1 僕と茶髪の少女の始まり
7年前の夏、僕は田舎にある母の実家に自分の家族と従兄弟の家族で1週間ほど泊まっていた。
これまで夏休みや冬休みは父方の祖父母の家に泊まっていたので僕が来るのは今回が初めてだった。
今回は両親の事情でこっちに来ることになったらしい。
従兄弟はまだ小さく僕と遊べるほどの年齢では無かった。そのため遊び相手がいなくてずっと退屈していた。
5日目の昼間、他のみんなは買い物に出かけた。
僕と祖父だけが家に残った。
祖父はあまり構ってくれなかった。
そんな中、当時小3の僕に残された選択肢はひとつしか無かった。
‘’一人で外に遊びに行くことだ’’
祖父が見ていない隙に玄関から外に出ることに成功した。
玄関を出ると綺麗に手入れされている庭があり、まるで庭園のようだった。恐らく祖父が管理しているのだろう。
庭を抜けると生垣の間に最近変えたであろう新しめの門扉があり、門扉を開けると、すぐ目の前が田んぼ沿いの道路だった。
奥には1kmくらい田んぼが続いていて、その奥には大きな山があった。
ここまで来る最中に母が山の中に大きな公園があると言っていたのを思い出し、僕は目の前にある山に向かった。
20分くらい田んぼ沿いを歩いていくと、山に入るための細い道路が現れた。
そこを登ってしばらく歩いて行った。10分後疲れて座った時には何回か分かれ道を曲がっていて、既に自分がどこにいるのか分からなくなっていた。
それに気づかず僕はただ無心に登り続けていた。
しばらく歩いていると道路沿いから入れそうな所が出てきた。柵がありその奥は山の中とは思えないほどの広い平原があり、隅には遊具が数個と奥は林になっていた。公園の真ん中には大きな木があった。
僕は当時何を思ったのか、木に寄りかかり座って黄昏ていた。
いつの間にか僕は寝てしまっていた。
目を覚ました時、目の前には夕陽とグラデーションになっている焦げ茶色の長い髪と真っ白のワンピースが風になびいている自分と同じくらいの年齢の女の子が僕を不思議そうに見ていた。
それに驚いて跳ね起き僕は相手の顔に思いっきりぶつかってしまった。
「っ...ごめん!!」
「もう!きをつけてよね!」
腰に両手を当て頬をふっくらとさせ大きな声で言ってきた。
「ごめん...。えっと、なんでここにいるの?」
「そこに家があるでしょ!それがわたしの家!」
自慢げに言った彼女の指しているほうを見てみるとそこには林しか見えなかったがその奥をよく見てみると家があった。
「そうなんだ!だれと住んでるの?」
「お母さんとふたり!お父さんは、都会でわたしのためにはたらいてる!」
「ぼくも都会にすんでるよ!」
「きみ、ここの人じゃないの?」
「おばあちゃん家にきてる!」
「そうなんだ。」
彼女は少し悲しそうな顔をした
「もうくらいよ、帰らなくていいの?」
そう聞かれた時どう帰ればいいのか分からないことに初めて気づいた。
「あっ...。」
「帰り方が分からないの!?」
「ごめん。」
「わかった!お母さんいるから聞いてくる!」
「本当に?ありがとう!!」
そう言って家の方に向かっていった。
しばらくしてお母さんを連れて戻ってきた。
「こんばんは!お名前は?」
娘に似た元気なお母さんが質問してきた。
その横では偉そうにして立っている彼女がいた。
「...くわたれいるです!迷惑かけてすいません!」
「大丈夫だよ!くわた...もしかして桑田明美さんのご家族?」
祖母の名前だ。
「そうです!」
「そう!!明美さんのご家族!良かった!じゃあ家まで車で連れてくから家まで来てくれる?」
「ありがとうございます。助かりました!」
「私の名前は高畑夕陽。この子の名前は」
「春だよ!よろしくね、れいる!」
「よろしくね、はるちゃん。」
「はるでいいよ!わたしもれいるって呼ぶから!」
「わかった。はる!」
春がニコッと笑って、夕陽さんが歩き出したので後ろを二人でついて行った。
彼女達の家は白い外壁に茶色の大きな三角屋根が特徴的な、いかにも山奥にありそうな家だった。
「鍵取ってくるから2人は車の前で待ってて!」
そう言われ裏口から夕陽さんが入っていった。はるに連れられ二人で家の横を抜け玄関前に来た。
「ここで待ってよう!れいる!」
ニコニコしながら玄関に座った
「なんでそんな嬉しそうなの?」
「わたし、あんま友達いなくてこうやって同じくらいの男の子と話せるのが嬉しくて!」
当時、僕が会った瞬間小学3年生とは思えないほど可愛い春に僕は一目惚れしてしまった。そんな彼女が友達ができないことに疑問を抱き、更に聞いてみると、彼女はその容姿と山に住んでいるということからそれまでは無かったが小学3年生になりクラス替えをしたときから、無視をされたり悪口を言われたりしているらしい。
「あと2日間はここにいるから一緒に遊ぼうよ!」
「え?れいるは私がいじめられてるの聞いて、関わりたくないとかおもわないの?遊んでるの見られたられいるも、、、」
泣きそうになりながら言った
「大丈夫だよ!ずっとここにいる訳じゃないし。ね!だから遊ぼう!」
「れいる、ありがとう!」
夕陽さんが家から出てきて、戸締りをした。
「さあ乗って!」
普通の軽自動車だ。
ふたりで車に乗り込んだ。
シートベルトをし、エンジンをかけエアコンをつけたあと走り出した。
道は暗く、野生動物が出てきそうな山道だった。
そこをどんどん下っていった。
「お母さん聞いて!れいると遊ぶ約束した!」
「ほんと!よかったわね!れいるくんもありがと」
軽く返事をしたら、どこで遊ぶかを聞かれた。
「さっきの公園はどう?」
「そうしよ!でもれいるは遠いよね、、、」
「じゃあれいる君の家から近い中央公園はどう?」
夕陽さんが提案した。春は少し迷ったがれいるを優先して了承した
「じゃあそこに明日の10時集合ね!」
「うん!わかったよ。」
家に着く頃には19時を回っていた。家に近づくと家族全員で僕を探していることに気がついた。家の前で降ろしてもらった。そこには祖母がいて僕に気づくと、駆け寄って抱きしめてくれた。その後祖母は家族に電話しみんなが戻ってきた。家族全員心配していたと怒られた。春と夕陽さんにみんなでお礼を言い帰ってもらった。帰り際、春に手を振り返した。その後、たっぷり祖父と並んで怒られた。母に春と遊ぶことを話したら、公園の場所を教えてくれた。明日は弁当を作ってくれるらしい。その後は家族でご飯を食べて、今日の出来事を思い出しながら眠りについた。
翌日の朝9時に母に起こされ、朝食を食べた。
母によると祖父は庭の手入れ、祖母は畑に従兄弟一家は朝早くに帰って、父と妹はまだ寝ているらしい。
朝食を食べ終わり、部屋に戻り着替えて台所に戻ったら母から弁当を渡された。
「春ちゃんによろしくね。15時くらいに迎えに行くから。」
「わかった。行ってきます!」
そう言って家を出た。昨日教えてもらった通りに行くと大きな公園があった。そこには春と夕陽さんが既に到着していた。
春が僕を見つけ走ってきた
「れいるぅーー!」
「春ひさしぶり!」
「ひさしぶりって最後に会ったの昨日だよ?れいるっておもしろいー!」
僕と話す時の笑顔は凄く可愛かった
夕陽さんはまた迎えに来ると言って家に帰って行った。2人きりの公園は夏の日差しとセミの鳴き声が響いていた。ブランコくらいしか置いてなくその他は自然の凹凸でできた草原のような感じだった。
そこで僕たちは鬼ごっこをしたり、二人で持ってきたお弁当を食べたりして、2人だけの時間を過ごしていた。2時になる頃には親友のように仲良くなっていた。遊び疲れて草原に二人で寝転んだ。
「れいるって?どこに住んでるの?」
「神奈川ってわかる?」
「うーん?都会だよね!」
「ここに比べればそんな感じだよ!」
「明日帰っちゃうの?」
「うん、帰らないと学校に行けないから。」
「れいるは寂しくないの?」
泣きそうになりながら聞いてきたので寂しいと返事をしたら抱きついてきた。
「れいるが、いなくなったら…わたし、これから誰と遊べばいいの…?ううっ、…そんなの、絶対にいやだよ。ひとりにしないでよ...。」
「僕だって、春と会えなくなるのは寂しいけどもう一生会えない訳じゃないよ!必ずまた会えるよ!」
「でもやだよぉ...。」
「春、高校生とか大人って好きな人同士で付き合うって言うことをするんだって」
「うん...。」
「ぼくたちも大きくなったらそれをしようよ!」
「え、でもそれって好きな人同士って...」
「僕は春のこと好きだから!まだ子どもだけど!二人で意味が分かるようになったら付き合うをしようよ!」
「私もれいるの事好き!だからする!ずっと待ってる!」
「うん!約束ね!」
「わかった!」
そう言って2人は指切りをした。15時になりちょうど2人の親が迎えに来た。
「れいる!忘れないでね!約束!」
「うん!もちろん!」
2人して泣きながら別れた。
流れるように時が過ぎいつもの生活に戻っていった。
それから今まで母方の祖父母の家に行く機会は訪れなかった。
暑い夏が始まろうとしてますが!よろしくお願いします!




