わたしの、かたりたかった、こと
長年の懸念は、あっというまに解消された。
わたしにも言えることだったのだ
『悩んでることとか、言いたいことがあったら言えばいいのに』
散々ジョルジェさまを脳内でバカにしてしまったけど、わたしも同じだったのだ。
“元いた世界に帰りたい?”
その一言が言えなかったジョルジェさまと
“あなたの子供が欲しいんです” が言えなかったわたし
なーんもかわらない。
ジョルジェさまはわたしが過剰に痛がったり怖がったりするのをみて、
どうやら閨事が嫌いなのだと思っていた、と
ちがうっちゅーの。
閨事はむしろ好きなんだけど、マジで痛いし強いしで
すごく優しくしてもらってるのはわかるんだけど、それでも体が辛かったんだってば。
おんなじように、人に触れられたり、物理的接触をするのも嫌いだと思われていたらしい
いや、だって、公務の握手で手が粉砕骨折しかけたこともあるじゃん。
そりゃ人間に触れられるの怖くなるって。
(それ以来、お仕事中には物理攻撃が効かなくなる護符みたいなのを使うようになった)
(国宝なので神殿預かり)
あんなぶっとい槍が何度も刺さってもなかなか死なない
すこし焼かれた程度では気絶しても死なないみたいな体の国の人たちでは
わたしを扱うには、強すぎるのだ。
一度なんて、こけそうになったところを抱き寄せられただけで肋骨にヒビが入ったことがある。
わたしだって地球現代人としては普通くらいには健康なんだけど
それくらい、この世界の人たちとは差があったのだ。
そりゃ、気軽に抱いたり抱かれたりはできませんわ
皆がわたしのことを「妖精姫」みたいなこといいはじめますわよね
だって、その辺に飛んでる蜻蛉みたいに弱いんだもん。
って、ずっと諦めてたんだけど
そう言えば、ジョルジェさまって、前世では “筆頭魔道士” だったし
今でも神官魔法騎士みたいなやつなんですよね
自分が魔法使えないから全然わからなかったけど
長年、なんとなくモヤモヤしていた問題は
繊細で美しい腕輪ひとつと、ゆびわふたつと、閨事の前にかける魔法で解決したのだった
なんのことはない
いわゆる「身体強化」のような魔法がこの世界にはあって
それを所謂魔道具にして、さらには重ねづけしたりなんだりして、
わたしの体質を改善するようなことがことができたらしい。
“嫌がってるのに装具をつけさせて準備までさせるには忍びなく……” とかいわれたけど
のぞむところだっていうの!
気の使い方がほんと、腫れ物っていうか、繊細すぎる前提っていうか
まったくもう
その道具が馴染んだあとは、もう、
……ご想像にお任せします。
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その後
結局わたしは、7人の子供を産み、全く健康上の問題も抱えず
人と話すだけのゆるゆるな仕事をして
衣食住にも困らず
ずっとジョルジェさまと一緒に
のんびりと時を過ごして、幸せに過ごしたのだった。
と、いいたいところだけど
あれからもいろいろあった。
王太子の強引な面会やら
他国の王族から拉致されそうになるやら
昔の記憶からなんとか味噌やら醤油やら作ろうとして成功したとか
米を見つけた時には泣いたとか
よくありそうなあれこれも、夫婦喧嘩も、いろいろあった。
でも、そのたびに、ジョルジェさまにたくさん、お話をした
ジョルジェさまも、たくさん、言いたいことも聞きたいことも、言ってくれるようになった
子供たちにも、たくさん、話をした
言いたいことも、ききたいことも、たくさん話した。
なので
わたしも、話したいことを、話すことにした
わたしの書いた「人の死に方」という本は、のちの世の医学に非常に貢献したそうだ
医学だけではなく、拷問や兵器にも使われただろうけれども、後悔はしていない
何十回以上も、さまざまな殺され方で死んだことを、無駄にしたくなかったのだ
この死に方はこういう苦痛があって、この辺で意識がなくなって……って事細かに書き残した
だって、わたしくらいでしょ? 何度も死んだあとでその思い出を書き記せるなんて
ジョルジェさまは苦笑いしていたけれど、ね




