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海辺の聖女と碧き騎士  作者: ゆうもみじ


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こわばる

「…リーヴァ」


食べ終えた器を片付けようとしたリーヴァに、まだ掠れた声でラルローディアが問いかけた。


「どうしたの?」


「その剣……下に、しまっておいてくれないか」


視線をリーヴァに向けたまま、素っ気ない口調で尋ねた。


「邪魔だろう、部屋に置いておくのは」


リーヴァは一瞬、きょとんとした顔をした。それから、ベッドの脇に置かれたままの、布に包まれた剣に目をやった。


「……ううん、そんなに邪魔にはなってないけど」


「いや」


ラルローディアは短く言葉を挟んだ。


「しまっておいてくれ」


それだけだった。理由も、説明もなかった。ただ、有無を言わさない静かな強さが、その一言にはあった。


リーヴァは少しの間、ラルローディアの横顔を見つめていた。何か嫌な思い出が廻るのか、それとも…


リーヴァは剣を包む布をそっと持ち上げると、抱えるようにして、部屋の隅にある衣装棚の陰へと運んだ。視界から完全に消えたことを確認すると、詰めていた息を、ほんの少しだけ吐き出した。


戻ってきたリーヴァは、ベッドの脇に座り直すと、膝の上で手を重ねた。何か少し迷っているように見えた。


「……子供の頃ね」


ぽつり、と切り出した。


「盗賊に、襲われそうになったことがあるの。村の外れで、一人でいる時に」


ラルローディアは何も言わず、ただ静かに聞いていた。


「その時は父が助けに来てくれて、……何もなかったんだけど…それから剣を持ってる人を見ると、身体が強張るようになってしまって…」


リーヴァは自嘲するように、小さく笑った。


「変よね。治癒師なのに、自分は治せないなんて」


「それに…あなたは、命がけで戦ってきた人なのに。剣を怖がるなんて、すごく失礼な話だと思う…」


思わず目を逸らしてしまう。


「……失礼とは、思わない」


ラルローディアは、ゆっくりとそして言葉を選ぶように語りかける。


「怖いものは、怖い。理由があるなら、なおさらだ」


その言葉に、リーヴァは目を瞬かせた。予想していた反応と、少し違ったのかもしれない。慰めでも、同情でもない、ただ事実を事実として受け止める言い方。


「……ありがとう」


まっすぐな言葉に思わずお礼が口から出たのだった。


窓の外では、いつものように波の音が響いていた。ただ今この部屋の空気は、少しだけ暖かく感じた。



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