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「親方がいっぱいじゃのぅ」
ドワーフの集落をうろつくジジイ。
ジジイから見ると、ドワーフ=クラフト工房の親方みたいな感覚なのである。
「武器屋かいの」
クラフト技術に長けた種族のドワーフである、やはり集落は武器防具屋、或いは装飾品を取り扱う店が多い。
このドワーフの集落はエリアこそ第1エリアにあるのだが、運営的には廃プレイヤーが見付ける事を想定していただけに、その販売品はかなり高レベルの物が売られている。
「高いの~、とても手が出んわい。もっともステータス足りなくて装備出来んけどの~」
武器や防具には装備するのに必要なステータス値がある。大剣などは力のステータスを上げる必要があるなど。ジジイみたいにステータスが低いと碌なものが装備出来ないのだ。もっともパンイチ武器無しだが。そんなわけでジジイは冷やかしに専念している。パンツ一丁スタイルは継続中だ。
「手投げ弾も売っとるのぉ、しかし1000Gは厳しいのぅ」
「おう、アンタなら半額でいいぞ!」
「それでも高いのぉ。ワシは大量に欲しいからの、やっぱり自分でクラフトせにゃならんの」
戦闘手段が爆弾系統のみなので致し方無い話ではあるが、半額で手投げ弾が買えるのは本来破格である。
「にしても、クラフトレベル上げちょるのに、いつまでたっても手投げ弾作れんのぅ」
完全なる極振りでも無いのだが、ジジイはほぼクラフトにポイントを注いでいる。
しかしながらクラフトに手投げ弾の表示がされないのでヤキモキしているのだ。
「一度親方にでも聞いてみるかのー」
親方との親密度が異常に互いに為に、結構親身になって貰えてるジジイなのだ。
「おおーい! こんな所にいたか、族長が用意が出来たから来てくれって言ってるぜ」
集落をうろつく事しばらく、ドワーフの一人が駆け足でやって来た、どうやら用意が出来たらしいのでさっそく族長の元へと急ぐ。
「おお、戻ってきたか。一応今用意出来たのはこれだ。この中から何か好きな物を1つ選んでくれ」
「ほう、どれどれ……」
・名匠ドワーフの戦斧【ガイアクラッシュ】
・名匠ドワーフの全身鎧【大地の賛歌】
・名匠ドワーフの腕輪【大地の慈愛】
・名匠ドワーフに指輪【大地の祈り】
これら以外にもズラリと並ぶ族長が用意したお礼の品は、名匠と謳われるドワーフの至高の品々である。通常販売されない特殊な装備は攻撃力や防御力の高さはもちろん、範囲攻撃やHPの自動回復やMPの回復など、優れた特殊能力まで付与されている。
「どれもいまいちだのぅ、そもそもワシには斧も鎧もステータス足りなくて装備出来んし」
ただ残念ながらジジイからしてみると、無用の長物でしかない。HP回復が有難いと思える程、そもそもの最大HPが低い上、MPに関しては使用した事が無い。もっと言えば魔法1つ覚えていない。
「他になんか無いかの~……」
並べられた報酬を調べていると、ついにお目当ての逸品が現れた。
・名匠ドワーフの指輪【アイテム袋EX】×3
「あっ!! これじゃあ!!」
「え? そんなんで良いのか?」
「よいよい! これを探しとったんじゃあ」
これは指輪型の拡張アイテム袋で、相当多くのアイテムを入れられる袋が、指輪を装備する事によって3つ増える優れ物である。
ただアイテム袋自体はクラフトでも強化出来るし、先々のショップで大型の物も売ってたりするので、大抵のプレイはそれで用は足りるからこれをチョイスする者は少ないだろう。
「よしわかった。欲しい物を持っていってくれ、ドワーフ一族の気持ちだ」
こうしてドワーフ坑道のクエストは無事に達成できた。ジジイ的にも求めていた物が手に入ったので大満足の結果となった。
「人助けはするもんじゃの。アイテム袋強化出来た上に簡易ダイナマイトまで作れるようになったわい」
運営的には大地シリーズの強力な装備を用意したつもりだろうが、歯抜けジジイには知ったこっちゃ無いのであった。
ジジイはさっそく採集と爆弾作りに励む。簡易ダイナマイトはかなりの大飯食らいの一品である、火炎草30個必要なのはさすがのジジイもおいそれと使用出来ない。
でも持ち前の集中力はブラック企業の社畜も裸足で逃げ出す。淡々と作り上げたその数は既に100を超えている。これには【爆炎の支配者】のスキルのおかげもある。一回の作成でランダムだが1つ2つ増えるのだ。
「うへへへへ~。爆破じゃあ~」
「おい、爺さん遂にダイナマイト持ち始めたぞ」
「てことはあの格好でエリア進めてんのか?」
「他のエリアで見た事無いんだがなぁ……」
まさかまだ誰も発見してないクエストをこなして、ドワーフの集落を発見しているとは、他のプレイヤーには知るよしもない。
「おおーい、親方ぁ、なんかいつまでたっても手投げ弾作れないんじゃよ」
ダイナマイト作製も順調に進める中、いくらクラフトにポイントを振っても手投げ弾が作製出来ないので、親方に相談してみたが。
「クラフトレベルは足りてる筈だぜ? 恐らく使用する素材を手に入れて無いんじゃねえのか?」
「何が必要なんじゃ?」
「そのものズバリ、火薬だ。コイツはここらじゃ採集出来ないぜ? エリアは3の山岳地帯まで行かないとダメだ」
「それはおっくうじゃのぅ……」
ついにジジイも新たなるエリアへ旅立つ時がやってきた。




