第肆弐話 Voice
「おい!なにつっ立ってんだ!逃げろ!!」
結界の外から大声で陣が叫んでいる。
「玄爺。俺を中に入れろ!早く!!」
「それはできません。今、結界を解けばもう2度とあれを封じる事は出来なくなります。」
「なら、このまま見殺しにしろっていうのか!」
「お前が入っても犬死にするだけだ。」
首領が現れる。
「しかし父上。あいつは犬死にしてもいいと言うおつもりですか!」
「あの少年には試練が必要だったのだ。もしここで死んでも、それは意味がある。だが、お前がここで死ぬ事は、ただの無駄だ!」
「死ぬことに意味だと!?それは、お前らにとって都合がいいってだけの話じゃないのか!?」
陣が怒っている。もはや喧嘩口調だ。
「ああそうだ!あいつは死んでも俺の役に立つが、てめえは糞の役にも立たねえから、すっこんでろ!!」
陣が肩を震わせている。
「もういい。押し通る。後がどうなろうと、俺は知らん!!」
陣はずかずかと結界の間へと入ろうとする。その間に司が走りこんで押しとどめた。
「ダメです。首領はああ見えて、深いお考えのある方です。今は我慢してください。」
「うるせえ。あんなクソ親父の言うことなんか聞いてられるか!目の前で、友達が殺されようとしてんだぞ!!」
俺は鉈を振るい続けている。テントウムシも悪茄子も、あと少しで全滅しそうなんだ。最初は無限だと思っていた。でも、攻撃は確実に効いていた。あと少し、あと少しなんだ。穴から出てくる加勢も、わずかに漏れ出してくる程度だ。あと一息、死力を振り絞れば撃退できる!!
もう、何も聞こえない、何も感じない。ただ、動くもの目掛けて鉈を振るい続けるだけだ。
それだけだ。
それだけでいい。
あと少し・
あと少し・・
あと少し・・・
『友達が殺されようとしてるんだぞ!』
何?
なんだこの声。
邪魔するな・・・
何もかもぶっ殺す。
じゃないと、いくらでも増えやがる。
『おい!
聞こえるか!
早く逃げるんだ!!』
逃げる?
何から?
もうちょっとで倒せるのに。
『離せーーーーっ!
俺が助けるんだ!
絶対に!
こいつには借りがあるんだ!!』
何の事だ?
そもそも、こいつ誰なんだ?
『借り』なんてないだろ?
えーっと、何だっけ?
俺、今、何してたんだっけ?
『しっかりしろ!
意識を取り戻せ!!
あいつらには、お前が必要なんだろうが!!!』
あいつら?
あいつらなら、今、ここにいるじゃないか。
2人とも一緒に戦ってるはずだ。
戦ってる?
何と?
誰と?
『眼を開けて!
死んじゃうよ!
死んじゃやだ!!」
福子の声だ。
俺が死ぬわけないだろ。
何を言ってるんだ。
あと少しなのに・・・
『そこは危ないよ・・
それは幻。
あなたの恐怖が生んだ影。
本当の敵ではないの。』
なんの事だ?
小杖なのか?
本当の敵って?
「いいかげんにしないか!
明人!!」
久々に聞いた声に、思わず俺は眼を見開いた。




