表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/49

見舞いと決意

 ルカが入院してから、関わりの深い人間が見舞いに訪れた。

 それから数日後、暇を持て余している彼の元に意外な人物が訪れる。


「やあ、調子はどうだい?」


 ナーシュだった。

 見舞いというには随分と日が経っている。

 ベッドの横にある椅子に座り、話し始める。


「遅くなってすまないが、今日はお見舞いと謝罪と御礼と報告に来たんだ。

 これ、果物」


 用件が多い。

 お見舞いは良いとして、残りの三件は何なのか。


「まずは謝罪。

 今回の件は、村の周りに居付いた盗賊の駆除を怠っていたのが一つの原因と思う。

 ここ最近忙しかったとはいえ、君の怪我は我々の怠慢が招いた結果だ。

 申し訳ない」


 そう言って、深く頭を下げた。


「いやいや、そんなことないですって!

 僕が前もって忠告されたのに、軽率な行動したのが悪いんですよ」

「うん、そう言ってもらえると助かるよ」


 まるでそう言われるとわかっていたように、コロリと態度を変える。

 その方が気は楽だが、やはりこの人物との距離感を掴むのは難しいと感じた。


「次は御礼。

 あの二人の無礼者を撃退してくれて感謝する。

 戦士と魔術師の二人組だったようだ。

 遭遇したのが他の人間、ボロルマだったとしても危なかっただろう。

 よく生き残ってくれたよ」


 撃退?

 そんな記憶はない。

 一方的にやられて気絶しただけだ。

 だが……そうなった心当たりはあった。

 そんなルカの反応を見て、ナーシュも首を傾げる。


「あれ?

 捕まえた男がそう言ったと聞いたけど、違ったかな?

 誰かから聞かなかったかい?」

「覚えてないですし、聞いてないですね……」


 言っちゃいけないことだったかな、まあいいか、などと一人で自問自答するナーシュ。


「私から聞いたことは黙っていてくれると嬉しいかな。

 で、最後の報告。

 奴らの拠点について、男に口を割らせてね。

 昨日潰してきた。

 そこにいた頭目っぽい奴にも聞いたけど、他には仲間はいないらしいから安心していいよ。

 その他の盗賊についても、その内大掃除が始まるはずさ」


 そこまで言うと、用件は終えたと言うように立ち上がり、身を翻す。

 呆気に取られながらも、その背に礼の言葉を掛ける。

 ナーシュが診療所を出て行って少しの静寂の後、ロザリーが近寄って来た。


「あの人、怪我人が出ると毎回お見舞いに来るんですよ。

 今回はさっき言ってた件で遅かったみたいですけど。

 教会にもよく顔を出して、子供たちの相手をしてくれるんです。

 フフッ、意外とこまめですよね」


 ロザリーの言葉と笑顔に、和やかな気分になる。

 近寄りがたい雰囲気を感じていたナーシュだが、そういった面があるとは。


「……時間があれば、ちょっと、つまんない話を聞いて欲しいんだけど」

「はい、大丈夫ですよ」


 言うべきか迷っていた話だが──

 先ほどの話もあり、誰かに聞いて欲しい気分だった。

 それがロザリーなら、と、そのつまんない話を語り始める。


「僕、記憶喪失でさ。

 十二歳くらいからの記憶しかないんだ」


 静かに頷くロザリー。

 普段であれば大げさな相槌が返ってくるところだが、空気を読んでいるのか。


「母さんと二人で、マーレホタっていう村で暮らしてて。

 理由はわからないけど周囲から距離を置かれてて。

 母さんからは、魔術を使うことの危険性を頻りに、過剰に言い聞かされていた。

 今思うと、記憶喪失前に魔術を使ってて、何か問題が起こってたんだろうね」


 だから、ルカもこれまで魔術を使うことを極端に控えていた。

 だが、旅に出てアランダ村に居付いてから、母の言いつけが過剰なものであると理解した。


「母さんは病弱で、二年前に他界した。

 その村にいい思い出はなかったけど、他に行くところもないし、独学で狩りをして生活してた。

 それで、さっきナーシュさんが教えてくれたのと似たような状況が起きてさ。

 起きたら村に運ばれてた。

 村の人は魔術だなんだと言ってて、もう怖くなっちゃって。

 一応助けてもらったのに、なけなしの財産を持って逃げ出したよ。

 その時にはもう、何となくだけど魔術を使えるようになってた」


 天を仰ぎ、一息つくと、診療所内に漂う薬品の独特な匂いが鼻を突いた。

 言いたいことを軽く整理し、再び口を開く。


「ロザリーも過去に色々あったみたいだけど。

 今は向き合って、その力を少しずつ村のために役立ててるよね。

 僕も逃げずに向き合って、魔術を上手く使えてたりすれば。

 今回のことももうちょっと上手く対処できたのかなって。

 それで、これから村のために何かできるのかなって思ってさ」


 少しでも状況が違っていたら、村から死人が出ていたかもしれない。

 この村の人々には本当に良くしてもらっているし、ルカも村に愛着が湧いている。

 自分に出来ることで、村に恩を返していきたい。


「うーん、ごめん。

 何が言いたいかよくわからなくなってきた……」

「いえ、何となくわかりますよ!

 わたしもまだまだですけど、皆さんの役に立てるよう一緒に頑張りましょう!」


 先ほどまでの聞きに回っていた彼女はどこへやら、診療所に大声が響き渡った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ