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草原に爆炎が轟いた。その爆発で数匹のスライムが爆散する。そして爆発の煙りが晴れた中から現れたのは、気色の悪いニヤケ面を讃えた所々歯の欠けてるジジイである。
「【爆炎の支配者】はいいのぅ、癇癪玉+でも威力が桁違いになったわい」
ぶっちゃけもう手投げ弾レベルまで威力が上がっている。端で見てるプレイヤー達には手投げ弾でスライムを虐殺してる様にしか見えないだろう、実際は【爆炎の支配者】の称号で火炎草1つでクラフト出来る癇癪玉なのだが。
「ん~、これで火炎草は足りるはずじゃな、町に帰ってクラフトするかいの」
10個濃縮の激烈癇癪玉を100個納品。
中々に面倒なクエストを、便所コオロギはなんとか終えようとしていた。
素材となる火炎草をアイテム袋限界まで貯めては町でクラフトの繰り返し。よくよく考えてみると、今までのプレイとなんら変わらないので、ジジイにとって、それ程苦しくは感じて無いのは救いだろう。
「手間掛けるな。工房使用料は取らねえ、自由に使ってくれ」
「悪いのぅ」
クエストの内容を聞いた工房の親方は、工房を無料提供してくれている。このクエストに限りクラフトに掛かるGも工房持ちになる太っ腹設定だ。
「よっしゃ完成じゃ! 今まで納品した分も合わせて100個の激烈癇癪玉じゃ!」
「おお! 遂に揃ったか! ならさっそくひとっ走り坑道に向かってくれ!」
「おうよ! 行ってくるぞい」
結構時間は掛かってしまったなぁと思いつつ、大急ぎで坑道へと向かうジジイ。坑道の前にはいつものドワーフが佇んでいる。
「これで最後の納品じゃあ」
「助かる! これで同胞たちを助けられるぜ!」
「しかし癇癪玉なんぞで、この土砂を本当になんとか出来るんかいの?」
「ん? ああ、違う違う。この揃えて貰った激烈癇癪玉をクラフトするんだ。ちょっと待ってろよ」
ドワーフはドエラい速度で地平の彼方へ走って行った。と思ったらドエラい速度で戻ってきた。
「クラフトしてきたぜ。ほらこれだ」
ドワーフが見せたのは簡易ダイナマイトと言う爆弾系統のアイテムだった。
するとそそくさと、ドワーフは土砂にダイナマイトを設置して行く。
「よし、セットは完了した。爆風に捲き込まれない様に離れておけよ、導火線に点火するからな」
導火線に火を灯すと、バチバチと音を立てて火花が導火線を走って行く。そして坑道の土砂にセットしたダイナマイトに到達すると、激しい轟音と共に大地を揺らした!!
「あはぁ~っ!」
そして坑道の外まで達した巨大な爆炎は、入り口の真ん前に突っ立っていたジジイも飲み込んでいた。
「うおっ!! 死に戻ってしもたわい」
【爆炎の支配者】のダメージ減少をもってしてもダイナマイトの火力はしのげなかった。
もっともジジイのHPが異常に低いと言うのも有るのだが。
「また向こうまで行かにゃならんの。アホな死に方したもんじゃわい。しっかしエゲツない爆発じゃったのぉ、ダイナマイトの作り方教えて貰えんじゃろか?」
死に戻りはしたものの、ジジイの目は爛々と輝いていた。何しろ癇癪玉を大きく上回る爆弾が現れたのである。爆弾ジャンキー垂涎の一品なのだから。
「イ~ッヒッヒッヒッヒッヒッ!!」
「おい、あのホームレス死に戻ってきたと思ったら笑いながら走り出したぞ?」
「涎垂らしてるじゃねーか!」
「危険な薬でもやってるのかしら……」
世間の目なんてこんなもんである。
道中、並み居るスライムを爆殺しながら、ようやく坑道までジジイは戻ってきた。
「あ! 爺さんやっと戻ってきたか! だから避けとけって言っただろうが!」
「すまんの、すまんの。じゃがおかげさんで砂かぶりでエエもん見せてもろたわい」
「……変わった爺さんだな。それよりホラ、土砂はバッチリ除去出来たぜ! 本当にありがとう!」
「おおう! ホンマじゃ! 綺麗さっぱりなくなっとるの! な、なあ! ダイナマイトの作り方教えてくれんかいの!」
「おう! そんなもんお安いご用だぜ! ……よし、これで作成可能になったぜ。簡易ダイナマイトは10個濃縮の激烈癇癪玉3個で出来る。威力はまぁ、身に染みてわかってるわな? 敵を攻撃するのは勿論だが、こいつは御覧の通り破壊可能オブジェクトを除去出来るのが真骨頂だな。言っておくが、お前さんに貰った激烈癇癪玉で作ったダイナマイトはもう無いぜ。他の土砂を除去するのに使っちまったからな」
「サンキューじゃあ! これで爆殺ライフに華を添える事が出来るわい!」
「どんなライフを送ってんだよ、危ねぇ爺さんだなおい」
念願のダイナマイト作製を教えて貰えたジジイが意気揚々と開通した坑道へと入って行くと、ドワーフ達の集落にたどりついた。そこで待っていたのは見るからに偉そうなドワーフである。
「アンタが土砂撤去を手伝ってくれた便所コオロギさんか! 俺がこのドワーフ集落の族長だ。一族を代表して礼を言う、ありがとう」
「なんのなんの、困った時はお互い様じゃからの」
「とりあえず感謝の品を渡したい。用意するまで集落で寛いでてくれ!」
族長に言われるがままに、ジジイは暇潰しがてら集落を散策し始めるのであった。




