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祟り神と俺  作者: 神たん
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11/21

【第一部】11話


「おはよう。」


「おはようございます。」


「なんだ翔、あまり眠らなかったのか?」


「いや~何となく目が覚めてしまいまして・・朝食の準備を手伝わせて貰いました。」


俺はそう言うと、熊さんはテーブルの上に広げられた料理を見て、


「うまそうだ。早速皆で頂くとしようか。」


みんなが料理を囲むように座り、「頂きます」と一声だし箸に手を伸ばす。


今日行う滝行の事を話しながら箸を進める。


話によると滝は神社の裏手にあるそうで、熊さんも若い時は修行で滝行をやったが、

とても過酷だそうだ。


心を無にして寒さ、痛みといった感覚までも忘れ去るような感じでやれと言われたが、

この寒い冬に滝行をやってもはや、感覚なくなる頃には天に召されていそうだな。


朝食も終わり、熊さんに付いてくるように言われた。


外にでると、お日様が出ているとはいえ、とても寒い。


そのままついて行くと、神社の裏口に辿り着い。


そのドアはかなり錆付いていてしばらく誰も使用していない事が伺えた。


熊さんがゆっくりとドアを開く。


そこは木々が生い茂り、まるで森のようになっている。


僅かに人が通って出来たのだろうという細い道がありそこを熊さんは進んでいく。


5分程歩っただろうか、滝のザーー・・といった音が聞こえる。


すると目の前に岩に囲まれて小さい池のようになった場所に滝が現れた。


初めて生で見たが、凄い迫力がある。




「ここで滝行をやるぞ。いいか、限界だと思ったら無理せず上がれ。ここで死なれちゃ困るからな」


「はい。わかりました。どうやればいいですか?」


「とりあえず、滝の中心に行き目を瞑り心を静めてひたすら邪念を振り払え。

お前の親父に3時間やらせてくれと言われているからあくまで目安は3時間だ。

ただ休憩しながらやれよな。」


「わかりました。」


「じゃぁ3時間後にまたくるから頑張れよ」


「有り難う御座います。」


熊さんは後ろを向き来た道を戻っている。


すると突然後ろを振り返り俺に叫んだ。


「そうそう!わすれてたわ。お前の親父が全裸でやれってさ。ほんじゃな!」




「・・・・・。」




はいはい。わかりましたよ。

どうせ水に濡れるんだから服着てようがそんな変わらんだろう。



だがその考えが甘い事にすぐ気付く事なる。


一人きりになり滝を眺めていると、それだけで心が浄化されていく気がした。


自然のエネルギーというものなのだろうか。


呪いの事さえちっぽけに思えてくる。


まぁ兎に角やってみるか。


俺は身につけているモノを全て脱ぎ、完全に全裸になった。


「うぅ~寒い・・」


12月の山は都会でいう1月、2月程の気温であろう。


俺は一歩ずつ滝へと近づく。


そして水辺に足を踏み入れた。


まさに凍るように冷たい。


「まじでこれ10分もいたら死んじまいそうじゃねぇかよ」


それでも俺は前に進んだ。


進むにつれて水が腰の辺りまで浸かった。


ようやく滝の目の前までやってくると、その滝を受け止めているかのように、

滝の真下には平らな岩があった。


俺は滑らないように気をつけながらその岩へ登る。


滝に身体が触れる度に鋭利なモノで刺されるような痛みが走った。


意を決して俺は滝の真下に身を委ねた。


身体全体に痛みが伝わる。


もう頭の中は痛みと寒さしか考えられない。


俺はひたすら目を瞑り、必死に堪えた。





───────。





何分経ったのだろうか、もう時間の感覚すら曖昧になっている。


人間の身体とは不思議なモノだ。


今いる環境に適用しようとしているからか、最初ほど痛みや寒さを感じなくなった。


いや・・・でもただ端に感覚が麻痺してしまってるだけかも・・・それでも最初より楽になった。


ふと違う事を考える余裕が出来てしまい、俺は自分の息子さんの事が気になってしまった。


こんな寒いとこに晒されてどれだけ縮こまってしまっているのか。


もしかして、機能停止に陥ってないだろうか・・。


俺は少しだけ目を開き息子さんに目をやった。




まさに衝撃的。




そこには、これでもかという程小さくなり、もはや完全に沈黙している息子の姿があった。



俺は絶句した。



この滝行でもしかしたら俺は男の人生のうち8割を占める欲望を失うのではないかと・・。


俺は必死に息子に力を送った。


すると、「ピクッ」と微かに動き、「僕はまだ終わってないよ」と言うように反応してくれた。


それを見て一安心し、ふと冷静になって考えてみた。



(これこそ邪念ではないのか!?)と・・・。


俺はまた目を瞑った。


もう、感覚も無く、先程まで五月蠅い程に滝の流れる音が耳に入っていたが、

今ではほぼ無音に近い。


俺は(これが無の境地ってやつか!?)なんて思ったがその感情すらすぐに忘れ、

ひたすら滝に打たれ続けた。


すると、遠くの方から声が聞こえた気がした。


少し目を開いてみると、向こうの方から沙織ちゃんがタオルと着替えを持って、

歩いて来ているのが見えた。




(そろそろいい時間なのかな?)



なんて思いながらゆっくりと岩の上から降りる。



水の中を自分の脱いだ服が置いてある場所まで歩いているとさおりちゃんがその場所まで

やってきた。


ようやく水辺から出ながら沙織ちゃんの顔を見ると、なぜか顔を反らしている。



俺はどうしたんだろう?と思い、ふと自分の身体に目をやった。



その瞬間、まさに時間が止まったように思えた。



そう。俺は今全裸・・。



「ご、ごご、ごめん!!今服着るから!!」


俺は慌てながら沙織ちゃんの持ってきた服を着た。


まだ沙織ちゃんは顔をそらしている。



「あ、あの~・・もしかして見ちゃった・・?」



俺が言うとドキッて感じで慌てながら沙織ちゃんが答えた。



「なな何も見てません!」




「・・・・。」



(完全に見られたな。しかもよりによって死にかけの息子さんを・・)



俺は初めて死にたいと思った。


「あ、あの・・昼食の準備が出来ましたのでお呼びに参りました。」


少しまだ沙織ちゃんの頬が赤らめているのがわかる。


「は、はい。じゃぁ支度します。」


俺は自分の服やもろもろを持ち沙織ちゃんの後をついて行った。


お互い何も喋らず黙々と歩き続ける。


すると沙織ちゃんの方から口を開いた。


「あの・・滝行どうでしたか?」


「いや・・案外思ってたよりは辛くなかったね。逆にスッキリした気だする。」


「そうですか。それは良かった。いろいろと大変みたいですが、お身体に気を付けて頑張って下さいね」


そう言われて俺は素直にお礼を言った。


神社の中へ戻ると熊さんが門の所に立っている。


「いい顔してるじゃねぇか。滝に打たれて何か変わったみたいだな。」


「はい。心の中のモヤモヤしたモノが取れた気がします。」


「よし。それじゃ今日の滝行は終いだ。さぁて飯を食おう。」


俺は「はい。」と言い熊さんの後ろをついて行った。




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