第漆参話 Lie
「首領様から?どういう内容だ?」
「『約束は絶対だ』だそうです。」
すると、礼次の目に光るものが浮かぶ。
「あんな子供のころの約束を覚えていらっしゃるのか。首領様は。」
「どのような約束なのですか?」
「たわいもないものだ。だが、なによりも大切な約束だからな。
わかった。無駄な抵抗をしてみよう。」
礼次の瞳だけでなく、体全体の色味が明るくなった気がする。
「そちらのお2人が、昭二さんと誠さんですね。」
「そうだ。あの2人の力も必要だな。」
「そう、伺ってます。」
「何か作戦はあるのかい?」
昭二に問われるが、一瞬、間ができる。というのも、誠の目が一瞬、訝しげに見えたからだ。
それを見なかったフリをして答える。
「全員が戻る準備ができたら、首領に合図を送る手筈になっています。まずは、全員をこの場に集めて下さい。」
「わかった。任せろ。」
礼次が答え、離れて行く。昭二もついて行くが、誠はスッと俺に近づき、
「首領様は本当にそう言ったの?」
と、俺にだけ聞こえる声で問う。
「『言ったと言え』と言われました。」
とだけ答えた。
誠は事情を察した様子で、俺に改めて視線を送ると、あとの2人について行った。
これで分かった。礼次と昭二は偽物だ。他の人々にもうかつに近づかない方がよさそうだ。
だが、それなら本物のイグジストはどこへ行った?クロノスの眼を使っても見当たらない。あやしいのは、あの獣の中だ。
首領から聞いた話では、ほとんどの人々は獣に食われたらしい。誠だけが食われずに、自ら穴に入ったと。それならば、誠だけが本物であることの辻褄が合う。
だが、偽物達は何者なのだろう?何か目的があるのだろうか。それに、ついさっきまで、誠も偽物だと気付いていなかったようだ。それほどまでに似た偽物をどうやって作ったのだろう?
疑問は尽きないが、いつまでもこうしてはいられない。
ぞろぞろと集まってくる人々の元へ、俺も行くことにした。
偽礼次に尋ねる。
「全員、トロメキの人間ですか。」
「多分な。」
「多分とは?」
「随分と昔の人間がいるようだ。俺達が生まれる以前に食われたらしい。化け物の中の世界では、人は年を取らないようだ。そして、この世界でもな。」
なるほどな。司と誠は母娘と言うよりは姉妹に見えるのはそのためか。
「さて、集まったぞ。これからどうするんだ?」
と問う礼次に対し、俺はこう答えた。
「あなた達が奪ったイグジストを返して頂きますよ。」
誠以外の全員の口元が醜く歪むのが見えた。そして、その表情には見憶えがあるのに気付いた。




