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祟り神と俺  作者: 神たん
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【第一部】17話


部屋には朝日が差し込んでおり、隣に熊さんの姿はなかった。


俺は心配になり、急いで居間へと向かう。


そこには夢の世界とは別モノのいつもの光景が広がっていた。


「あら。おはよう御座います。今日は遅かったですね。あれ?目が充血してますよ?」


沙織ちゃんは掃除をしているようだった。


手にはハンドモップが握られている。


「おはよう・・ございます。あ・・ごめん。なんか目が痒くって。でも、良かった。熊さんは?」


沙織ちゃんはいつもの笑顔を見せながら「急な用事が入ったようで今は部屋で準備してますわ。」と言った。


すると、熊さんがこっちにやってきて・・


「翔。今日は修行が出来なくなってしまった。急遽お祓いに行く事になっちまってな。翔も手伝ってくれや」


突然の事に俺はビックリした。


お祓いなんてやった事ないし、でも霊的なモノが見えるようになったから少し興味が沸き、行く事を了承した。


俺も急いで準備をし、駐車場へ向かった。


インパラの前で熊さんが待っている。


今日も坊さんの格好で行くみたいだ。


車に乗り込み熊さんに聞いてみた。


「どこへ向かうんです?」


熊さんはエンジンを掛けながら答えた。


「ここから30分程東に走ると小さな町がある。そこに住んでいる女性から連絡があった。息子の様子が最近おかしいみたいでな。念の為見てくれとの事だ。」


「どんな風におかしいんですかね?」


「まぁ話によると最近飯も食わず、塞ぎがちで、突然訳のわからん事を言ったりするらしい。病院にも連れて行ったみたいだが鬱病としか言われなかったと、言っていたな。」


「それって単純にただの鬱病なんじゃ?」


「そこらへんは見てみんとわからんな。ただあちらさんは藁にもすがる思いなんだろ」


まぁこの世の中じゃ霊的なモノを信じる人は一握りだろうし、ダメ元で頼んだんだろうなと俺は思った。


熊さんは軽快に山道を走らせていく。


すると、小さな町が姿を現した。


なんだか本当に田舎と言う言葉が良く似合う町だ。


周りには大きな建物はあまり無く、田んぼや畑が目立つ。


そんな道を走ること5分。


目的地へ辿り着いた。


そこは普通の一軒家で、築10年といった所か。


熊さんは車を停めて、トランクから大きなバックを取り出した。


玄関からは40前後の奥様らしき方が出てきた。


お互い軽くお辞儀をする。


「わざわざ有り難う御座います。どうぞ、中へ。」


俺達は奥様の後ろについて行った。


リビングへ通され高級そうなソファーに腰を掛ける。


奥様は奥から紅茶を入れて持ってきてくれた。


「どうぞ、お構いなく。それで息子さんは2階ですか?」


熊さんが問いかけると奥様は頷いた。


確かにこの家にあがってからというもの、上の方から嫌な感じがする。


「最近はいつも部屋に籠もりっぱなしで食事を持って行ってもたまにしか食べません。」


奥様はそう言うと、目に涙を浮かべながら熊さんに言った。


「どうか息子を助けて下さい。このままでは死んでしまいます。」


「わかりました。では部屋へ案内して下さい。」


俺達は紅茶に手を付けずに2階へと案内してもらった。


階段を登る度に嫌な感じが強くなってきている。


なんと表現したらいいのか・・・まるで負のオーラと言うべきかな。


一歩一歩階段を登りきり、そして一つのドアの前に到着した。


「アキラ!ドア開けるわよ」


奥様の問いかけに反応は無かった。


熊さんが「失礼。」と言いドアノブに手を掛ける。


ゆっくりとドアノブを回し、ドアがギギィと音をたてて開いた。


部屋の中を見ると俺は咄嗟に口に手をあてて吐きそうになった。


部屋の中は非常に荒れていて、足の踏み場も無いくらいに物が散乱している。窓には全てカーテンをし、陽の光は一切なくこの空間だけが夜の世界を作りだしているように思えた。


奥にはベッドがあり、その上に息子さんが座っている。


熊さんはズカズカと部屋の中へ入り全てのカーテンを開けた。


やっとこの部屋に光りが入り息子さんの顔がハッキリと見えてきたが、その顔を見て俺達は言葉を失う。


頬は痩せこけ、目の下にはクマが出来、茶髪の頭はボサボサで目に生気が無く唯々空中を見つめていた。



それに霊の姿もある。



「こりゃまずいな。奥さん、一旦息子さんをリビングに連れて行きますね」


熊さんは息子さんを抱きかかえリビングへと運んだ。


「アキラしっかりして!」


奥さんは息子さんに声を掛け続けているが、反応はない。歳は10代後半といった所か。


「翔。ちょっとこっちへ来てくれ。」


俺は熊さんに呼ばれ一旦外に出た。


「翔。あいつに憑いてる霊が見えたか?」


「はい。見えました。なんか顔が無い赤ちゃんみたいなのが3体と息子さんの肩に細い腕が巻き付いてましたね」


熊さんは頷き、かなり神妙な面持ちで答えた。


「ありゃ水子だ。しかも3体おる。それに加えて女の霊までおったわ。多分母親だろう。」


俺は水子と聞いて納得した。


昔親父に聞いた事があったからだ。


水子は妊娠後に中絶する事により生まれる。


悲しさや、悔しさ、嫉みなどといった負の力が非常に強く一般的な浮遊霊と違い必ず血の繋がったモノに取り憑く。


力が強い為早めに供養をしないと取り返しのつかない事になるから、とりあえずセックスする時は避妊しろと親父が言っていた。


「それにあそこまで霊障によって衰弱しきっているとなるともう・・・無理かもしれんな」


「じゃぁ何もしないで帰るんですか?」


熊さんは珍しく困った顔をしている。


「彼はもう手遅れだが、彼を取り込んだ後、他の親族にまで影響が及ぶだろうからそれだけは防がねばならんな」


「奥様には・・・なんて言うんですか?」


「そうじゃのう。やるだけの事はやるが保証は出来ないと言うしかないか。」


その後俺達は家へと再び戻ったがその足取りはとても重かった。


俺達はリビングへ戻ると、熊さんが泣きながら息子の名前を呼ぶ奥様に問いかけた。

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