約束
「おはよう。速水さん、なんか良いことあったの?」
真中悠陽はすでに教室についていた。私も早い方だと思っていたけど今日も彼に負けてしまった。私の順位はいつも2番だ。
「いや、特になんかあったわけではないよ。あ、おはよ。」
城田くんのこと、話さない方がいいよね。私は直感でそう感じた。
「そっか。…あのさ、今日の帰りちょっと付き合ってくれない?」
「なんで?」
今日は特に用事はない。
「駅前にさ、新しく出来たパンケーキのお店あるだろ?あそこのさ、お試し券もらったんだ。男一人で行くのってちょっと恥ずかしいしさ。ちょうど二枚あるからよかったら帰りにどうかなって。」
とても、魅力的なお誘いだった。そこのパンケーキ、私も食べてみたいと思ってた。
「うん。行きたい。」
パーっと表情が明るくなる。案外わかりやすい人なのかもしれない。
「じゃっ約束な。」
にこにこ、チクリ。まただ。彼が笑うと胸が痛い。あと、少しの罪悪感。悪いことをしている気分になる。苦しい、苦しいよ。
そんな時、携帯がなった。メールの着信音だ。画面表示を見ると、城田くんの名前。
ー今日の放課後、会えないかな?
私はすぐにいいよ。と返していた。そしてパンケーキのことを思い出す。あ、やばい。
「真中くん、ごめん用事できちゃった。」
「へ?……あ、そっか。じゃまた今度誘うわ。今度は絶対行こうな。」
無理に笑っていることが私にだってわかった。チクリ、チクリ。また積もっていく。今のこれは大きな罪悪感だ。城田くんと放課後会えるのが、嬉しいはずなのに、なんでこんなに苦しいの。