第漆玖話 Meanwhile
宿を出て先行する2人を追いかけようとした、まさのその時。
「待って。福ちゃん。変な視線がある。」
「視線?よくわからないけど、嫌な感じはするねえ。」
「なんか、上から見られてる。能力者には間違いなさそう。」
「『番外』って人達かなあ。」
「多分ね。あまりにもあっさり解放してくれたから。」
「森に隠れて進む?」
「『彼』がいたらそうするんだけど、私たちでは進むのも大変そう。森では別の見張りがいるかも知れないし。」
「じゃあ、行くのやめる?」
嫌味とかではなく、天然でこういう事を言う福子。
そういう取り方があることに気付きもしない小杖が答える。
「行かないと、向こうが困っちゃうだろうから『アレ』で行こう。」
「えっ、ちょっ・・」
福子がリアクションを取り切れないうちに、小杖は軽く体当たりをかました。
地面に倒されるかと思ったのに、体は浮揚感を感じている。ぶつかるべき地面が無いのだ。小杖を見ると、小杖も驚いている。
「なんで・・・。慣性系を抜けるほどの力は使ってないはず・・・。」
何か、よくわからない事を言っていた。
次の瞬間、背中が固く、ゴツゴツしたものにぶつかる。木にもたれかかったらしい。
「元の森?それにしては、雰囲気が違うねえ。」
「景色は同じなのに、なんで全部灰色なんて・・・」
「でも、変な感じは無くなったね。」
「ええ。このまま道を進んでよさそう。」
「元の世界には戻れるんでしょう?」
「多分。後でやってみる。」
「そっか!今戻ったら、見つかっちゃうもんね!!」
2人は歩き始める。浩二から道は聞いている。それほど難しい道のりではないはずだ。
道中、人間はおろか、動物や虫にすら出会う事は無かった。こうなってくると、植物は普通にあることが不思議に思えてくる。
色は相変わらず灰色一色の世界だったが、天土街道まで出たところで福子が気付く。
「あれ?川の水がちょっとだけ青くない!?」
そう言われてみれば、確かに少しだけ青っぽく見える。
トロメキに近づくにつれ、少しずつ世界が色を帯びてきているようだった。
「この橋を渡るんだよね。」
天土街道から橋を渡って対岸に渡り、しばらく進むと、山の上へ向かう道と、谷底へ向かう道に分かれていた。
「浩二さんが言っていたのは、『あぞうがいけ』って所に鵺が出たって話だったよねえ。」
福子が言い出す。
「じゃあ、このまま池に向かわない?池は上の道みたいだよ!」
遅れて来たのだから、村を経由せず、直接、池に向かおうと言うのだ。
「でも、道がわからない。」
と言う小杖の手を引き、
「大丈夫!大丈夫!!
私はこういう『勘』がするどいんだから!!」
ぐいぐいと道を登って行くのだった。




