ラルの笑顔
その日も、リーヴァとラルローディアは、往診のため村を歩いていた。ゆっくりならもうさして通常と変わらないほど、ラルの足は回復していた。
「あら、リーヴァちゃん!」
畑仕事をしていた老婆が、いつものように大きく手を振ってきた。
「おばあちゃん!」
リーヴァが駆け寄ろうとすると、老婆はラルローディアの方をじろじろと眺めて、悪戯っぽく笑った。
「相変わらず仲良いいねぇ」
さらりとそう言われて、リーヴァは頬が熱くなるのを感じた。最近、こういうことが増えていた。村の誰もが、二人の関係を当たり前のように見るようになっていた。
「そうなんだ。これでも必死だからな」
「ちょっ…!2人とも!」
「あはは、まぁ頑張んなよ」
そう笑いながらおばあちゃんは畑仕事に戻っていった。
「もう!ラルも…」
そう言いかけた時、急にラルが顔を近づけてきた。
「熱か?顔が赤いけど」
額どうしをくっつけてラルが呟く。
「っ…わざとやってるでしょ?」
リーヴァが少しむくれて、目線をあげ、ラルに呟いた。
「…ッハハハハハーー」
弾けるように、ラルローディアが笑った。これまで聞いたことのない、大きな声だった。
「な、なんで笑うの!」
「いや……悪い」
そう言いながらも、笑いは止まらないようだった。目尻に浮かんだ涙を拭いながら、彼は肩を震わせている。
リーヴァは、呆気に取られてその姿を見つめていた。
――こんな風に、笑う人だったんだ。
いつも静かで、多くを語らず、抑えた表情ばかり見せてきた人。それが今、こんなにも屈託なく、声を上げて笑っている。
その笑顔があまりにも眩しくて、キラキラして見えて、リーヴァは思わず、見惚れてしまった。
「……ずるいよ、そんな顔」
小さく呟いた言葉は、笑い続けるラルローディアには届いていないようだった。
その日の午後、往診の巡回を終えて家に戻り、昼食の席についた時だった。
「大変だ! 盗賊が出た!」
村の方から、切迫した声が響いてきた。




