三分
式典が始まってすぐ、ラルローディアは、招待客を見渡してリーヴァの姿を探していた。事前に神殿には聖女様をお呼びし、礼を尽くすべきだと進言していたからだ。おそらく彼女が今日、この場に来ることは間違いないと思っていた。
だが、あまりにも多い人の波の中で、その姿は見つからなかった。
――探し出すより、呼びに行かせた方が早い。
そう判断すると、ラルローディアは、傍らにいたレオンに、小さく耳打ちした。
「頼みがある」
「急になんだ、次はあっちに挨拶だぞ」
「聖女――リーヴァという女性が、この式典に来ているはずだ。直接、礼を伝えたい。控室まで、連れてきてくれないか」
レオンは、一瞬動きを止め、その名前に反応するように目を細め、首をふった。
「わかってるとは思うが、この後遅くまで予定が詰まってる」
「わかってる、五分でいい」
「……三分だ」
滅多に無理を言わないラルがこう言うからには、何か訳があるだろと察したレオンは、そう言うと大広間を出て、聖女たちが案内されていたという末席の方角へと向かった。きらびやかな貴族たちの間を縫うように歩きながら、視線を巡らせる。
すぐに、それらしい人物が見つかった。とても綺麗な顔立ちをしたその女性は、聖女の正装に身を包み、人垣の外側で何をするでもなくそっと佇んでいた。
「失礼、あなたはリーヴァ嬢?」
声をかけると、彼女は、少し驚いた様子で振り返った。
「……はい、そうですが」
「突然申し訳ない、自分はラルロ――いや、ラルローディア隊長の部下でレオンと言います。まあ、一番の親友でもあるのですが」
にこやかにそう名乗ると、レオンは、リーヴァの顔を、まじまじと見つめた。何かを確かめるような視線だった。
「隊長が、あなたに直接礼を伝えたいと言っている。控室まで、案内させてもらえるか?」
「え……今ですか?」
「短い時間で申し訳ないんだけど、とりあえずこちらへ、ご案内します。」
戸惑うリーヴァを、レオンは軽い調子で促した。
レオンに案内されながら歩いていると、レオンはリーヴァの緊張を和らげるよう優しい口調で話しだした。
「隊長のこと、色々、世話してくれたんだろう。ありがとう」
「いえ、そんな……出来ることをしただけです…」
「出来ること…ね」
レオンは、小さく笑った。何か言いたげな顔をしていたが、それ以上は踏み込まず、控室の前で足を止めた。
「ここだ。時間は短いから、手短にな」
そう言って、扉を開ける。
「リーヴァ嬢、こちらに」
促されるまま、リーヴァが、緊張した面持ちで入っていく。
「時間は短い。あとは、外で見張っておくから」
レオンは、そう言い残すと、扉の外に立った。




