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時を少々巻き戻し、ゼロ率いる東チーム。
第18サーバー朱雀討伐確認
「おっと! 朱雀って言うとソフィーか」
運営からの朱雀撃破告知を受けたゼロ、こちらは未だに押し寄せる青龍軍団と戦闘中だ。
「ゼロさん、北の連中は援護に来ないつもりですかね?」
「う〜ん。なにしろ情報が無さ過ぎるからな、何とも言えんよ」
早々に玄武を降した北チームが援護に来るものと思っていたが、待てど暮らせど来ないのだ。
或いは玄武撃破時に、援護に送れる余裕が無い程にプレイヤーが損耗した可能性もある。つまりほぼ相打ちのような形だ。
このゲームは基本、一部のイベントを除くとフレンドリーファイヤー(プレイヤーによるプレイヤーへの攻撃)の要素は無い。プレイヤーキルをして嫌がらせ等への処置だ。ただ例外的にダメージを与えてしまう事がある。
爆発物だ。
同一の敵に対する状況、つまりパーティープレイやレイドバトルだ。この状況時には味方も自分も爆発のダメージは受けてしまう。
そして目下その状況の当てはまるシチュエーションなのだ。で、ゲーム初心者なのに異常な火力を持つ便所コオロギと言う爺さん。
「う〜ん。あんまり考えたく無いけどあの爺さんなら悪気無く、敵味方関係無しに皆殺しにしそうなんだよなぁ。やっぱり俺がお目付け役で一緒に行くべきだったかぁ」
玄武は瞬殺出来た。だが北チームは崩壊レベルのダメージ。最悪のシナリオが頭をよぎるゼロ。
「ゼロさん! すいません手間取りました」
そこへ大望の援軍が現れた。
「ソフィーか! 助かる。少し押され気味でな」
先程南で朱雀を降したソフィー率いる南チームだ。
ソフィーが戦闘に加われば、一気に情勢が有利に傾く。【軍神の恩寵】で全体バフが掛けられ、ソフィー自身も【退魔の宝剣】で圧倒的火力を持っている。
「よし! 攻め時だ! 一気に落とすぞ!」
青龍はソフィーと言うアタッカーが居ればさほど手勢はいらない。ゼロがタンク役に徹してヘイト管理してやれば、見る間にダメージを与えていく。
そして、
「はぁぁっ!!!!」
裂帛の気合いのこもったソフィーの1撃が、青龍へのトドメとなった。
「ほいお疲れさん。にしても凄い火力だな、その剣は」
ゼロがソフィーの労をねぎらう。
「はい。全属性特効でクリティカル大アップですから。本当に貰ってしまってよろしかったのでしょうか?」
「まぁ、爺さんの言う通りタンスの肥やしだったんだから良いんじゃないのか? 負い目に感じるなら爺さんゲーム初心者だし、色々と力になってやればいい」
ソフィーは、はいと頷くと小難しそうな顔でお爺さんの為、お爺さんの為と呟く。
「いやいや、そんな真面目に考え無くてよ、時々一緒に遊んでやるくらいでいいんだよ」
「そんなので良いのでしょうか?」
「ああ。素材集めなんか手伝うと鼻水垂らしてよろこぶぞ」
「涙では無いのですね」
「ああ、鼻水だったな」
ゼロは続けて、主に爆発物関係の素材だと鼻水の量が増えるぞとソフィーに教えると、フムフムと真面目にメモをとっていた。
「さて、あんまりのんびりしてられ無いんだったな、残す所は西の白虎だ」
青龍撃破で一息つけば、残すは最後ボスモンスター。
【西の白虎】
風を纏う虎型のモンスター。
北の状況こそわからないものの、これで全軍が集合する事になる。幸いにも南、東の損耗は少ない。
撃破ペースとしてはかなりハイペースで進んでいる。サーバー順位も上位を、なんだったら1位を狙えるのでは無いかと、プレイヤー達のやるも充実していた。
そして西側へと赴いたゼロ、ソフィーチーム。
状況はかなりマズそうである。
「合流したぞ。状況は?」
ゼロは最後尾で指揮を取るラファエルに声を掛けた。
「遅い! 何やってんだよ! 見たらわかるだろ! 劣勢だ! 四神が3体撃破されると最後の1体が強化されるの知ってるだろ! まったく北の連中好き勝手に玄武撃破しやがって、足の遅い玄武を最後にするのはセオリーだろうがよ」
「ラファエルさん、そんな言い方はあんまりでは有りませんか? 彼らだって一所懸命に戦ったのだと思いますよ」
相変わらず高圧的な口調のラファエルをソフィーが諭す。
「一所懸命ねぇ、撃破して援護にも来ねぇのにか?」
「おいお前達、ここで言い争ってても仕方無いだろう。今は白虎に集中するべきだ。そうだろ?」
また何やら揉めそうな空気にゼロはやれやれと割って入った。
「あ、と、はい、すいません。ゼロさん」
「チッ! わかったよ。で、どーすんだコレ。強化白虎なんて正直手に追えねぇぞ」
自分は前に出もしないで文句ばっかり。本当にこの人嫌いです。
「私が前に出ます。ゼロさん、サポートよろしいですか?」
「おう。任せろ」
「ケッ! 勝手にしろ!」
上位プレイヤーの仲の悪さに、従うプレイヤー達の不安は高まる一方であった。




