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ダンジョンマスターは神様です  作者: ひつじかい
番外編:本編後日談2
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憂国の士?

◇クリサンセマム皇国・マロン公爵領◇


 皇国に17のダンジョンが出現した三年後の事。


「ダンジョンは、立ち入り禁止にせねばならない!」


 とある居酒屋で、生ビールを飲み干した男が、ジョッキをテーブルに叩き付ける様に置いてそう言った。

 それに対し、同席している男達が「そうだそうだ」と同意する。


「生活が便利になればそれで良いのか?! 否! 良い筈が無い! このままでは、ダンジョンの文化侵略によって、我が国の伝統文化が失われてしまう!」

「そうだ!」

「その通り!」


 憂国の士らしき男達は、刺身を食べながら気勢を上げた。

 今の皇国に於いて、彼等の様な考えはとても珍しい。

 『神』が授けてくれたものを『侵略』だなどと敵視する者は、先ず居ないのだ。


「ダンジョンの所為で、失業した者も少なくない!」


 男は、クリームチーズを乗せたクラッカーを摘まむ。

 確かに失業した者はいるが、ダンジョンで優先的に雇っているので、それが嫌でなければ生活して行く事は出来る。

 この男達はそれを知らない。


「農作物も売れなくなっている!」


 多くの農家は、生産物をダンジョン【植物園】から(もたら)された品種にシフトしており、その収穫物は、普通に周辺の街に売る以外に、ダンジョン【食の都】にも納品している。

 ダンジョンの物を育てたくない・ダンジョンに収穫物を買って欲しくないと言うのでなければ、充分売れているのだ。

 また、【植物園】では、在来品種の改良や加工も行っており、それを【食の都】等で販売もしている。

 この男達はそれ等を知らない。


「伝統芸能も、失われつつある!」


 ダンジョン【劇場】では、皇国の伝統的な音楽や演劇等も、彼等を雇って上演している。

 【劇場】出現以前より客は減ったが、皇国の音楽や演劇を好む者もいるので、当分廃れる事は無いだろう。

 この男達は、上演している事は知っているが、少なからず客が入っている事は知らない。


「有害な食品を、美味さで誤魔化して食べさせている!」


 【食の都】では、当初、人体に有害な添加物が入った食品も売られていたが、現在では取り扱っていない。

 また、ダンジョン【学園都市】では、有害な添加物に替わる物を研究開発している。

 この男達は、それ等を知らない。


「奴等はあらゆる手を使い、皇国から金を吸い上げている!」


 17のダンジョン全てが、皇国人をなるべく雇い、税金を支払っている。

 この男達は、それ等を知っているが、決められた額の税金では足りない・全部返せと思っている。

 つまり、ダンジョンで販売している物や転移陣の利用料等を全て無料にしろと思っている。

 そんな事になったら、余計にダンジョン以外の収入が減ると思うのだが、彼等がその辺りを考える事は無い。


「何としてでも、ダンジョンを立ち入り禁止にせねばならない!」

「おー!」


 男達が居る個室は、大盛り上がり。

 後は、普通の宴会である。

 先程運ばれて来た、出来たてのフライドポテトや唐揚げを摘まみ、生ビールを飲む。


 では、彼等は先程の主張を実現する為に、一体どのような活動をするのであろうか?

 ダンジョンを立ち入り禁止にする権限は、其々の地の領主、或いは、皇国政府にある。

 皇国では、別に、直訴をしても、基本的に処罰される事は無い。

 しかし、彼等はそれをする気が無かった。

 処罰されると誤解している訳ではない。

 行動に移したくないだけだ。

 つまり、『自分達は何もしないけれど、思い通りになるべき・そうならないのは、社会が悪い』と、そういう事だ。




「あの人達、何なんですかね~?」


 居酒屋の店員である眷属は、首を傾げた。

 『ダンジョンを立ち入り禁止に!』と言い・ダンジョンを非難しながら、皇国の服では無い物を身に着けて・ダンジョン直営の居酒屋で・皇国料理ではない物ばかりを注文しているのだから、それも当然だろう。


「『周りの馬鹿共と違って、国の現状と未来を憂える事が出来る自分』に酔っているんじゃないの?」


 【食の都】のマスターである美味(みみ)は、そう言って肩を竦めた。

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