第弐漆話 Jail Break
「あんたなんかと行かないよ!」
福子の声だ。どうやら、さっきの空間にいる間、時間が止まっていたらしい。
「それは残念ですねえ。楽しい旅になるはずだったんですが。では、私たちも先を急ぎますのでこれで失礼します。気が変わりましたらいつでもお声かけ下さい。」
あっけに取られる俺を尻目に、男はさっさと道を下っていった。
「随分、あっさりと引き下がったね。」
小杖がいぶかしんでいる。
「どっかで待ち伏せする気なのかもよ!」
福子は頬を膨らませた。
あっという間に坂道を降りてきた男に、2人の男女が合流する。男の方が声をかける。
「隊長。お一人ですか?」
「ああ。」
「誰か一人は連行するというお話でしたが。」
「気が変わった。」
「本部の意向に逆らうつもりですか?」
「お前、俺に意見するつもりか!?」
男の声が怒気をはらむ。すかさず、女の方が口を挟む。
「我々が仕えているのは隊長です。隊長以外の誰の指図も受けません。隊長が本部と敵対するのなら、我々も本部を相手にする覚悟です。」
「滅多な事をいうもんじゃありませんよ。私に反逆の意思などありません。本部の指示は私の指示でもあるのです。」
「失礼いたしました。」
「あいつは自力で私の『領域』から抜け出したのだ。」
「まさか!」
部下の男が目を見開く。
「隊長の『領域』は、学派が認めたこの世界で唯一第1等の力。あらゆる力に対して優位のはず。破られるなど考えられません。」
「だが『不破の盾』では無かった。それをあの男が証明したのだ。」
「学派へはどう報告されますか?」
「そのままだ。『拘束できなかった。監視を継続する。』でいい。」
「わかりました。では、そのように。」
「あいつらはお前たちに任せる。私は他に気になることがある。」
「『虚数時空間』ですか?」
「『教授』がそこにあらわれたらしい。」
「あの『教授』ですか。」
「そうだ。虚数現象研究の第1人者にして、極めて困難な虚数時空間の検出をいとも簡単に何度も行う人物だ。」
「いろいろと学派内でもいわく付きの人物ですね。」
「彼が何に興味をもっているのか知りたい。44番付近を調査した後、お前たちと合流する。それまで3人には接触するな。」
「わかりました。」
立ち去る隊長を見送ると、2人は宿へと向かって行った。




