ギモン
発見されてから、十五日が経っていた。
頭の傷はほとんど塞がり、左肩の腱もようやくつながり、僅かに痛む程度にまで落ち着いていた。折れていた左足首だけはまだ添え木を外せないが、それでも、上体を起こして座っていられるようになったのは、大きな進歩だった。
「今日は、とても顔色がいいよ」
リーヴァがお昼ご飯を運びながら、そう言った。ラルローディアはベッドの上で背もたれに寄りかかり窓の外を眺めていた。
「……ああ。だいぶ楽になった」
もう掠れもほとんどない、以前よりずっとはっきりとした声だった。
リーヴァは椅子に腰を下ろすと、いつものように薬を並べ始めた。手慣れた仕草だったが、その日は少し、指先の動きが緩やかだった。何か、迷っているような。
「ねえ」
「なんだ」
「ひとつ聞いてもいいかな…? 」
ラルローディアは、視線を窓の外から、リーヴァへと移した。
今まで名前以外聞かれなかったのがおかしかっただけだ、ラルは一つ息を吐いた。
「……何が知りたい」
「どうして、剣を持つ人になったの?」
単刀直入な問いだった。リーヴァらしい、遠回しにしない聞き方だった。
ラルローディアは、少しの間、答えを探すように黙っていた。
「……父が、剣士だった。子供の頃、稽古をつけてもらったのが、始まりだ」
「うん」
「向いてる、と言われた。実際、覚えは早かったんだと思う」
言葉を選びながら、途切れ途切れに話す。饒舌ではない、いつも通りの喋り方だった。それでもリーヴァは急かすことなく黙って耳を傾けていた。
「十五で、騎士団に入った。十八で、特殊部隊に移った」
「特殊な部隊?」
「……先に、行く部隊だ。誰よりも先に、敵に向かう」
「危ないところ、なんでしょう」
「…そうだな」
ラルローディアは、当たり前のことのように頷いた。
「だが、俺には……向いていた」
「どうして?」
その問いに、ラルローディアは考えこんでしまった。今まで誰にも話したことのないことだった、いや、話す必要すら、感じたことがなかったからだ。
「……怖くない、から」
短く、そう答えた。
「敵が来ても、剣を交えても、崖の上に立たされても……恐怖を感じたことがない」
リーヴァは、その言葉の意味を、すぐには飲み込めないようだった。
「それは……すごいことなんじゃない?」
「さあ、な」
ラルローディアは、窓の外に視線を戻した。
「そう言われたことは、ある。だが、それが良いことなのかは、俺にも分からない」
その横顔には、少しの寂しさが見てとれた。
リーヴァは、それ以上何も聞かなかった。ただ、隣に座ったまま、しばらくの間、彼と同じ窓の外を見ていた。




