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退院

 あの事故から2週間、私は少しずつ回復して少し早いが、退院できることになった。

「ちぃちゃん、退院おめでとう。」

真中がニコリと微笑む。つられて私も目を細めた。

「ありがとう。」

まだすこし慣れない松葉杖をカツカツと鳴らしながら帰路につく。

久々の家路にはぁ、とため息がでる。

「どうしたの?疲れた?」

心配そうに覗き込む真中に頭をふる。

「違うんだ。やっと帰れるんだなぁって思って。」

「そっか。」

しみじみとした空気も今は少しだけ心地よく感じた。

 久々の大学に疲れを残しつつ校内のベンチで真中を待っていた。

ぼーっと歩いていく人たちを見つめる。

「あ!」

思ったよりも大きな声が出て歩いている人がこちらに振り向く。彼も、例外ではない。私を確認するとふいっと顔をそらして早足になる。私はそれを松葉杖で追いかけた。

「待ってよ城田くん!」

もう少しの距離が追いつけない。

「うわっ…!」

少し小石に躓く。その声を聞いて城田くんが振り返る。その隙を狙って私は城田くんに飛び込んだ。

「ちょっ…バカ…!!」

カランと松葉杖の落ちる音がした。

「あんた…バカかよ…。」

そう言いながらも私を支えてくれる。

「城田くんに、言いたいことがあるの。」

「突き落としたことなら言えばいいよ。」

「違う、そういうことじゃないの。突き落としたことなら言わないよ。」

「じゃあなに?」

城田くんは顔をしかめる。

「謝りたくて…ごめんなさい。私、ちゃんと確認せずに城田くんの気持ちを踏みにじるようなことして、その…」

「ほんと、あんたってバカなんだね。俺だってあんたの気持ちを利用したし、それどころか突き落としたし…」

そう言って私の右足を見る。

「大丈夫!あの驚いた顔は素だろうし私は全然気にしてないよ。」

ニコリと微笑むと城田くんもバカと呟いて笑った。

もうすぐ、真中が来る頃だ。



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