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11.チームワーク


 元来た狭い通路を通って帰り、全員が外に出ると、元来た通路を塞ぐように、背後に人が降り立った。

 人の気配を察した渚沙とリィが振り返り、物音に気付いた小松と咲耶が、2人に一瞬遅れて振り返る。

 渚沙が、振り向きざまに刀を抜き、その人物の首筋に向かって払った。

 しかし、その人は、刀が到着するのよりも、一瞬早く、低くしゃがむ。そのまま、渚沙に向かって、低い蹴りを入れようと足を払った。その蹴りを、リィが、布に包まれた杖を素早く突き立てて止める。人は、杖に激突した反動を利用して転がると、リィと渚沙を見た。

 そして、すぐに渚沙に向かって飛ぶと、突き上げるように蹴りを入れる。渚沙は、半歩後ろに下がる。それとほぼ同時に、リィが、今まで渚沙がいた位置、そして今は人の足の少し前の位置に、杖を突く。丁度杖にあたって跳ね返り、後ろに大きく体勢を崩す人。その瞬間、黄色い目の咲耶が、炎の檻を作った。

 炎の檻の中で、静かになる人。両手を挙げて、降参の意思を示した。


「へぇ。強いんだ、みんな。でも、オレは、あんたらを襲いに来たわけじゃない。もちろん、皇帝の差し金でも無い」


 その少年は、赤みがかった短い髪をしていて、瞳は、薄い緑色。ニイッ、と歯を見せて笑うと、偉そうに言った。渚沙が、刀を鞘に収めずに聞いた。リィも、足を肩幅に開き、少し前後にずらしていた。

「では、何者だというのだ?」

「あんたが渚沙だね。滅びた一族の王」

「……。なぜ、俺の名を知っている」

 渚沙の声が、低くなる。

 自分の発言のせいで、渚沙の放つ殺気が一気にむくれ上がったことに気づいているのか、気づいていないのか。態度を変えずに言葉を続ける。

「そこのちっこいのが咲耶、“災厄の子供”。そっちは日向の王、小松。妹は災難だったな。そこの糸目は、リィ」

リィが表情を一瞬だけ、ほんの少し緩める。しかし、すぐに引き締めた。その表情の変化に気づいたのは、隣で見ていた渚沙のみだった。

 その人は、とても偉そうに、堂々と言い放った。


「オレは明日葉(あすは)。みんなのことを知っているのは、白星の弟だから」


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