第捌陸話 Decoy
しかし、広場にいたのは誠だけだった。他の村人の姿は全く見えない。
「どうみても罠だよな。」
一旦、屋根から降り、2人と合流する。2人は家の影に隠れながら移動しているが、上からだと丸見えなのだった。
「何かわかった?」
小杖が尋ねる。
「広場には誠さんしかいない。他の村人の姿がどこにもないんだ。どうみても罠だ。」
「でも、そこに行くしかないんでしょ?なら、突撃するしかないんじゃない?」
こういう事をいうのは、福子に決まっている。
「いや。あいつらが警戒しているのは俺だけのはずだ。2人がいる事はバレていないはず。
だから、俺一人で突っ込み、騒ぎを起こして広場から離れるから、その隙に2人は『あいつ』に向ってくれ。」
「もし、『あいつ』があなたを追いかけていったら?」
小杖は相変わらず冷静だ。
「その時は化け物を当たってくれ。恐らく、あいつの実験で出来たイグジストの破片をまとめてくっつけたものだ。ほとんどが動物のもののようだが、村人の頭部も中に隠しているかもしれない。」
「じゃあ、それを見つけたらどうする?」
「一旦離れて、隠れてくれ。頭部のイグジストを取り返すには、本人に戻すか、仮の体を作ってそこに移すかする必要がある。体は俺が作ってもいいが、出来れば本人に直接返したい。敵も一人減らせるし、一石二鳥だからな。」
「わかった。調べて、隠れるだね。もし、村人のあたまが見つからなくても?」
福子が問う。
「そういうことだ。
あの家の向こうが広場だ。家の中にでも隠れて、様子を伺っててくれ。」
「りょーかい!気をつけてね。」
「わかった。」
2人は大人しく俺の作戦に従ってくれた。だから、なおの事、責任重大だな。
接近するには地下から行くのが一番だろう。誠の地属性の危険さは、さっき身に染みて分かっているが、今回の俺の役割は陽動なのだから、堂々と出て行けば怪しまれる恐れがある。
遮蔽物の無い広場の真ん中に、隠れて近づくには、他に選択肢がないのだった。
俺は立っていた場所に根を張ると、地下茎を伸ばし、俺自身を地下茎へと変えた。そのまま、広場の中心目掛けて体を伸ばして行く。
半分くらい進んだだろうか。俺の先端部が何かに触れた。すると次の瞬間、その何かが地上へと伸びたのだ。
「おやおや。そこでしたか。お待ちしていましたよ!」
あいつの声が聞こえてくる。接触したのは、俺とは別の悪茄子だった。地下茎だけを広場の地下に伸ばさせておき、何かが接触して来たら、すぐに芽を出すよう、仕掛けられていたらしい。




