャランシャランと、小さな輪同士がぶつかり、不思議な音を立てる。リィのまわりに風が渦巻き、リィの姿を、途切れ途切れに隠す。他の人に見えたのかは分からない。それでも、渚沙は見た。
――“月弓”。
小さな声で何かを呟くリィの目は、細くはあったが、確かに開かれていて、赤い目を見せていた。
――この前、白星の予言を言うときに、「白星の予言」であると、しつこく言っていた。それは、自分も時を見ることができ、それが違う結果になることを知っていたから――。
渚沙が考えるうちに、リィの声が大きくなる。
時は、災厄の子供に導かれン。
災厄の子供は目覚めタ。
運命は回り始め、時はもう止まらズ。
災厄の子供の元に集う5つの星。
5つの星が集うとき、世は乱れ、炎に包まル。
我が星を動かさば、時はまた歪ム。
その時、世の理は崩ル。
されど、その時は、我にも予測はせられズ。
リィのまわりを囲んでいた風が消えると、リィは、糸のように細い目に戻っていた。
驚愕の表情を浮かべている明日葉に、状況は一転、優位に立ったリィが、見下すように、冷たいまなざしを向ける。
「おまえは、誰ダ?」




