第肆捌話 Domination
無呼吸で動いた首領が、大きく息をつく。ここぞとばかりに実が炸裂する。
スパパパパ・パパ・パパパパパパーーーン!!
首領は逆陽の結界を張ってこれを受けた。珍しく、苦悶の表情を浮かべる。
残る人型は、一旦足元の葉にもぐると、首領を取り囲むように至近距離で突如立ち上がる。地下茎で繋がった範囲なら、どこにでも現れることができるらしい。
4体同時に弦を突き刺す攻撃を繰り出す。どこにも死角の無い回避不能の攻撃だったが、当たる直前で首領の気が爆発した。
2度目の涅槃寂静だった。
弦は全て吹き飛ばしたものの、頭部を仕留められたのは2体だけ。威力が格段に落ちているのだ。さらに、首領ははっきりと苦悶の表情を浮かべている。
頭の残った2体は、吹き飛ばされた体の部分をあっという間に修復すると、首領の前後を挟む。絶体絶命だった。
ズパン!
が、突如、首領の前に立っていたほうの首が切れ、空中で消えた。残った体は枯れて崩れ落ちた。
「なっ・・・・・・・」
さすがの事に首領も驚いた表情を浮かべる。
気付くと、部屋の中央にあった三角柱の結界が消えていた。
その跡に立っている者の姿を見て、首領は絶句した。
そこにいたのは、全身がシワシワに乾ききった人型の何かだった。左腕にはびっしりとヤドリギが茂っており、その内の一本が伸びて、緑色の頭を突き刺していた。
みるみる内に緑の頭が干からびていき、枯れ切って崩れ落ちていった。
水分を失った肌はまるで樹木の表皮のようで、木人と言うべき姿だ。顔にはムンクの叫びのように、3つの洞があるように見える。よく見ると、その洞から根っこが這い出してきているのが見えた。
「意識を失って、乗っ取られたのか・・・」
首領は搾り出すように呟いた。
木人は首領とは反対の方向に向うと、そこにあった悪茄子を踏みつけた。すると、みるみる、悪茄子が枯れていく。変わって木人の方は、少し水気を取り戻したようだ。
周囲の別の悪茄子が一斉に地下茎を木人に伸ばす。木人はあっさりと地下茎の侵入を許してしまった。ところが、一斉に枯れ始めたのは、悪茄子たちの方だった。
逆に木人はどんどんと生気を取り戻して行き、元の少年の顔へと変貌していったのだった。その表情は虚ろで、目頭、鼻、口、耳から根っこの先端が覗いていたが。
「な、何がどうなっているんだ!?
あいつ、大丈夫なのか!?」
陣がうろたえていた。
「脳をヤドリギに乗っ取られたようです。
ここからの行動は予想がつきません。」
玄爺が答える。
「脳を乗っ取られたって?それじゃあ、もう元には戻らないって言うのか!?」
「そう思っていた方がいいでしょう。」
「父上もそうお考えなのですか!?」
陣が叫ぶ。
首領は計りかねていた。
悪茄子を駆逐するのに、非常に大きな戦力が現れたのだが、その行動は予測がつかない。もし、アレが生き残った場合、どうすればいいのだろう。生かすべきか、殺すべきか。そもそも、殺せるのか?
肝心の思考の瞬発力が、弛緩してしまうほどの事態だった。
思考を放棄しそうになる首領を、我に返すように、後ろから声が聞こえた。
「俺はこっちです!!」
振り向くとそこには緑の人型がいた。さっきの生き残りの一体だ。そいつが口を開く。
「やっとわかりました。こいつの目的が!
そして、俺を戦わせた理由も!!」




