第13話 リーナの死
穏やかで心地よいリーナとの生活は刻一刻と終りに近づいているのがわかった。
元々よぼよぼだった足腰は徐々に立たなくなり、ベッドに横になる時間が増えた。
身体もだるそうにしていることが多くなった。
2人で過ごし始めて半年が過ぎた頃、ベッドで横になっていたリーナが話しかけてきた。
「ウィル。嫌な話だと思うけど、聞いて欲しいことがあるの。」
リーナの言葉にウィルはギクリとした表情を浮かべ、不安そうにリーナを見た。
「私、もう長くないと思うの。私が死んだら、シスター・エリーの孤児院へ行けるように話はつけてあるわ。あと、私が父から受け継いだ財産がいくらか残っているから、それをウィルが継げるように頼んだの。将来やりたいことが見つかったら、そのお金で学校に行ったり必要な物を買ったりしてね。」
他人事のように穏やかに話すリーナにウィルは怒りをぶつけた。
「なに弱気になってるんだよ!」
「ウィル、真面目に聞いて。私が生きれなかった分、あなたには立派な大人になって幸せになって欲しいの。ウィルがもう少し大きくなるまで一緒にいてあげたかったけど、死んでも空からずっとあなたのことを見守っているわ。」
その言葉にウィルはハッとした。
リーナは生きたくても生きれないのだ。
まだ16歳なのに・・・
「リーナ・・・」
ウィルは泣きながらリーナにしがみついた。
リーナはそんなウィルの頭をよしよしと優しく撫でてくれた。
「ふふ。ウィルは甘えん坊ね。シスターにはきちんと話をしてあるから大丈夫よ。私が死んだらこの森の結界も無くなるから、森を出てシスターの所へ行ってね。」
その後、リーナのお墓のこと、ウィルの将来の事、ウィルが成人した時に余った遺産は孤児院に寄付して欲しいことなど様々なことを話しあった。
そして、その次の日の朝、リーナはウィルに見守られながら静かにその命を閉じた。
享年16歳
しばらく眠っているようなリーナの顔を眺めた後、ウィルはマリーンの墓の横に大きな穴を掘った。
リーナの身体を背負って穴まで運んだが、驚くほど軽かった。
シーツで彼女を丁寧にくるみ穴に納めた。
親指の指輪をどうするか一瞬悩んだが、リーナの指にはまったまま一緒に墓に埋めた。
『魔女の弟子 リーナ・ケーレス ここに眠る』
リーナが生前自分で用意した墓標を立て、リーナの墓の前でそれを眺めていた。
日が暮れ辺りが薄暗くなってきても墓の前から動く気がせず、ぼうっとしていた。
星が光り出すと、あの星のどれかがリーナなのかな、そんなことを思い空を見つめた。
しかし、辺りがすっかり暗くなると一気に不安が押し寄せてきた。
これからどうしよう・・・
リーナの言う通りシスター・エリーの孤児院に行くしかないのか。
半年前まで、王城で何不自由ない暮らしをしていたことを思うとプライドはズタズタだし、自分一人で生きていくことへの不安もある。
『空からずっとあなたのことを見守っているわ。』
すがるように墓を見ると、リーナの生前の言葉を思い出した。
今晩は思い出の詰まったこの家で眠り、明日エリーのところへ行こう。
そう決断し立ち上がったその時。
「殿下ですか?」
敷地の外から数人の男がやってくるのが見えた。




