第漆肆話 Opportunism
「どこで気付いたのですか?」
礼次の偽者が問う。
「首領は約束をしないポリシーらしい。」
「そいつは迂闊でした。」
わざとらしい敬語で、わざとらしい苦笑いを浮かべる。つまり、最初からバレても構わないと思っていたのだ。
「なぜ、そんな回りくどい事を?
俺がこの世界に入った瞬間に袋叩きにでもできたはずだろう?」
「その通りです。ここは私が作った世界。なんでも私の思い通りです。
あなたも気付いているんでしょう?自分の気の流れが止まっていることにね。」
確かにそうだ。いくつかの術を試してみているのだが、全く発動しないのだった。
「番外の筆頭が序列第一位だそうですが、彼の術など私にかかればこの通り。いとも簡単に再現できてしまうんです。」
44番札所で会ったあいつのことだな。あいつの作ったあの空間と同じだって言うのか?ここは。
「しかも、彼と違って、こちらは術を使い放題です。どう考えても私の方があの男より優れているのに、『教授』は未だに『学派』への推薦を渋っています。
どう考えても、私の才能を妬み、恐れ、排除しようと企んでいるとしか思えません。」
なんだか、勝手に関係ない話を始めたので、だまって聞いてやる。
「だから、ここで証明するのです。『教授』の研究対象である『虚数時空間』など、私に言わせればいつでも作り出せる下らないもので、そんなものにうつつを抜かしている『教授』などに教授としての価値など無く、私こそが『学派』を統べるにふさわしい人間なのだという事をね。」
さすがに聞くに堪え無くなり、口を挟んでしまう。
「お前のそんな下等な承認欲求の為に、多くの人々を巻き込んだというのか?
『教授』の事は何も知らないが、なぜお前を認めないのかはすぐに分かった。」
偽礼次は、口元をヒクつかせながら、かろうじて平静を保った素振りで言う。
「何が分かったと言うのですか?あなたごときに。」
「だから言ったろう?承認欲求だって。
お前が求めているのは、お前が認められる事であり、『証明』はその手段に過ぎないって事だ。もっと言えば、事の真偽なんてどうでもいいと思っている。
お前が求めたのは、まさにこの世界。お前の思い通りになる世界。
だが、所詮はお前が勝手に作ったルールだ。お前の願望など知った事か!!」
俺の足の裏から地面にこっそりと根を張らせていた。そこから地下茎を伸ばして偽礼次の足の下から寄生させた。
「なんだと?なぜ、そんな術が使えるんだ?」
偽礼次の顔色が変わる。
「簡単な事だ。お前のわがままでできた世界など、お前以上の力を持つ者には通用しないって事だ。
番外の長が作る空間は、あいつ自身の能力すら奪う絶対のもの。お前のご都合主義なんかが敵う代物じゃない!」




