【第一部】21話
精算所でお金を入れて車に乗り込む。
親父は何も言わずにG神社へと車を走らせた。
俺は親父にコートの男について話した。
俺の夢の中で現れた事。
その夢では熊さん沙織ちゃんがそいつに殺されてしまう事。
そして、俺が連れて行かれる事・・・。
その話を親父が一通り聞き終わると親父は俺に質問してきた。
その男とは1度も接触はしたことないんだよな?
確か鍵が壊されたのはイブの日だ。お前その日はどこに居た?
俺は少し戸惑ったが正直に答えた。
「沙織ちゃんと街に映画を見に行ってた。」
「お前ってやつは・・・まぁいい。そこでそのコートの男は見かけなかったんだな?」
俺はその日の事を必死に思い出した。
だが、あまりに幸せな思い出だった為つい顔がニヤけてしまう。
えっと、確か映画見てからお昼に喫茶店に寄って・・・・!!思い出した!
「そうだ!お昼に喫茶店に寄った時に確か紺のコートを着た30代くらいの男が後から入ってきて、その男に何かよく無いモノが取り憑いてるねって沙織ちゃんと話したんだったわ。」
親父は少々呆れた顔をしている。
「俺の推測だが鍵を壊されたのに気付いたのが陽が暮れ始めた時だったから多分午前中に鍵を壊しその男は呪いをうけお前を探しあてた。という事はお前がG神社に居ることも分かっていたんだろう。まぁ祟り神にお前の世界が見えると言ってもG神社付近には結界が張られていて邪の力は通れなくなってるからお前の居場所は祟り神にもわからんかったんだろ」
「でも、邪の力は通れないならコートの男も近づけないって事?」
「いや、多分関係なく入れるだろうな。祟り神から直接呪いを受けたんだ。それほど強い力は跳ね返せんだろう。といってもその男自身も呪いが解けた所で再起不能だろうがな」
「という事はあの夢は奴が俺に見せた夢ではなく単純に俺自身が予知夢のようなモノを見たって事?」
「まぁそうなるな。」
そんな話をしている間にG神社が見えてきた。
もう陽も落ち始め赤い夕日がまだ見えている。
まさに夢の時と同じだ。
確かこんな時間帯だった筈。
先程からある嫌な胸騒ぎがどうしても収まらない。
「よし着いたぞ。」
親父が言い終わらないうちに俺は車のドアを空けていた。
俺が飛びだそうとすると親父に腕を掴まれグイッと車内に戻される。
「何だよ親父」
「この馬鹿野郎!先走るんじゃねぇ!!俺の後ろに着いてこい」
俺は分かった。と言い親父は腕を離した。
親父は車から降り境内へと向かっていく。
俺は胸騒ぎが収まらない為ずっと胸の辺りを押さえていた。
境内の中に入ると全くと言っていいほど人気を感じない。
親父も嫌な気配を感じ取っているのか足取りが重く感じられる。
ただ、何事もなく本殿には辿り着いた。
親父が本殿内に入り熊さんを呼んだ。
「おい!熊さんいるかーー!」
・・・・。
反応がない。
ここにくるまでに熊さんのインパラがあるのは確認してある。
という事は特に出かけてはいない筈。
俺達は恐る恐る2階への階段を登りだした。




