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要塞へ

 町でデカめのキャリーバッグとそれを背負える道具を買った。これで大抵のものは入るし、背負えるので動きやすい。

 あとは食料と火起こし道具くらいを買い足した。冒険というかキャンプですら経験の浅い俺には必要なものが把握しきれなかった。


 その上で、次に目指す町だが……少し遠い。


 最初の城からさっきの町までが地図上で約4cmの距離。その移動に半日かかった。

 次に目指すのはより大きな街、というより「要塞」と言うほうが正しいらしい。そこまでの距離は地図上で約10cm、楽天的計算でも二日かかる。

 厳しいか。と真剣に考えながら町を出た。そこでアカリからこんな提案が。


「みんな飛ばせられるし、空飛んで行かない?」


「簡単にいうけど、大変なんじゃないのか? それに距離も結構あるし」


「だいじょぶ! 昨日コツ掴んだ!」


 なんと頼もしい。ギャルはすごいなぁ。

 という訳で我々は空の旅を選択。結構な高度を結構な速度で飛んでいる。


 十分後。


「アカリ! 大丈夫なのか!?」


「全然平気〜! でも喋ると口カピカピかも〜」


「無理せずしんどくなったら言うんだぞ!」


「オッケー!」


 と空気抵抗に負けじとデカイ声で話す。結構な速度が出ているのはいいが、風を真に受けるのはなかなかに体力が持っていかれる。

 情けなくも先に体力が無くなるのは俺の方か。と思ったら空気抵抗を感じなくなる。


「・・・・・・たく、早くいいなさいよ」


 どうやらミオが気を利かせてなんらかの魔法をかけてくれたようだ。一気に楽になる。ありがたい。


さらに十分後。


「ほんとに大丈夫なのか! アカリ!」


「うん! マジだよ! 全然平気!」


 流石に休んだ方が、と思いミオの方にも視線を送るが、ダメダメと首を振る。アカリは譲らない性格のようだし、好きにさせるべきか。


 そしてさらに10分後。


「・・・・・・」


 地図を確認。飛んでいる分、地形と地図の照応が簡単だ。そしてそれを鑑みると・・・・・・。


「アカリ! あの遠くに見える壁みたいなやつが目的地だ!」


「そーなの!? もう着いたんだ〜!」


 なんと推定二日の距離を30分弱で終わらせてしまった。すごいなギャルパワー。

 見えるのは要塞、というよりは、日本人的には城というほうがしっくりくる。大きな壁は少し異なるが、街の中心に位置するだろう所には高くそびえたつ見晴台のような建物も見える。

 それじゃあ後は街のどこかに着地させてもらえば終わり・・・・・・。──とはならなかった。


「──ん?」


 目的地となる「要塞」。その城壁上部にあたる所が光って見えた。

 そして俺には「マズいもの」だと分かった。


「! アカリッ!」


「んえ?」


 呑気に振り返るアカリ。アカリにはあの光が見えなかったのか? なんにせよ、マズい。

 俺に守る力はない。庇うだけの動きも出来ない。俺に──対処は出来ない。


 アカリが再び前を向く──前に、その光は俺たちに着弾した。


「・・・・・・。なんとかしたけど、マズった?」


 爆風の中から光が漏れる。俺も、アカリも、声の主のミオも、光のバリアに守られていた。


「いや、ナイスだミオ! 助かった!」


「なになに? なにが起こったの?」


 ミオが全員を庇ってくれたおかげで無事だ。アカリが今ひとつ状況を掴めていなさそうなので説明を、と思ったが──。


「マズいメッチャ来るよ!」


 その声に振り返る俺。かなりの距離があるはずの向こうから光がいくつも点滅している。さっきの光が一発の発砲なら、今度は制圧射撃か!


「アカリ! 止まらないように! 動きが読まれないようにジグザグに飛ぶんだ!」


「わ、分かった!」


 動き出す体。しかし一体なぜ攻撃が・・・・・・。

 魔法。空中戦。俺の出番はない。なら考えろ。俺にできるのは頭を使うくらいだろ。


「アカリ! マズいかも!」


 ミオが言う。その視線の先には光の線が見える。なんだあれは。頭を回せ。あれがなにかだけでは無い。その上でどうするかまで考えろ。

 出した答えは──。


「ミオ! あれは追尾してくる! 全部同時に受け切れるか!?」


「多分大丈夫! でもどうすんの?」


「アカリ! ミオが防いだ瞬間に地面に向かって落ちれるか!?」


「下に飛ぶの? オッケー!」


 あれを追尾弾と仮定して、かつ対空能力に特化しているとも考えられる。逃げるなら、地上だ。


「ミオ! 撃ち落とせるなら数を減らしておいてくれ!」


「もうやってる!」


「アカリ! あの森の中だ! バリアを張ったまま着地出来るか!?」


「着地より不時着って感じになりそう! 守りきれなかったらゴメン!」


 後ろを振り返る。光の線が近づいて来ている。やはり追尾効果はありそうだ。後は、うまくいくか・・・・・・。


「来るよ!」


 ミオの掛け声で歯を食いしばる。体に衝撃は・・・・・・思ったよりなかった。直後に重力とは違う下へ引っ張られる感じ。アカリが上手くやってくれている。


「ふじちゃ〜く!」


 今度はアカリの声で身を丸める。速度がどの程度かは測れないが、結構な速度だ。自由落下と同じくらいには。

 こっちはかなりの衝撃だった。とはいえ痛い程度で済んでいるだけマシだろう。


「みんな! 大丈夫か!?」


 他のみんなも近くに落ちてるはずだ。無事だといいが。

「なんとか~」「結構な衝撃だったわ」と二人も無事そうだ。

 確認し終えた後に上を見上げるが、追撃のようなものはなさそうだ。一安心。


「で、ここからどうする?」


 ミオが疑問を呈する。目的地まではそう距離はない。まずは向かうべきだろう。


「とりあえず当初の予定どおり「要塞」を目指そう」


「え~、あんなに攻撃してきたのに?」


 確かに攻撃してきた。だがそこは街で、いるのは人間のはずだ。話を聞けば事情も見えてくるだろう、と考える。


「空はダメだろうけど。徒歩で行く分には問題ないだろう。——歩くか」


 そう仕切って歩き始める。街までそう遠くない。すぐに着くだろう。


 森の中に隠れる様に逃げ込んだせいで服とか引っかかって面倒だ。が。


「伐採ビィーム!」


 とアカリ道を作ってくれる。ありがたい。

 地図的にはそろそろ見えて来てもおかしくないはずだが。


「あ、なんかあるよ」


 アカリが指さす先にはコンクリかセメントか分からないが、灰色の大きな壁、いや門というべきか。それを見つける。


「着いた、でいいのか?」


「いいんじゃない? それより門の前、見張りなんだろうけど4人は多くない?」


 確かに見張りにしては数が多い気がする。心当たりは、まあ、ある。

 冷静に考えて、異世界冒険もので空を飛んで旅をするものをほとんど見たことがない。なんで飛ばないんだろうと思っていたが、こういうことか。


「あのー、すみません」


 門番の一人に声をかける。情報を得なければ。


「……なんだ?」


「あの、俺らは冒険者で。魔王を討伐してこいと命令された者達です」


「そうか、冒険者か。しかし、悪いが簡単に中には入れられない」


「理由を伺っても?」


「つい先ほど空を飛んでいる人型の姿が確認された。遠目にも手練れであることは分かっている。——お前たちがその人物である可能性がある」


 それたぶん俺達だなぁ。でも対応がしっかりしすぎなのではないかと思う。


「入場させてやりたいが……悪いが簡易検査をさせて欲しい」


 そう言いながら二人の門番が音叉? みたいなものを取り出して全身をくまなく調べられる。


「……ふむ。特に問題なしか。少し待て、門の開場に少し時間が掛かる」


 問題なしと聞いてほっとする。これならスムーズに進みそうだ。——だが。


「——待て」


 いつの間にか門番の後ろにそこそこ歳のいった魔法使いな恰好をした初老人が現れた。気配を感じなかった。最初の時といい、この世界の魔法使いは静かに気配を消すのが普通なのか?


「……女二人。相当な魔法使いだな。ここのバリスタを捌くくらいは造作もない、といったところか」


 見ただけで判断出来るのか。いや、どちらかと言えばアカリの魔力圧を感じているって感じか?


「ここのバリスタを対処した。それは恐るべき力だ。——いまここで、"本性"を見せてもらおうか」


 そう言うと腰の剣を抜いた。ヤるつもりか。

 後ろにいる二人も構える。が。


「二人とも。魔法の直接的な援護なしにしてほしい」


 なんで? みたいな顔で聞いてくるが、「二人の火力は高すぎる」と言って下がらせた。ここまではかっこよかったかもしれない。


「——でも身体強化魔法は欲しいかな!」


 そう言って援護だけ貰う。こちらも剣を抜く。なんか戦う流れになったが、別に本気でやり合うわけでもない。ただ誤解を解くだけだ。


「・・・・・・白状するけど、確かにこの近くまで魔法で飛んでいたのは事実だ。でもだからってたたき落とすのはどうかと思う」


「異なことを。"浮遊"ならまだしも"飛行"は上位の魔法使いですら困難な技。それに──」


 その後、空を飛ぶのがどういう事かを簡単に説明してくれた。

1.地球と同じく領空の概念がある。基本的にそれは魔物及び魔王の手先から街を守るためである。

2.空を飛ぶことそのものがコスパが悪い(アカリが異常なだけ)。なのに飛んでいた。(不審)

3.空を縄張りとする魔物と接敵する可能性が高く、その魔物は大型である事が多い。


 という具合に、空を飛ぶというのはなかなかにイレギュラーらしい。だからこそ、遠くから来た謎の存在を"魔王の手先"として対処しようとしたようだ。


 なるほど納得。・・・・・・と、淡々とまとめているが、この間にも相手の魔法騎士? の苛烈な攻撃を捌いていた。


(強い・・・・・・。強化してもらってこれか。──いやそれより)


 あるだろ。問題が。


「あのっ! こっちの事情も話したと思うんですけどっ! まだ打ち合うんですか!」


「む、確かにそうだな」


 ピタッと攻撃の手が止まる。よかった、割としんどかったし。


「あの王城が懲りずに呼び出した異世界の救世主なるものがどんなものかと、少し気になってな」


「はあ・・・・・・」


「爺の戯れだ。許せ」


 そう言って魔法騎士? は背を向け、要塞の、門の方へ歩いて行く。


「改めて歓迎しよう。人類の最終防衛線、魔導要塞へ」


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