【第一部】9話
ふと気付くと沙織ちゃんが横になり寝てしまっていた。
熊さんもそれに気づき、
「ほら、沙織。そんな所で寝ると風邪引くぞ。」
熊さんの声が届いたのかゆっくり身体を起こした。
「んんぁ~、ごめんなさい。寝てしまいましたわ。」
(この表情可愛い過ぎるやろう~~!!)
さっきまでの熱い思いはどこえやら・・。
沙織ちゃんの寝ぼけた顔に萌えてしまった。
時間を見るともう日付が変わろうとしている。
「そろそろ風呂入って寝よう。」
熊さんがそういうと沙織ちゃんが、
「翔さんとお父さんは先に入ってきて下さい。私は洗い物しておきますので。」
「自分も洗い物手伝いますよ」
俺がそう言うと沙織ちゃんは、
「大丈夫です。目も覚めましたので入って来て下さい。」
俺は渋々お言葉に甘える事にした。
「ほら、とっとと入るぞ。」
「あっ!はい!!」
ん?ちょっと待てよ??
まさか・・・・・熊さんと一緒に入るって事!?
一途の不安を抱きながら一緒に風呂場へと歩きだす。
「寒いなぁ!早く湯船につかりてぇぜ」
「あ、あの~もしかして一緒に入るんですか?」
念のため聞いてみた。
「ん?俺と一緒は嫌か?それとも沙織とがいいか?」
「はい!!!!あ・・・・・」
もう気付いた時には頭の天辺に激痛が走っていた。
熊さんのゲンコツを食らったのだ。
「くだらん事はいいからとっとと入るぞ。」
俺は痛みで涙目になりながら服を脱いだ。
俺が全部脱ぎ終わった時にはもうすでに熊さんは風呂場に脱衣所を抜け風呂場で身体を洗っていた。
俺もそれに続くように、身体を洗い出した。
一応この風呂には二人分のシャワーが隣同士で取り付けてある。
やはり、男と言うのは風呂場で一番気にするのが息子のサイズ。
身体を洗いながらチラチラと横目で熊さんの息子さんを拝見しようとした。
(まさかこの図体でミニカーサイズじゃねぇだろうな。)
内心バカにしながら覗いていると・・・それらしき面影が・・
(ん?あれ?あれれ~~?なんだろうこの物体はぁ?)
そこにはそびえ立つ・・いや、表現がおかしいな。
まさにツチノコサイズのどでかい息子さん登場!
俺も自分の息子さんは自慢じゃないが平均以上だと思っていたが、
ツチノコさんには完敗だ・・・。
もはや俺の方がバカにされると思いタオルで隠すようにしたら、
熊さんに・・・
「なぁに、男同士で隠してんだ。さてはミニサイズか!?」
(ちきしょーー!俺のセリフを奪いやがって!!あーそうさ!あんたに比べりゃミニカーサイズだよ!)
その後、散々バカにされながらも男同士の入浴は終わった。
お風呂から上がり先ほどご飯を食べた部屋へ戻ると全て片付き、沙織ちゃんはコタツに居た。
テーブルの上には沙織ちゃんの可愛らしいパジャマが畳まれている。
次にお風呂に入る為、待っていたのであろう。
すると熊さんが、
「風呂空いたぞー。」
「じゃ入ってくるね。それとお父さんの部屋に翔さん用のお布団も敷いときましたから。」
「悪いな。」
「なにからなにまで有難う御座います。」
俺もお礼を言った。
すると沙織ちゃんは軽くお辞儀をすると、パジャマを持ち出ていってしまった。
「本当凄いですね。沙織ちゃんは。」
素直に思った事を熊さんに言ってみた。
「まぁ母親譲りだろうな。亡くなった女房も気が利くし、面倒見の良い女性だった」
そう語る熊さんの表情がどこか寂しげに思えた。
熊さんの部屋に入ると、綺麗に二つの布団が敷かれていた。
早速布団に潜ってみる。
フカフカで暖かく気持ちがいい。
熊さんが、
「それじゃ電気消すぞ。」
と、言うと部屋は真っ暗になった。
静寂の時が訪れる。
俺は目を閉じようとしたが、どこか怖かった。
また、奴が出てくるんじゃないかとの不安があったからだ。
だが熊さんは俺に言った。
「安心して寝ろ。あの力もまだ弱い。ここにいれば当分は何もおきんだろう。」
熊さんは本当に頼りになる人だから、何も起きない事を信じて俺は目を閉じた。
静寂の中に身を委ね、俺は眠りに落ちていく・・・・。