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透明な箱

複数の人間の共通精神にサイコダイブ

 サラの指示のもと、ユージとエリーは昨夜、暴漢に襲われた、情報や武器ブローカーが運ばれた病院に向かった。ユージはヴァンから頂いた≪楽園の果実≫のおかげで、気力も体力もみなぎっていた。しかし、エリー以外のSKIES-ANGELたちは、徹夜の上、お腹が膨れたおかげで、今日は任せたと言ったきり、食事をしながら寝てしまった。おやおや、といった感じで、二人は病院に向かうのであった。


「ユージ、聞いたわよ。オリビアとそういう関係なんだってね。」

「エリー、君との関係はビジネスパートナーだから!勘違いしないで!」

「おやおや、そんなこと、お姉さまにいっていいのかしら・・・ウフフ。オリビアにいっちゃおーかな!なんて、嘘よ。でも、知らないことやわかんないことがあったら、また、お!し!え!て!あ!げ!る!」


「ありがとうエリー。でも、やさしくされると・・・・そーだ!次元のはざまの民は誰がいくのー?」

「さーね。この件が終わったら、みんなでいってもいいかもね。この色男さん!」


こんなたわいもない話をしながら、転移魔法陣で担ぎこまれた病院についた。すると、病院のフロントでかわいいピンクドラゴンが子供たちと遊んでいた。

「おいおい、ゼロ。子供たちは消灯の時間じゃないのか?」


ユージはダメな調査官をたしなめるようにいつもの口調で話しかけた。

「連絡くれたから、待っていただけだ!それより、娘が心配してたぞ!体はどうだ!」

「クラブのオーナーのおかげで元気になったよ。」

「なんだ、もう少しで死んでたのにな!ほしかったぜ!まー娘はホットしているがな。それより、エリーちゅぁんも来たのー。おじさんも何かてつだおーっか?」


エリーは軽くシカトをぶっこいた。ユージはピンクドラゴンのしっぽをつかむと子供たちの輪の中に放り込んだ。子供たちは嬉しそうに蹴り飛ばして遊びだした。


エリーはユージとともに、集中治療室に向かった。この時間になると、病院にいるのは緊急搬送してきた患者の家族が緊急治療室の前に陣取っていたり、消灯までの時間に電話や時間をつぶそうとする骨折患者とけだるそうな独身看護婦とすれちがったりと普段見慣れた昼の病院とは別の感じがした。しかし、エリーは薄暗くすこし怖いぐらいの病院の中を歩いてもオーラを放っていた。一般社会と隔絶した狭い病院内ということで、入院患者も廊下に響くピンヒールの音と、病室からちらりと見えた長い脚、そしてそのスタイルと美貌、欲求不満というより、欲求のはけ口を探していた患者たちは、一様に息を潜ませてみようと起き上がった。中には直接、口笛を吹いたり、松葉杖をしながら病室から出てくるものもいた。ある一人の、片目に包帯を巻いた患者が駆け寄ってきて話をしようとしたものもいた。

「あと、1週間の命なので、どうか1分でもいいので話をしてくれませんか?」


当然余命が30分になったのは言うまでもないが、エリーは拳の血を拭いながら面会謝絶の集中治療室の中に入っていた。ユージは病院の中で廊下にあった、肉塊と血の処理をしてから集中治療室に入っていった。


「もーエリーったら、仕事を増やさないでくれよ。でも病院だから問題ないけど。」

「それも仕事のうちよ。あんたがくるの遅いから私が準備をしちゃったわよ。まったく!」


ユージはベットに寝かされた2人の患者の頭に小型の機器が既に取り付けられていた。しかし、ユージは集中治療室が広く、十数人の患者と数名の医師がいる環境なのでエリーにここではまずいと促した。エリーは当然のように指を鳴らすと、魔法陣が現れて二人のが寝ているベッドごと転移しようとした。そのときまた、ピンクドラゴンのゼロがいつの間にか現れ一緒に転移しようと飛び込んだ。


「待てー!どこに連れてくのだー。まだ意識も取り戻してないぞー!ビュン!」


魔法陣が光、2つのベッドはユージ、エリーそしてゼロと共に光の中に消えた。そして、彼らはある場所に魔法陣で姿を現した。


「到着!着いたわよ。おまけもついてきちゃったけど、まあいいわ。」


周りを見回すと、アクリルのような透明の四角い箱が中央に置いてあった。そしておりたった、その部屋も、窓一つもなく、ドアが一つだけの石壁に囲まれた部屋だった。エリーはユージのお尻を軽く叩きながら指示をした。

「ユージ、患者が寝ているベッド2つ、透明な檻に入れて頂戴ね。私はこの部屋の準備するから!」


エリーはそういうと、黙々と新たに機器を設置を始めた。言われたようにユージも透明の檻にベッドを入れる。さらに、エリーは患者の頭と胸に配線をつなぐように指示をした。ユージはわかったように、酸素ボンベや医療機器を取り付けた。最後に、数十時間も流して置ける点滴を取り付けるとその透明な監獄から出た。


あたりを見回すと、目が回っていたピンクドラゴンのゼロが目を覚ましている。それも、犯罪対策室のエドナー部長に尻尾を持たれ吊るされた状態で!

「部長!もう大丈夫です。頭に血が行きましたから!!おろしてください。おろしてー。おろしてよー。おろせハゲ!」


エドガー部長は大きなくしゃみをした。「はっくしょん!バチーン!ドガ!ボコ!」

「ごめんごめん!くしゃみが!ははは、歳かな!幻聴まで聞こえたぞ。どおした、今度は目から滴が落ちてるぞ!ゼロ。」


「すいません。額に流れた汗が目に入ったもので・・・・あれー汗が赤いや!ドガ!」

「おいおい、寝るなゼロ。まぁー疲れてるからそのままでいいかな。いいことにしよう。」


コントみたいなやりとりに言葉を失ったユージだが、なぜエドナー部長がここにいるのか知りたかった。

「あのーエドガー部長?なぜ犯罪対策課の部長がここに?おられるんですか?」


エリーは額の汗を吹きながら眼鏡をはずし作業を中断して答えた。

「エドガー部長は死んだ私の母の兄なのよ!私のおじさん。ちょっと協力をたのんだのよね!」


エドガー部長もエリーには敵わないような感じでお茶を用意していた。

「いつも、エリーがお世話になって!ご迷惑をかけてすまんのー!お茶でも飲みながら作業をすすめたまえ!」


「おじさんにはよくしていただいているのよ。今回もちょっとした実験に協力してくれたのよ。ユージはここはじめてだっけ?」


「そうだ、エリーここはどこなんだ!」

「前に、凶悪犯を捕まえたときにここで取り調べみたいなことをしたんだ!サラとね!今回もそのつもりでここを借りたんだ。」


ユージははっきりと場所がわかった。

「ここって、犯罪対策室の凶悪犯罪用の取調室じゃないか!もしかして、ここで精神ダイブする気なのか?」


「そんな感じ!簡単にいうと逆囚人のジレンマみたいなものよ!個別に聞き出すより、互いの精神をつなげて共通の答えを探したほうが簡単でしょう。それに、共通の精神をつなげちゃえば嘘をつけないというより、会話なら嘘をすり合わせができるんだけど、会話のない環境ならば真実の本当のことがわかるんだよね。」


「それすごくない!多人数の共通精神環境でのサイコダイブなんて!本当にできるのか?二人の精神が崩壊しないのかよ!」


エリーは嬉しそうに指をピンクドラゴンをしめした。

「それが安全なのよねー。前にサラと自白用に実験してたのよ。例えば一人の人の精神にサイコダイブをおこなうと、精神の揺らぎが大きいからダメージが蓄積されやすくなるんだけど、複数の人間の精神を混ぜた状態でサイコダイブを行うと、精神が他人とまじりあったまったく自分の精神とは感じなくなり、それぞれの人間は夢を見ているぐらいにしか感じないのよね。」


「そうかもしれんが。サイコダイブは潜る人間のほうにも負担がかかるんだぞ!」


「だから、ゼロがいい例なんだって!今のゼロの状態はわかる?ユージ。」


「アバターBODYじゃなくアンドロイドに入ってる状態か・・・ってことは、魂は仮想空間に入ったまま?」


「そうなのよ!ゼロはアンドロイドを仮想空間から操作しているのよ!」


「バックアップは仮想空間で保護している2重のプロテクトか・・・これならいけるかも!エリー本当にこんなサイコダイブをやったことがあるのか!すごいな!」


エリーはさらに見慣れた機器を取り出した。ユージはそれを見てゼロを起こした。

「ゼロ起きろ!オリビアが見てるぞ!」

「ハッ!オリビア!おはよう・・・???オリビアはどこ!!いないぞ!」


ユージはピンクドラゴンを猫の首を持つようにして尋ねた。5体もってきてくれないか。行きたくなければ、いいよ。俺がオリビアに直接あって持ってくるから!」


「そんな大事な用件は直接ユージさんが行く必要ありません。このゼロが行きますよ!」


「10分たってもこなかったら、迎えにいくから・・・」

と言いかけたところでゼロはユージの口を押えた。


「今ここに転移魔法でアンドロイド送ってくれるそうだよ。3分待ってね。」


ゼロはアンドロイドに備わった通信ですでに手配したのであった。


しばらくすると、転移魔法でコスプレまがいのアンドロイドが送られてきた。そして、一枚の紙がひらひらと落ちてきた。紙を見ると字が書いてあった。


お父さん本当にこれでいいの!人型2体・トラ型1体・鳥型1体・亀型1体=計5体


ユージは拳を握りながらワナワナしていた。その横でニヤニヤしながらピンクドラゴンは跳ねていた。

「ユージ完璧だろ!サイコダイブする環境にあわせたチョイス!陸でも空でも水中でもいけるぞ!てへ!」


「ゼロ!テメーいい加減にしろ、あくまでもサイコダイブに入る前の準備としてのアンドロイドだぞ!この亀みたいので精神環境に行くわけじゃないんだからな!」


エリーはため息をついて、人体型のアンドロイド2体の手足をもいだ。

「これで、ヒューマンタイプのアンドロイドに乗り移っても逃げれないな!ドラゴンタイプなら跳ねももがないとね?」


ゼロは頭を床にこすりつけるようにエリーに土下座した。ユージはゼロを無視して、もいだアンドロイドを透明な監獄にいれて、魂を回収してアンドロイドに入れる準備に取り掛かった。エリーはエドナーにサイコダイブについて話をした。


「もしかして、サイコダイブ中にリスクがあるとまずいから、予備に私たち用に3体用意したけどこれじゃまずいかもしれないけど・・・」

そう言いかけていると、エドナーはエリーに言い聞かせた。

「感情に任せるのはよくないぞ。アニマル型のアンドロイドを囚人患者の方にすれば問題なかったはずだぞ!エリー。」


エリーは軽く笑いながら、エドナーに愛想を振りまいた。ユージは空気が凍らないように大声でやる気を見せた。


「オレとゼロでサイコダイブするから任せろ!エドナー部長もエリーも安心してくれタイガー型と亀型のアンドロイドは予備で保管してくれ!とりあえず鳥型のアンドロイドを使うぜ!」


そういうと、慣れたようにユージはアバターBODYの変身を行い3体に分かれた。そして、一体を仮想空間に送るようにサーバーの調整を行い鳥のアンドロイドに移った。エリーはその様子を見ながら感心していた。

「ユージもしかしたら、12体ぐらいアバターBODYを操れるんじゃないの?」

「そうかもしれないよ。≪楽園の果実≫の効果は絶大だよ。3体ぐらいにわかれても全然負担がないんだ!」


そういっているまに、他の2体のユージ達は囚人患者のアンドロイド準備も終わった。

アンドロイドに入ったユージは直前に入っていたアバターBODYの上に乗っかり準備をする。また、あと2体のアンドロイドをそれぞれのアバターBODYのユージたちが抱えて見守り始めた。


準備ができたと確認が取れたエリーは掛け声を挙げた。

「アンドロイドサイコダイブ!Are you ready...Go!」


エドナーはオロオロしているピンクドラゴンを捕まえ装置を付け始めた。

「エリーよ。ゼロも行かせてもいいかな!ジュドーの件もあるから、ちょっとは役に立つだろうからな!」

「いいわよ!エドナーおじさん。そのかわり、ゼロのモニターは協力してよね!私はユージの方でいっぱいだから!そうだ!そこ!トラのアンドロイドを抱えたユージは護衛を頼むわね!もう一人はバックアップだからね!」


「了解!」と大きな声を上げたユージ達はドアの前と囚人患者がいる透明な箱の前に戦闘をするかのように準備を始めるのであった。

ぼちぼちと更新します。


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