第捌捌話 Unwillingness
思わず、声のした方を振り返る。
「あなた、囮のつもりだったんでしょう?しかし、最初からそれが分かっていれば、むしろ、こちらは好都合だったのですよ。」
「あの2人と合流した事に気付いのていたのか!?」
「当然です。あなたの居場所は、ずっと把握していましたからねえ。」
その時、地面に鳥の影が落ちているのに気付く。
見上げると、カラスが飛んでいた。
「そうです。あのカラスには、私のイグジストのコピーが入っているのですよ。脳容量の問題で、知性を持たせるまでには至っていませんけどね。
ずっと、見ていたんです。あなたも屋根の上からこちらの動きを探っていたでしょう?私はその遥か上から見ていたんですよ!!
あははああはははあははっははははははははハはハはハははははあははっははああああああ!!!」
端正な誠の顔で狂ったように笑っている。
俺は福子の声が聞こえた家に向って弦を伸ばす。脚が動かないので、弦をどこかに巻きつけて引っ張らないと、早くは動けないのだ。
しかし、その弦がブツンと切断される。
礼次と昭二が俺の前に立ちふさがったのだった。
「行かせませんよ!あの能力は私のものです。あなたは、その2人と遊んでて下さい。」
そう言い捨てると、『あいつ』は家の方に向っていった。
「一応、聞いとくけど、あんたらは礼次さんと、昭二さんじゃないんだよなあ。中身が違うんだろ?」
2人に問いかけてみる。すると、礼次が答える。
「さあ、どうかな。」
昭二は黙っている。
「でも、戦わなきゃいけないんだよな。」
もう一度、問いかける。
「ああ。そういうことだ。」
またしても答えるのは礼次だった。
「『あいつ』は一体、何人いるんだ?
恐らくだが、俺達はここにくるまでに、すでに一人を消している。
誠さんを乗っ取っている奴が一人。カラスが一人。分かっているだけで3人だ。
その上、あんたたちまでそうだとしたら・・・。」
すると、礼次が答えた。
「無限ではない。16人だ。」
「16人?って事は、全ての村人を直接操っているわけではないのか!」
「これ以上、喋れる事は無い。大人しく帰っていてくれれば、こんな事をせずに済んだ。
だが、もう、後戻りはできないのだ。」
無表情だった2人の顔が厳しく変わる。来る気だ。
その時!
バァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
福子達が隠れているはずの家の、縁側に出る障子戸が吹っ飛び、人が転げだしてきたのだった。
そして、その後からゆっくりと出てきたのは小杖だった。
「荒っぽくなってごめんなさい。でも、今は他に方法がなかったの。」




