第47話 二国間会議
会場内のどよめきは最早カオス状態だった。
魔鉱石は魔道具を動かすのに必ず必要なレアメタルだが、稀少性が高い。
大陸ではほぼオストール帝国でしか採掘出来ないのだ。
魔鉱石のお陰でオストールが大陸一の覇権を誇り、それが隣国に攻め入られたりする原因になったりしているのだ。
”魔鉱石の優先売買契約だと!”
”シュタインマルクの王妃は別の娘からでも選べるし、ここはフィリーナ様にはぜひオストールへ・・・”
”フィリーナ様にしてもうちの王妃より、オストールの皇帝妃になられる方がいいのでは・・・”
会場内の貴族たちは各々好き放題話をしていたが、そのほとんどはリーナがオストールに行けば両国にとってウィンウィンであり、是非そうすべきだというものだった。
ざわめきが治まらない中クレス侯爵が立ち上がった。
「それは素晴らしい話です!魔鉱石の優先売買契約がいただければ、我が国の発展に繋がり、この上ない国益となります。ラチェット伯爵令嬢。国のことを思われるのであれば、是非この話をお受け下さい。この国の王妃にならずとも、オストールに行かれても、このシュタインマルクに貢献することはいくらでも出来ます。」
そしてうちの娘を王妃に!
クレス侯爵の心の内は、他の者もわかっていたが、彼が言っていることは尤もだった。
彼の発言で会場全体が賛成意見にまとまりそうな雰囲気になり、ローランドはウィルにたたみかけた。
「婚約者を奪う形になり、陛下には大変申し訳なく思っています。この埋め合わせは他の形でも必ずさせて頂きますので・・・」
ふざけるな!
ウィルがそう叫びかけた時。
カタンッ
それまで無言だったリーナが突然立ち上がった。
全員の目がリーナに向く中、彼女はローランドには見向きもせずカツカツと後ろの席に向かって歩いていった。
パシンッ
頬を叩く子気味良い音と共に、リーナが叫んだ。
「我が儘もいい加減にして下さい!人生、自分の思う通りにならないこともあるってお母さまに教わらなかったんですか!」
頬をぶたれたケイオスは呆けた表情でリーナを見つめた。
「フィリーナ嬢!おやめください!」
顔を真っ青にしてローランドがこちらに駆けてくる。
一方ケイオスは一瞬驚いた表情を浮かべた後、クツクツと楽しそうに笑い始めた。
「ハハハハ。さすがマリーンの弟子だ。師匠と言うことが一緒だな。」
リーナの無礼を面白がる発言に彼女は眉をひそめた。
「私は、お前やお前の子供達の行く末を見ながら人生を過ごしたいというマリーンの夢を友人として代わりに叶えたいと思っている。お前がオストールに来ないというのなら、どうすればいいんだ?」
ローランド殿下におかしなことを言わせたと思ったら、そんな理由からなのか。
リーナは苛立ちを隠せず、つっけんどんに答えた。
「あなたがシュタインマルクにいらっしゃればいいじゃないですか。」
「私は父から受け継いだ魂がオストールの地に縛られているからな。短期ならともかく、こちらにずっと住むわけにはいかん。」
「では、先生に会いに来られていたように、時々こちらを訪問されればいいじゃないんですか?」
リーナはイライラして答えた。
「私がここに来てもいいのか?」
ケイオスが訝し気に聞いてきた。




