第佰伍話 Wish
「俺は君の望みを叶える為に来たんだ。」
「僕の望み?」
俺は本題に入る事にした。
「君の作ったこの世界は、悪い奴に利用されている。そのせいで、この村の人たちが沢山閉じ込められているんだ。」
「動物の体を沢山送り込んできた人の事だね。」
「そうだ。あいつから村の人達を助けるため、俺に力を貸して欲しい。俺は君の望みを叶えるために力を尽くすから。」
「そういう事だったんだね。でも、僕の望みは叶わないよ。だって、禁忌を犯してしまったから。」
「禁忌?」
「そう。絶対にやっちゃいけない事。僕の望みはね、母様とずっと一緒にいる事だったんだ。」
「それのどこが、望んじゃいけない事なんだ?」
「そうじゃない。鬼道は他人の為に使う力なんだ。自分の望みを叶える事に使っちゃいけないんだ。」
「禁忌を犯すとどうなるんだ?」
「望みが叶うと同時に消滅してしまう。今、僕がここにいるのは、望みが絶対に叶う事が無いから。」
「望みが叶わない?それは何故?」
「母様も禁忌を犯してしまったから。『鬼』ってて言うのは、力を暴走させてしまった鬼道使いの事なんだ。
近づく人々の欲望を増幅してしまう。世の秩序が乱れ、荒廃させる存在になってしまう。」
「照様は半ば無理やり都へと送られた。そこで、人心を惑わし、蜂起へと駆り立てたとされている。だが、貴族たちの圧政に耐えかねていた民衆は、照様が現れずとも爆発寸前だったのだ。
むしろ、暴力に向う民衆を抑え、窮状を帝に訴え出ようとなさっていたのだ。」
首領が真実の続きを語っている。
「それほどの方がなぜ『鬼』に。」
岳斗が尋ねる。
「帝に女木家は貸しがあったそうだ。なので、目通りの許しを得る事はできたそうだ。そして、帝に接見する直前、現れた頼政様に弓で射られたのだ。」
「なぜ、そのような卑劣な事を!?」
「照様は、鬼道の為に舞う際に、イノシシの牙を使われてたそうだ。しかし、イノシシの牙は鋭利な刃物でもある。それを持って、帝を殺害しようとしていたのだと主張なさったのだ。」
「そんな馬鹿な!」
岳斗は心から落胆している。
「それが、陣家の真実だ。お前も党首になるのなら覚悟を決めなさい。我々は罪を背負っている。許される事の無い罪だ。だからこそ、良くあらねばならない。人々と共にあることこそ、照様への罪滅ぼしだと肝に命じなさい。」
岳斗は神妙な面持ちで、
「この、命に代えても。」
決意を言葉に込めるのだった。




