第捌玖話 On the mark
「ちょっとお。小杖ちゃん、こんなに強いの聞いてないよぉ。」
福子が後から姿を現した。
「2人とも大丈夫か!?」
一応、声をかけてみる。
「急に家の中で取り囲まれたんだけど、小杖ちゃんが蹴散らしちゃった。」
あっけらかんと福子が答える。
家に向っていた『あいつ』は急ブレーキをかける。
「なんてざまですか!残りの全員を向わせたと言うのに!!」
すかさず、俺が口を挟む。
「あんたの支配力が弱まってるんじゃないのか?」
「!!!」
『あいつ』は思わず閉口してしまった。『ギクッ』っと言う音が聞こえてしまいそうだった。
小杖も追い討ちをかける。
「元の肉体から離れたイグジストは、そのままだと消滅してしまうでしょ。無理やり他の体に定着させても長くは持たない。違う?」
俺も止めを刺す。
「お前、情緒が不安定すぎるんだよ。『コピー』って劣化するんじゃないのか?
もしかして、オリジナルをすでにロストしてないだろうな。」
「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃぃ!」
なんか、あてずっぽうがクリティカルヒットしたらしい。
「だから、なんだと言うのです。お前たちには絶望しかない状況には変わりがないでしょう!?」
「向こうの2人を襲った奴らは一瞬で蹴散らされたぞ。お前が操れる程度の相手なら、当たり前だがな。」
「まだ、自分達の立場が分かっていないようですねえ。
仕方がありません。取って置きを見せて上げましょう。
是非とも、後悔の涙をじっくりと味わって頂きたいものです。」
というと、誠の姿のまま、『あいつ』は広場から逃げ出すように、俺に背を向けて走っていった。
その後を、礼次を昭二が追う。
「なんだ?負け惜しみか?」
福子と小杖は俺に近づいてくる。ぶっ飛ばした村人たちも、『あいつ』を追って広場から出て行く。
元々、俺達の狙いは、獣の化け物を調べる事だった。まさに、望む通りの状況になったわけだが、そうなると気味が悪くなる。
「ねえ。今のうちに調べちゃったら!?」
福子はそういう事は考えない。
「罠かも知れないけど、チャンスはチャンスだと思う。」
小杖もこういっている。やってみるか。
俺達は警戒しつつ、獣の化け物に近づいていった。
「こいつは、刃になっている牙が全身から飛び出すらしい。気を付けてくれ。」
首領から聞いていた情報だ。
「何?これ!!」
珍しく、小杖が大きな声を上げた。
「化け物じゃない!
人間の子供だよ!!」




