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第35話 親子対決③ 常識破壊警報発令事案発生 妖精さんが来た

 それは全ての生物とは全く違う。だがそれ故に全てにおいて”肯定されるべき存在”とされていた。後ろめたい者も、清廉潔白な者も。『心』を持つ者がそれに触れた場合、必ずその者の価値観を根底から覆してしまう。


 その種族の名は『妖精』。


 あらゆる者に祝福を与え、真に愛を高らかに謳う奇跡の種族である。




「あいむし~~きんぐざれ~~~いん♪ふんふ~~ん♪ふふっふふ~~~ん♪」


 降りしきる雨の中、妖精は実に楽しそうに踊っていた。それも、”周囲の風景を絶え間無く変えながら”……


「な、なにが……何で妖精、が。てか本当に妖精か?マジか?」


 アスファルトが地面から出現すれば、妖精はタップダンスを始める。西洋風の建物や広場がその場に居た全員を包み始め、何故か服装も変わってしまった。黒いハットにスーツが良く似合い、雨に濡れていくのを楽しむ様に、高らかに歌って踊る。


 それにヒューリはどう反応して良いか分からなかった。姿形はルルなのだが、小さくなっているし、羽が生えている。


 だが本能が、それを『妖精』だと認識してしまっていた。だからこそ驚く。妖精が『幻獣』として認識出来るのだからと。


「んふ~~♪パパも踊って~~~♪」

「は?え?うおっ!?!?」


 そう言っている間に妖精はヒューリの目の前にパッと現れ、その頭にタッチしてしまった。すると、彼の身体は妖精と一緒に踊り出し、軽快なタップダンスを始めてしまう。先程の戦いは何だったのか、どこからともなく音楽も流れ出した。


 更にそこに、飛び入り参加する者が居た。


「私も良いかな?妖精さん」

「もっちのろ~~ん♪」


 戦闘が終わったと判断したサナリアが、その横で更に踊り始める。彼女にしてみれば『盟約』の書の通りだと知っているので、その能力も合わせて判断した結果でもある。


『これ、なんだかサナリアが話していた”アレ”に似ていますね』

「その通り。アレの正体が確定したね」



”あのピンクのナマモノは『妖精』である”という1つの真実。妖精の特徴が全て一致している以上、あれが妖精の中で最強であろう事は容易に想像出来る。そして、彼女の使った諸々の事象が『妖精魔法』である事も分かった。



・上書きステータス


ルル(10) Lv.―


種族:アマルティス(覚醒―)


HP 10/10

MP ―/―

AK   10

DF   10

MAK  ―

MDF  ―

INT  ―

SPD  10


【固有スキル】 妖精魔法 妖精の眼 顕現依存


スキル:複数思考(EX)



『妖精魔法』 

 自身を媒体として繰り出される魔法。想像力に依存するので無詠唱で繰り出せる。魔力が消費されない代わりに、基本的に具体的な想像が必要とされる。妖精種は必ず持っている固有スキルであり、又、固有スキル欄に記載されるスキルは、全てこの魔法の一部として扱われる。属性に偏った妖精の場合、使える魔法も偏る場合がある。



『妖精の眼』

 真実を見通すとされる眼。妖精の中でも限られた種、その中でも数万匹に一匹しか発言されないとされている。相手のステータスの開示が可能。又、虚言が通じなくなる。



『顕現依存』

 依存する自然媒体に応じてLvアップ時ステータス上昇に補正が加えられる。



 ルルが妖精化している姿は、ただの妖精ではない。『幻獣』と称されるまでに”昇華”された正しく妖精の中でも『英雄』と言われる程の力を持つ妖精王(ごっこ代表)である。遠い昔、神話の世界に実際に居た妖精の血が、そのまま時を超えてそのまま顕現してしまっていた。


 更にその媒体はルル本人となっている。そして『幻獣化』によって生まれた以上、妖精のそのステータスは”全ての幻獣”という事になる。


 更に、あれはルルの姿ではなく、ルルに似た妖精の姿となる。この時点で気付いている者は居ないが、ルルは神祖覚醒の中でも『妖精』を最も色濃く出した狐獣人だった。


 事態は更に加速する。


「ほらほら、ケイフルも踊ろうよ」

「え、え~~~……私はちょっと「はいたっち~~~♪」はぁっ!?」


 例え古龍であろうと、神代最強の妖精の強制力には敵わない。きらびやかにドレスアップし、自発的に踊っているサナリアと手を繋いで踊り始める。


 子供達は手を繋ぎ、大人たちはより激しく。足を鳴らし、指を鳴らし、口笛混じりに歌声を。全ては『妖精魔法』により自然に動き、人の違う可能性を、『楽しさ』という境地を与え続ける。



 不思議な事は更に起こり続ける。当事者達全員を置いてけぼりにして、今この場に大切な物を搔き集めるかの様に……


「なんだあれ?音はあそこからか……?」

「わぁ……母ちゃん、あれ凄い楽しそうっ!!」

「あれ?王様?って何か身体が吸い寄せられ……ちょっと~~~!?!?」

「な、な、な、なんだこりゃぁあーーーーー!?!?!?」


 次の瞬間、その場に在ったセットごと彼等は王都の広場内に瞬間移動していた。遊んでいる子供達や、近くを通りかかっていた奥さん達や職人。更には戦士達もそこには居たが、全員同時に妖精に「タッチ」され、即席の妖精劇団に加えられていく。



「おっ?おぉ?なんだこの動き?祭りか?」

「王様も踊ってるし、何かの催し?」

「非常時なのに呑気な……だが止められん、何故だ?」


「「「すっごいウキウキするっ!!」」」


 心は決して嘘を付けない。娯楽が少ないこの世界で、音楽や歌、ダンスはとても貴重な遺産だ。それを最高のクオリティで提供出来る妖精に、皆が心を踊らされていく。


 戦い?知ったことではない。


 勝敗?そっちの勝ちで良い。


 だがこれは譲らない。この楽しいことは止めさせない。全員が楽しくならなきゃ許さない。


 究極の自分勝手こそが妖精の真骨頂。誰にも迷惑を掛けずに日常を破壊し尽くす。



 そしてそれは、人生の中では一瞬の輝きに属する。



「おーれいっ!!!♪」



 王都のあらゆる種族が広場に集まり、全員で踊り、フィナーレを迎える。それが『妖精魔法』が解ける瞬間であり、夢が覚める瞬間でもある。


 だが、全員にその記憶が強く、強く結び付く。生涯忘れられない楽しかった思い出として……



「ういひ~~♪まんぞくなの~~~♪」

「久しぶりに踊ったけど、楽しかったねぇ」

「服がいつの間にか戻ってるわ……」


 周囲の景色も元に戻り、一体何だったのか分からないまま国民達はまたそれぞれの生活に戻っていく。ルルはサナリアの手に乗り、ウキウキに笑っていた。


 ヒューリも来たが、既に戦うという雰囲気は完全に消失していた。物凄く釈然としない顔ではあるが。


「結局、何がしたかったんだ……」

「多分スキル使い過ぎて暴走しちゃったんじゃない?」

『その可能性が高いでしょうが、まさかの展開でしたね』

「そう、か……どうすっかなぁ~~~」


 全てが有耶無耶に終わってしまったせいで仕切り直しになってしまったのだから、勝負の行方で言うなら確実に『引き分け』だろう。あれ以上の幻獣が居るかは不明だが、間違いなく勝負は長引いていたのは間違いない。ヒューリとしても力を使い果たす前に終わったのはある意味で僥倖でもある。


 そこに、妖精が近付いて来た。彼の息子、ルルの言葉を代弁する為に。


「あのね~~、パパ……」

「……おう」


 彼は、その妖精の姿を改めて間近で確認し、思ってしまう。これは、無理だと。


「ぼくね、サナリアお姉ちゃん、好きなの。だからね、あのね」

「分かった」

「ふえぁ?」


 ヒューリは即答し、その頭を指で撫でる。


「……俺の負けだよ、ルル」

「……んふ~~パパだいすき~~~♪」


 ポンッと姿が元のルルに戻り、ヒューリの腕の中に納まる。規則正しい寝息は愛らしく、即サナリアがひったくって抱き締め始めた。


「お前……」

「あー可愛い。さてヒューリ王、息子さんは私の名に賭けて守ると誓うから、遠慮なく連れて行くね」


 太々しいにも程がある彼女の言葉と笑顔に、彼は顔を突っ伏して手で「とっとと連れてけ」とジェスチャー&白旗を挙げるのだった……







 ということで、私の旅に2人の仲間が加わった。


 1人は古龍ウインドドラゴンこと嵐の淑女ケイフル。もう1人は、ラダリアの王子にして狐獣人ルル。2人とも頼れる良き存在である。


 今はドラゴン形態のケイフルに乗り、ルル君を後ろから抱きしめ座っている状態で空を飛んでいた。マッハ幾つかで。


『で?早速倒すのかしらあれ?』

「その前にする事があるから、まずはそっちかな。ヒューリ王にも1週間貰ったし」


 そう、力を借りるべき者達がまだ居るのだ。それを束ねて共闘を促す為に色々しなければならない。


「ただ、フォルナが言うには彼等は異常に仲が悪いんだってさ。だからまずは、それをどうにかしないとね」

『……ところで、そのチビっ子大丈夫なの?』

「え?……あっうん。大丈夫かな?」

「~~~~~~~ッ!!!」


 マッハの速度で飛んでいるので普通の人間だとトマトみたいに弾けちゃうよね。って感じで、『領域変化』で包んで風の抵抗を軽減しているから突風が当たる程度になっている筈だ。それでも喋るのは無理そうなので、私の胸に顔を埋めている。


「まぁ着いたら休憩出来るだろうし。とりあえずケイフル、アレの足元辺りに降りてくれる?」

『分かったわ』


 漸く再開した私の旅は、少しの賑やかさを持ち始め、新たな暗雲へとまた飛び込む……

「王様、結局あれは何だったのでしょうか?ところで新しい楽器を考案してみたのですが……」

「王様!!戦う稽古した後、歌と踊りの稽古もして良いっ!?」

「戦士達に鼓舞のミュージカル考えてみたんだがどうだろうかっ!!」


「……被害が大きいぞうおぉいっ!!?」

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