【温泉街】
◇クリサンセマム皇国・ダンジョン【温泉街】◇
ダンジョンマスターに転生して、私の名は、温下泉になった。
イージーモードのクリサンセマム皇国にダンジョンエリアを与えられ、ティール伯爵領にダンジョンを構えている。
私のダンジョン【温泉街】は、文字通り温泉が売りのダンジョンだ。
勿論、温泉饅頭や温泉卵をお土産に売っている。
後、プールが有るので泳ぎたい人も来る。ウォータースライダーが人気だ。
なので、水着や浮き輪等のレンタルもしている。
エステとかもあるよ。
此処には湯治客も来るので、最初は、療から眷族の医師や看護師を派遣して貰っていた。
でも、他人のダンジョンなので居心地が悪そうだった為、今はカスタムして召喚した自分の眷族を使っている。
ところで、この国のお風呂屋さんは混浴だそうで、うちにも混浴の浴場を設けてある。
水着は基本、非着用。
「また来たよ~、泉ちゃん」
「いらっしゃ~い。毎度どうも~」
常連さんに挨拶し、歩きながら考える。
うちのダンジョンの所為で、既存の温泉施設に行く人が少なくなっているかもしれないね。どうしようか? 転移陣で行けるようにしたら良いのかな? それで、スタンプラリーとか。おお! 良さそうな気がする!
「お母さん。温泉卵ソフト買って~」
「夕飯食べられなくなるから、だ~め」
「え~」
子供がソフトクリームを強請っているのを横目に、温泉卵を食べる。温泉卵、うめぇ。
そう言えば、数日前に奴隷にした三人は、ちゃんとやってるかな? 温泉プール脇のステージでショーをやらせる事にしたんだよね。
ステージを見に行くと、丁度彼等が楽器演奏をしていた。
兎獣人のおじさんはピアノ。栗鼠獣人のおじさんはヴァイオリン。鳥獣人のおじさんはクラリネット。
中々様になっている。上達早いね。
演奏を聞いていると、監視員の眷族がプールに飛び込んだ。
どうやら、誰かが溺れたらしい。
非殺傷エリアは、普通に溺れるのは防げない。
「やっぱり、ダンジョンなんかに来るんじゃなかった! ダンジョンが殺そうとしたのよ!」
助けられた女性が、そう泣き叫ぶ。
「おばさん。助けた人、ダンジョンの眷族だよ」
「誰がおばさんよ!」
近くに居た十歳位の少年が教えると、おばさんと呼ばれた女性は泣き止んだ。
「『ハツ。二十四歳。隠れユティ教徒』」
私は、【鑑定】で表示された情報を口にする。
ユティ教徒がダンジョンに遊びに来る訳は無いので、溺れた振りでダンジョンを危険視させようとの企てだろう。
「ユティ教徒だって?! ……本当だ」
【鑑定】を使えるらしき男性が愕然として呟くと、周囲は一斉に女性に敵意を向けた。
「ち、違うわ! そいつ等、グルなのよ!」
しかし、誰も信じない。それだけ、三年前の事件に因るユティ教への敵意が強いのだろう。
政府が神国と戦争をすると言ったら、大賛成しそうな雰囲気だ。
数十分後、彼女は通報を受けて駆け着けた役人に連行されて行った。
深夜。日付が変わった頃。
『皆! 起きろ! 来たぞ!』
遊戯の強制コールで起こされ、メインダンジョンのボス戦部屋に待機する。
何で、こんな時間に来るかなあ?! 安眠妨害だ!
モニターで見ていると、聖剣使い達は、猿型モンスターを意味も無く威力を上げた攻撃で斬り捨てて行く。あれじゃあ、あっと言う間に魔力が尽きるよ。
25m(距離)潜水が出来ないと通れない場所は壁を壊し、某1/2漫画の様な変身の呪いの泉は凍らせて突破して行く。
そして、地下四階へと続く階段手前の注意書きは、読まずに扉毎壊して行った。
聖剣も防具も失った彼女達は、魔物を無手で殺せずに逃げ回り、挟み撃ちされてしまった。
私は、聖剣を手に寝所に戻る。ふわあと欠伸を一つ。
Lv1の無手の人間に対して、Lv3のモンスターは強過ぎたかな~?




