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福見福子の最終定理 第1章 始まりの仮説  作者: 黙定六
始まりの仮説
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第肆肆話 Pluckiness

パーーーーーーーーーン!


 突然、結界部屋に乾いた破裂音が響き渡る。


「第3段階が始まったぞ。実が熟したようだ。」


 首領が呻くように告げる。

 悪茄子の花はいつの間にか実をつけ、それが黄色く熟していた。その内の一つが破裂したのだ。中の種が散弾のように飛散し、結界の壁に突き刺さる。

 その瞬間、タネは火花を散らして燃え尽きた。


「玄爺。どのくらい持ちこたえられる?」


「100発やそこらは。しかし、それ以上は危険です。」


「おいおい。実は500か1000はありそうだぞ。

 わかった。ワシが行く。」


「私も参ります!父上!!」


 それを聞いて陣も勢いづくが、


「お前には無理だ。下がっていろ。」


 すぐに制されてしまった。


「何故ですか!?何故、あいつは認められて、私は認められないのですか!!」


 俺を助けたい気持ちに嘘はないのだろうが、少し本音も漏れてしまった。

 首領はそれを察した様子で陣に告げる。


「みてりゃあ、わかる。」


 首領の中へ向って歩き始める。

 いよいよ結界に接するというところで陣が叫ぶ。


「玄爺!結界を解除しないのか!!」


「今、一瞬でも解除すれば、その隙にタネを外に飛ばされます。第3段階以降は、何があろうと解除できないのです。しかし、首領にその必要はありません。」


「みてろといったろうが。」


 首領は右腕を前に突き出し、手の平を結界に向って広げると、ゆっくりと結界の中に突き出す。

 結界に触れれば反発するはずだが、手の平はするりと結界を抜け、手首まで通過してしまった。


「ここからが難しいんだよな。」


 首領は呟くと、眼を瞑って意識を右手に集中する。一瞬、手首から先だけ気の流れを止めると、流れを反転させた。

 流れが安定すると、眼を開き、少しずつ前へと進む。それに合わせて、流れの境界線を少しずつ上腕方向にずらしていく。


「私の結界は2重構造なのです。内側と外側で、気の流れを逆にしてあるのです。このため、ただ気を同調させただけでは内側の結界に阻まれてしまいます。それで、あのような操作をなさっているのです。」


「簡単に言ってるけど、体の一部だけ流れを反転させるなんて、できるもんなのか?」


 陣が驚いている。


「普通はできません。しかし、『結界殺し』の一族なら可能でしょう。」


「それって、俺にもできるって事か?」


「そうです。血の滲むような修練が必要ですが。」


 首領は右肩の付け根まで結界に侵入していた。


「ここからは非常に危険です。首領に話しかけないで下さい。」


 境界線が首領の肩を超え、頭部に差し掛かる瞬間、


パーーーーーーーーーン!

バチュン!!


 悪茄子の実が破裂し、タネが首領の顔のすぐ近くに着弾した。

 しかし、首領は微動だにせず、結界抜けの繊細な作業を続けている。

 頭部がすり抜けたところで、首領はニヤりと笑うと、


「俺は無知で鈍感だからよう。」


と、軽口まで叩いてみせる。


「親父!集中してくれ!!」


 陣の方が気が気ではないようだ。


 もし、結界面が脳や内臓に触れている時に集中を乱せば、体の内部に直接のダメージを受け、恐らく死に至っただろう。恐るべきは、気流の一部反転という高等技術以上に、その胆力であった。

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