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【完結】乙女ゲームの表と裏  作者: あまつ冴
4 イベント!
9/25

>>>>合同訓練

 カタカタ…馬車の車輪の音がする。合同訓練のあと、馬車には私とイザベラ………と、しれっとフェルディオが乗っている。

「ナナ…手を見せて」

イザベラに両手のひらを見せる。治癒魔法をかけてくれた。

 雷を受けとめた剣を握っていた手は、グローブは焦げてボロボロ。手はヤケドをしている。剣は溶けたように崩れたのだから、熱かった。で、済んだのはフェルディオの補助魔法のおかげでもある。




前々日……。

「もうすぐ、合同訓練イベントね」

今日はフェルディオは生徒会でいない。いや、いる方がおかしいのだが、あの手合わせの一件からやたら、いることが多くなった。

「合同訓練はね、訓練用の人形が暴走し、攻略対象キャラと力を合わせて止める。好感度が上がるイベント。あ、殿下の場合は親密度か…」

親密…、度…、

「このイベント…選択肢を間違えると、ゲームごとエンドになるのよ」

「へ?ゲームごと?」



『力を合わせて』が鍵で、剣と魔法を駆使して人形の攻撃を防ぎ、止めないといけない。攻略対象キャラで対処しようとすると、攻略対象キャラかヒロインがジ・エンド。ヒロインだけで対処すると学園ごと…、ドッカーン!!



「そんな危険なイベント……現実にしてほしくなかった……」

好感度を上げるための必要イベントなんだろうけど、命に関わるのは勘弁して欲しい。

「でね、もしもの時は、ナナに防いでもらいたいなって」

「まあ…死にたくはないので、やりますよ」

イザベラ…めっちゃ笑顔なんですけど?

「人形の暴走は、ゲームでは私がしたことになってるのよ」

「どうやって暴走させたの!?」

「断罪で説明があるんだけど、2つ魔力石を用意して、ひとつは人形に、もうひとつは自分が持って暴走させた、とあったわ」

?魔力石は聞いたことも、見たこともある。使い方はさまざまだけど、1番は魔道具。武器や防具にも使われることもあるそうだが、扱いが難しいと聞いた。

「それって、本当に可能なの?」

「わからないわね。回想シーンで、魔力石を使っている絵はあったけど、あの回想ってヒロインが思い描いたものだったし。イザベラは否定してたしね」

「別の犯人がいるのね」

「そういう風にも考えられるわね」

?なんだろう…あの笑顔は…




ー当日

 あの笑顔は、こういうことか!企みの笑み!防ぐことは承諾したけど、フェルディオと組むなんて聞いてない!

「イザベラ嬢がね、不穏な動きがあるから君と協力してほしいって」

「けど!何で私なんですか!」

そもそも、私は剣でもなければ魔法でもない。それなのに訓練のペアにされるなんて!

「私は護衛であって、生徒ではないんです!フェルディオ様と組めません」

「学園長とイザベラ嬢の許可はもらったよ」

イザベラの名前が出て、観客席のほうを振り向く。口パクで『やれ』と言った。

「はー…わかりましたよ」

命に関わるかもしれないイベントが起こるのだから、防ぐためにも、リリアーナの近くにいれる方がいいだろう。

「イザベラ嬢と仲がいいんだね」

「ふつうだと思います」

他の生徒もいるため、無表情を徹する。もうじきリリアーナの番になる。

「フェルディオ様もお嬢様と親しいのですね」

「ルディでいいよ」

うざい…うざったい…親しくなるつもりはないんだが…


バリィィ…軋むような音がし、バチバチと、弾くような音とともに火花が散る。火花だが、あれは雷の魔法だ。しかも上位に近い魔法。稲妻のように閃光が走る。


リリアーナは防護壁を張ったが、魔法が反射し、さらに雷魔法の威力があがっている。

「ナナ!」

フェルディオが補助魔法をかけてくれ、人形のもとに行く。さらに雷魔法の威力があがり、リリアーナの防護壁が崩れた。すぐにフェルディオが、魔法吸収型の防護壁を張る。

防護壁の大きさから、フェルディオの凄さがわかる。


私は雷を剣に集中させる。別の方向からも雷が襲ってくるが、フェルディオの防護壁が防いでくれた。魔法の威力に押されそうだが、力と勢いで押し切り、人形の胸に突き立てる。

魔力石が崩れる感覚がした。

「フェルディオ様!」

フェルディオを側に置いたのは、この暴走を起こした犯人を突き止めるため、魔力の見えるフェルディオにお願いしたのだろう。

その後は、犯人が見つかり、自供もした。この日のために控えさしていた別の騎士に連れて行ってもらう。

去り際に、殿下が難癖をつけていたが、イベントとはいえ、そもそもの原因はお前じゃないのか?

あの令嬢は殿下とデートしていた1人。嫉妬でこの事態を起こしたのだ。



「…事前に教えてほしかったです」

「言ったでしょ?暴走するんじゃないかって」

違う…そっちじゃない。フェルディオのことだ。肝心なことを言わずに私で遊ぶのはやめてほしい。

「剣が壊れました…」

治癒してくれた、イザベラを睨む。

「はいはい、剣買ってあげる。請求書を私に届けて」

これくらいしてくれないと、割に合わない。痛い思いもし、愛用していた剣を失った。

「フェルディオ様もありがとうございました。補助と防護壁助かりました」

「どういたしまして。剣と魔法の本来の戦い方をしただけだよ」

…そうか、『力を合わせて』というのはこのことだったのか。リリアーナが反射の防護壁を使ったことで、攻撃魔法の威力があがった。それはリリアーナが1人でどうにかしようとした結果だったのだ。あのまま威力が上がり続ければ学園ごとエンドになっただろう。

あ…、私とフェルディオを組ませたのは、本来の戦い方ができるから。このイベントをクリアできると踏んでいたのか。

「お礼に、ルディって呼んで」

………、……、…それは丁重にお断りをした。

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