第18話 閑話?
ようやく書けました。
でも、物語的にはまるで進んでない…。
とりあえず今話は息抜きの閑話みたいなものだと言うことでお願いします。
その後も色々と次の定例会での予定を決めた後、和範や八重香と雑談に興じていた真理子だが、気になっていた事を尋ねる。
「主様、少し聞いておきたい事があるのですが、よろしいですか?」
「ん? なんだい?」
「実はその…主様と私が初めて出会った公園での出来事なのですが、あの時どうして犯罪異能者を全裸にしたり、それを私の上に放置したりなんかしたんです?
その上、あんな通報までしたせいで良い見世物だったんですよ、私。」
と、話を進めるうちにだんだんとジト目になっていく真理子。
それを見た和範は少し目を逸らす。が、真理子は逸らした視線の先にすぐに体を移動させてくる。言い逃れや誤魔化しは一切許さないという気迫が漲っている。
仕方なく説明をする和範。
「あ~、あれはだな、その…。
ぶっちゃけて言えば、俺と八重香に迷惑を掛けた相手へのお仕置きとしてやったんだよ。」
「お仕置き…ですか?」
「ああ。あの阿保男には随分と迷惑を掛けられたからな。
まず第一に、真理子を油断させようと降伏の態度にも取れる命乞いをした時も、後一歩という所で邪魔した事。
次に、敵のいる前で此方の情報の開示を求めるような馬鹿をした事。
最後に、せっかく二人掛りだというのに連携というものをまるで考えない上に、攻撃線上に俺が居るにも関わらず攻撃をした事。
ここまで迷惑を掛けてくれたんだ、寧ろあの程度で済ましたのは誉められるべき事だと思うよ。そうは思わないかい?」
と、阿保男の愚行を前面に出す事で何とか真理子の意識を横に逸らそうとする和範。
それに対して真理子は、
「はい、たしかにあの犯罪異能者はろくでも無い事ばかりしかしてませんね。」
と、和範の意見に同意をする。それを聞いて話題の変更に成功か? と、期待した和範だが、真理子はすぐに話を戻してくる。
「それで、犯罪異能者を全裸にした上で私の上に放置したんですね?」
真理子がジト目で話してくるので話題を逸らすのは無理と判断した和範は、別方向から話を切り込む。
「ああ、だから阿保男はかなりきつめのお仕置きだったけど、真理子はかなり緩めだったろ? 」
つまり、お仕置きの内容は真理子の方がかなり緩めだった事を前面に押し出して真理子の寛恕を得ようとする作戦だ。
この作戦は上手くゆき、真理子は、たしかに、と納得するが、それでもなお頭にきた部分は主張する。
「でも、たしか私の事を少年、だなんて通報しましたよね? あれだけは本当にカチンときました。」
その主張に、和範は冷や汗を少したらしながら言葉を濁す。
「いや、あれは…。うん、なんだ…。え~と、そのぅ…。」
だが、真理子は追及を緩めずに問い掛けてくる。
「いったい何があれで、なんだで、その、何ですか?」
「あ~、つまりだ、その真理子は髪が短かったし。」
「髪が短かったし?」
「それと、声も、中性的だったし。」
「声も中性的だったし?」
「言葉使いも丁寧だった分、男か女か判別し難かったんだよ。」
「……それだけですか?」
その追求に、和範は覚悟を決める。これを言えば真理子はへそを曲げるだろう。
だが、言わなくても真理子は薄々と察しているようだ。
ならば、敢えてそれを言った後に、弁護をすれば真理子の怒り具合は小さくなる、…筈だ。
「…その…、胸が無かったから……で…」
と、言い難い事を言った後、弁護に入ろうとした瞬間、真理子が薄い微笑を浮かべて一言。
「胸が無いいいぃぃ?」
怨霊が呪いの言葉でも吐くような声を聞いた瞬間、和範は慌てて弁護に入る。
だが慌てていた為に余計な事を喋ってしまう。
「いやっ! そのっ! 真理子は充分に女性として綺麗だよ!!
顔なんか間違いなく今まで俺が見てきた女性の中では群を抜いて美しいし、手足もスラッと、伸びていてモデル体形だし。
そ、それに、ちゃんと胸の起伏もあるしっ!!」
途中までは良かった。真理子もその部分を聞いている時は少し落ち着きを取り戻した。
だが、最後の部分がいけなかった。
たしかに、真理子の胸は僅かに起伏がある。
だが、それは服の上から分るようなものではない筈だ。
ならばどうやって真理子の胸の起伏などを和範が知っているのか?
気になった真理子はその部分を和範に問いただす。
「ちょっと待って下さい。どうやって胸の起伏がある事を知ったんですか主様?」
それを聞かれた和範は、顔面を蒼白に変える。その態度から不信さを感じ取った真理子は、それを足がかりにして和範との抜群の相性を持って、和範が知っている理由に行き着いてしまう。
そして、震える声でその答えを漏らす。
「私の…、胸の、起伏がある…事を知っているのは…実際に…見た、か、ら?」
その声に既に我を取り戻していた和範は無表情を貫いたが、真理子との間にある抜群の相性は、事実を言い当てられて焦る和範の内心を正確に真理子に悟らせてしまう。
そして、そこから導き出される嫌な想像が、自然と真理子の口から漏れる。
「じゃ、じゃあ、まさかあの時、犯罪異能者と同様に、わ、私も、は、裸に…?」
少し青褪めながら震え声で真理子は事実を確認してくる。
それに対し和範は、もはや誤魔化すのは不可能と観念する。が、それでもなお往生際悪く、もしかしたら誤魔化せるかもと可愛く舌を出しながら、真実を言ってみる。
「え~と、そのー、実は真理子の言う通り、真理子の全裸も堪能させていただきました。ゴメンね?」
だが、どんなに可愛らしく和範が言おうとも、真理子の羞恥心が納得するわけも無く…
「うにゃああぁぁぁぁああっ!!」
と、真理子は全身を、特に顔を真っ赤に染め上げながら猫のような可愛らしい叫び声を上げる。
そして、あまりの羞恥に混乱しながら、それと同時に無意識のうちに和範の首を思いっきり絞め上げる。
ギュウウゥゥゥウッ!!
「ぐげぇぇぇぇええええ!! 真理子、く、首、首がぁぁぁああ!!」
だが、真理子はどうやら完全に混乱しているらしく、和範の抗議をまるで聞いていない。
「いやぁぁぁぁああああっっ!!」
ギュウウゥゥゥウッ!!!
真理子の叫び声が、絹を裂くような悲鳴へと変わった後、和範の首を絞める手に更なる力が加わっていく。
この頃になると、和範はまともに息をする事が出来ずに、顔を赤く変色させるのだった。
そして、五分が経過した。もはや、完全に和範は気絶していた。
白目を剥き、口からは泡を吹いている。
ようやく我に返った真理子がそれに気付いて、慌てて和範の介抱へと移る。
肩を掴んで揺さぶり、大声で自らの主へと呼びかける。
「ああっ! す、すいません主様っ。
大丈夫ですかっ!! しっかりなさって下さいッ! 主様ーー!!」
だが些少混乱しているのか、肩を掴んで揺さぶる際の揺さぶりが大きすぎて、和範の頭が後ろの柱に、ガンッ、ゴンッ! と何度もぶつけられている事に、真理子は気付かない。
そんな二人を見て八重香は、
「クハハハハハハハハハハハハハ。ウフ、ワハハハハハハハ!!」
と蛇体を捻りながら笑い転げている。和範は、首を絞められ気絶している所に更に頭部へ打撃を加えられると言う状況に、ますます気絶の度合いを深めてゆく。
…九重真理子、イレギュラ―であれど、初めて神格者に勝つ事になったのだった。