大きな幸せ
「睦月…なにやってんだよ……。」
振り返ると苦い顔をした真中がいた。
「何って?俺、なんかしてる?」
城田くんはニヤリと笑いながら言う。真中は今にも殴りかかりそうだ。私は少し焦って声を上げる。
「ま、真中くん…!下、下に…松葉杖……!」
「松葉杖?」
そう言って下を見た真中は小さく何かを呟き、松葉杖を拾い上げる。
「はい。おいで、ちぃちゃん。」、
にこりと笑った真中の顔が笑っていない。これは相当怒っているらしい。
「俺、こんな風にしたやつをやっぱ許せないよ。事故とはいえ睦月とこんな風になるなんて想像もしてなかった。」
「真中くん……。私はそう思ってくれるだけで十分だよ。だから、犯人探しとかそういうのは…」
私の声を遮るように城田くんが口を開く。
「俺だよ。全部、俺。」
「っ……!城田くん!」
「やっぱり…だと思ったよ。………それで、ちぃちゃんに言うことは?」
真中はすごく怒っていた。でも目の奥には優しさが見えた。
「………千聖ちゃん…ごめん。ごめんなさい。俺は君の気持ちを知っていて利用したどころか、取り返しのつかないことをした。あの時からずっと羨ましかったんだ、、幸せそうに笑う兄さんと千聖ちゃんが…兄さんにやつあたりしたって優香は帰ってこないのに……。」
「いいよ。私、生きてるし!うん、大丈夫!」
私はとびきり笑顔で笑う。心配なのは真中の方だ。恐る恐る振り返ると真中はとても穏やかで優しい顔をしていた。
「これ、優香から睦月に…。ずっと渡せてなくてごめんな。」
真中は1枚の手紙を取り出して渡した。城田くんは受け取ってすぐに読んだ。そして泣いた。
「ごめん…ごめんな……ありがとう、兄さん…。」
城田君と別れて私達は帰路についていた。
「別に送ってくれなくてもいいのに。」
「弟の不始末は兄がやらないと。……なーんて俺がちぃちゃんと帰りたいだけだから、気にしないで。」
私は恥ずかしくてでも嬉しくて下を向いた。足についたギブスが見える。
今、真中と帰れて幸せに感じていた。だから不謹慎かもしれないが少しだけ良かったかなと思う。
「ちぃちゃん、俺ね、やっとここまで来れて嬉しいよ。」
そう言って笑う真中の顔から目が離せなくなる。
「これからはギブスが無くたって毎日送るし、何度だって好きだって言うよ。もう、後悔はしたくないから。…だから、ずっと一緒に居よう。」
「…うん!」
嬉しくて涙が溢れた。泣くことがこんなに幸せだと初めて知った。
たくさん遠回りしたけど、これからはずっと一緒に歩いて行く、キミと……。
長く、長く空けてしまいましたが、終われて良かったです。
1話でも読んでくれた方に感謝します。
ありがとうございました。




