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あなたとみた、あの星空に。  作者: 半崎いお
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かさねたとき、ふれたとき

今回で書き溜めは尽きました……

ラストまでは固まっているので、粛々とすすめます



立ちすくむジョルジェさまをそおっと後ろから抱きしめたら、慣れた匂いに私の方も抱きしめられた気がした

彼の、握りしめた拳が、ほんの少し緩められたのがわかる

「あかりさん……」

柔らかい、低い声。



私に失望しているだろうに。

変わらないその柔らかさにほっとする。




ほっとしたのも束の間、硬い、低い声でジョルジェさまが口を開いた

「北の村が、3つほど堕ちたそうです。来てしまいました」



地図を広げながら説明してくれたが、この大陸のハジの方が該当の地域だった

“村”といえども三つの村を合わせると結構な広さにみえる

こんなに広い場所にどれほどの人が暮らしていたんだろう。

どれほどのものが、記憶が、消し去られてしまったのだろう。

テレビはおろか、写真すらないこの世界なのでみたこともない場所だ

村の名前さえちゃんと知りもしない地域なので実感はないのだが、

ジョルジェさまの声でそれは真実なのだと思いしらされる。


感情を押し殺すのために微かに震えた声がわたしの心臓をつねっていく

「教えていただいたやり方で、他の疾病は減少していたのですが……」

唇を噛む、その痛々しい横顔が私にも痛い

今回起きた大きな変化で、この終わりへの導火線につけられる火を消せるかもしれない

そう考えていた彼にとって、どれだけの落胆がここにあるのだろう


その、北の村が落ちたのは今から1ヶ月半ほど前。

携帯なんてないこの世界では情報が到達するのが遅いのだ。

最速の連絡方法を得ようとしても王都まで知らせがもたらされるときにはおわってしまっている

……そんなの、疫病とは相性が最悪もいいところだ


救えそうもない村や地域には、救いの手が送られることはない。


失われてしまうことがわかっている地域に、人材を送ることはできないからだ。



周辺の地域からは人がじわじわ逃げ出しているのかもしれない。

「疫病には潜伏期があるので、逃げ出してきた人は数日は隔離したほうがいい」

そうお伝えして、隔離場所は各地域に配備してもらうことには成功していたのだが

数日後に発症した人はそのまま帰ってこなかったと噂になってしまったのだ

それを知った人々は当然のように、隔離所に入ることを拒んだ

ついには領主が運営を諦めたりするようになってしまった場所もいくつもあると聞いていた

それに、こんな速さで村が落ちているのなら、パンクしてしまった隔離所もあるだろう。

移動する人たちと共に疫病が広がっていって

なだれのようにあっという間にいくつもの村や街が墜ちてゆく……

それをみていることしかできない

その炙られるような焦りと後悔と足掻きがあったことを、私は知っている。

その記憶があったから、私という特異点の変更に全力を尽くしてくれたことは知っている

それまでに何十回も、私以上の回数、この世界を繰り返していることも聞き知っている。

毎回、毎回、この病に全てを破壊されて、その度に引き戻されているということも。

その度に、彼自身も命を落としているということも。

その、記憶が、残っているということも。


彼は、自分の他にその記憶を持っている人間を見たことがないとも言っていた。

繰り返しているということを、人に話すこともできたことがない、と。

こんな荒唐無稽な話、誰にもいえないのは私も同じだ。

こんな、馬鹿みたいな

本当だと思えないような、思いたくないような、話は。



ジョルジェさまががわたしと違うのは

彼は毎回17歳くらいのタイミングに引き戻されている、ということだ。

やはり、同じ時間、同じタイミングに引き戻されてはいるのだが、すぐ直前というわけではない。

かれの時間が戻ったときから私の出現までには5年ほどあることになる。

(つまり、おっさんはおっさんでなく、ごつくて老けたお兄さんだったということだ)



私を救わなければならないと気づいてから、このひとは

何十回も私を救おうとして、すくうために、その5年を費やしていたのだ


にもかかわらず

私はやっぱり大した役には立てなかった役立たずであったことがわかってしまった。

でも、そんな私にこれだけ、優しく触れて接してくれる。


何か、できればよかったのに

つねりあげられた心臓は口から飛び出そうになっている

堪えきれずに溢れた涙は分厚い背中に吸い込まれて、消えていくのかと思ったけれど

どうしようもなく汚らしく、濡れたシミの形で彼の背中のど真ん中に残ってしまった



私の涙に気づいたジョルジェさまは、ゆっくりと私の方に向き直って

その優しい指で私の涙を拭ってくれた

「泣いてくれるのですね。あなたに理不尽を強いたこんな世界のために」

そう呟いたジョルジェさまも、泣いていた。



そのまま、私たちは言葉を交わすこともなく、しずかに、ただ、涙を流した

窓の外には、ただただ星が煌めいていた



次回は日曜になります

うまくいけばもう一回くらい・・・

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