グループ一・高校生
グループ一・高校生
“ねえ、おにいちゃん ぼくとあそぼ”
この紙、僕に話しかけているのか?
「っ!」
気味が悪い。
僕は手に持っていた紙を念入りに引き裂いて、床に叩きつけた。散り散りになった紙片がひらひらと空を舞い、まるで僕を嘲笑っているようだ。
「早く、先に進もう」
僕は床に散らばった紙片を踏みつけ、足を進めた。
止まる事無く走り続けるこの電車。光も出口も無いトンネルを、引かれているのかも分からない線路の上を走り続けている。いや、走っているのかさえ怪しい。車体がかすかに揺れ、がたんがたんと言う走行音のような音が響いている。ただ、それだけ。車窓には何も映っていない。走っているのではなく、動いているだけなのかもしれない。
段々と、この場所にも慣れてきたような気がする。僕自身がこの電車に染まりつつあるのだろう。元居た外の世界を思い出そうとすると、決まって夜の風景しか浮かんでこない。暗く、肌寒い、無人のプラットホーム。薄く霧がかかったそのホームに、僕は一人突っ立っている。僕はたぶん、電車が来るのを待っているんだ。行き先不明の電車を。
「おい、裕介! 前!」
僕の意識の中に秋山らしき声が飛び込んできた。
「うん?」
僕はその声にはっとし、前を見た。
僕から一メートルぐらい離れた所に貫通扉がある。視線を下の方に落とすと、男性らしき人が扉に背中を預けて座っていた。出血しているのか、男性の衣服が赤く染まっている。辺りにはガラスの破片が散乱しているようで、電球の光を受けてきらきらと反射していた。息はあるのだろうか。
僕はその男性に近づき、生きているかを確認する。
「……駄目だ。死んでる」
秋山達にも聞こえるような声で、僕は言った。
「だろうな」
秋山も死体の隣に近づき、腰をかがめる。戸惑うような素振りは一切見せず、素手で死体を調べ始めた。
「こんなイカれた場所で、生きている人間と会った試しがあるかよ」
「でも」
死体と少し距離を置いた所から、静川さんが口を挟んできた。
「死体の肌に、ちょっとだけ温かい色が見られるよね。もしかしたら、死んで間もないのかも」
「だとしても、俺達には関係ねえよ」
実に淡々とした口調で、秋山は吐き捨てるように言った。山下が死んだショックのせいか、態度が少しばかり冷たくなったような気がする。友達と言う身近な死を背負うのに手一杯で、他人の生き死にまで気を配る余裕はないのだろう。
僕は秋山ほどの度胸は無いので、死体を目で見て調べる。
男性の体格からして、少なくとも二十歳前後だろう。体のあちこちに大小様々のガラスが突き刺さっていて、見るも無残な姿だ。体に刺さったガラスを伝って、焦げ茶色が混ざったような血が滴っている。それら無数のガラスは血を吸ったように赤い。
よくよく見ると、頭や胸元と言った所にはガラスが刺さっていない。これには殺害犯の意図があるのだろうか。もしそうだとすると、この男性はじわじわとなぶられた末に、出血死に至ったという事になる。想像を絶する痛みと苦しみを味わった事だろう。だけど、何故だろう。男性の死に顔は穏やかに見える。ほんのりと笑みを浮かべているような、それこそ天使が手を差し伸べてきそうなほど穏やかな。
「おい」
秋山が僕に何かを差し出してきた。
「こいつのポケットから見つけた手帳だ。なんか、ポケットの中に隠しポケットみたいな部分があって、そこから見つけた。俺はもう少しこの死体を調べるから、中身を確認してみてくれ」
僕は差し出された手帳を受け取る。
手帳の外装は革製でとても手触りが良く、手の平からはみ出しそうな大きさだ。電車の外に広がる闇よりも深い黒色で染められている。どことなく哀愁が漂っているような感じがする手帳だ。
表紙を開くと、達筆な字が横書きで書きつづられていた。
“ここに閉じ込められた生存者に残す。
これを読んでくれている人。俺は神崎直斗と言う。大学生だ。君の目の前にある死体、恐らくそれが俺だ。この手帳に、ここから脱出するために少しでも役立てば思い、俺なりの解釈を加えた一つの可能性を記述する。ここに書かれている事が間違っていたら、笑い飛ばしてくれても構わない。
では、本題に入るとしよう。
俺達をここに閉じ込めた存在。もう薄々気づいているとは思うが、これは人間の仕業では無い。詳細は時間の都合上省くが、昔起きた事故で望まぬ死を遂げた子供の霊。それが俺達をここに閉じ込めた存在、この現象の元凶だ。信じられないと思うだろうが、それが事実だ。
相手を明確にした上で、次に脱出方法を述べる。一番初めにやらなければならない事が、霊との接触だ。接触に成功したら、自分達を元の世界へ還してくれるように説得する必要がある。運が良ければ、霊も話を聞きいれてくれるだろう。霊との接触、そして説得。これが唯一の脱出方法だと俺は考えている。
霊と会話を交わす際、気をつけなければいけない事がある。それは、この電車やその霊に関する情報を吐露してはいけないと言う事だ。絶対に、相手の霊より有利な立場に回ってはならない。相手は肉体的成長は止まっているものの、精神的成長は留まる事を知らない。子供の霊は何十年という年を経て、知識を蓄え知性を高めている。並みの大人より遥かに頭が切れる事はまず間違いないだろう。自分達にとって危険な存在だと認識されてしまえば、即刻排除されてしまうだろう。くれぐれも注意してくれ。
大雑把になったが、これくらい書いておけば問題ないだろう。ここから無事に、生還出来る事を祈る。
最後に、これを読んでくれている人にお願いがある。この先、俺と同じ大学生の野中汐梨と言う女性に会ったら。生きて彼女に出会う事が出来たら。生涯でたった一人、俺に本物の愛情を注いでくれた彼女を、汐梨を助けてやってくれ”
そこで文章は終わり、残りのページをぱらぱらとめくってみたが何も書かれていなかった。
後ろを振り向くと、僕の両肩越しに秋山と静川さんが顔を覗かせていた。どうやら、この二人も手帳の内容を読んでいたようだ。
つまり、幽霊の存在を認め、そいつと会って話をつけろと言う事か。もはや、これが幽霊の仕業では無いという方が信じられない。僕は最初からそうじゃないかと疑っていたし、山下も死ぬ直前にそんな事を言っていた。たぶん、みんなもそう思っているだろう。ただ、幽霊の存在を肯定してしまうのが怖くて、気付かない振りをしているだけだ。
今となっては、そんな些細な事は問題では無い。何より、電車からの脱出方法が分かったのは嬉しい。この人が残してくれた情報は、今の僕達にとってはかなり有益な物だ。何の当ても無くうろうろするよりは、幾分もましになる。
幽霊を説得か。たかが高校生の僕達に、そんな大それた事が出来るだろうか? もし、失敗して、みんなが殺されてしまったら?
……駄目だ。どうしても、悪い方向に考えてしまう。
僕が不安に押し潰されそうなっていると、静川さんが唐突に口を開く。
「神崎さんにとって、汐梨さんという女性は大切な人だったんだね」
大切な人。僕にとって大切な人は、秋山と静川さんだ。ここまで来るのに、中村と山下を失ってしまった。……そうだ。もし、霊の説得に失敗したら、僕がみんなを守るんだ。もう、大切な友達を失いたくない。
この手帳はどうしよう。何かの役に立つかもしれないから、持っていくべきだろうか。だけど、これは僕達のような生存者に残されたメッセージだから、持っていくのはまずいだろう。
「なあ、秋山。この手帳、元あった場所に戻してくれないか?」
僕は秋山に手帳を手渡す。
「別にいいけど」
面倒くさそうに秋山はそれを受け取って、死体のポケットに手を突っ込む。中が複雑なのか、少しばかり手こずっていた。そう言えば、隠しポケットみたいな所に入ってたんだっけ。
神崎さんは、この手帳が霊に見つからないようにちゃんと考えていたのだろう。逆にいえば、霊に見つかれば隠蔽されると思うほど、自分が導き出した一つの可能性に自信があったという事だ。
昔の事故で死んだ子供の霊って、一体どんな幽霊なんだろう。ここまでに見てきた多くの死体は、どれも普段では有り得ない死に方をしていた。目玉をえぐり取られたように視神経らしき紐が剥き出しになっていたり、四肢のどれかが欠けていて壊れた人形みたいになっていたり。五体満足の死体があれば、まだ増しな方だ。どの死体も嫌にリアルで――本物なんだから当たり前だが――映画などで見る作り物の死体が胡散臭く思えてくる。
「裕介、死体をどかすの手伝ってくれ。ドアの前に座られてんのは邪魔だからな」
「うん?」
「先に進めねえじゃん?」
秋山が手の平を上に向けて、言い訳っぽく語尾のトーンを上げる。
秋山の態度が気に入らなかったのか、静川さんがぴくりと顔を曇らせた。我慢するように口元を横一文字に締めていたものの、ついには口を出してしまった。
「秋山君。亡くなった人の遺体は、もっと大切に扱わないと」
静川さんは諭すように言った。彼女の家は教育指導が厳しいらしく、特に道徳や礼儀といった類は徹底的に教え込まれたそうだ。結果、品格のある優しい人格が形成されたのだろう。彼女の両親に数回ほど会った事があるけど、どこかの豪邸にでも住んでいそうな感じの仲睦まじい夫婦だった。
「別にいいだろ? そんな細かいこと」
苦虫を噛み潰す寸前のような表情をし、秋山は静川さんを適当にあしらった。そのまま流れるように僕の方へ向き直る。
「さっ、早くどかしちまおうぜ」
「そ、そうだな」
僕は静川さんの様子を窺いながら、急かしてくる秋山の指示にそろそろと従う。彼女はまだ何か言いたげそうにしていたが、心悲しげに目を伏せて、それ以上口を出そうとはしなかった。余計な口論を避けるためだろう。こんな時こそ、みんなが心を一つにしてまとまらないといけないのに、口喧嘩などでばらばらになったらどうしよう――と、彼女は危惧したのだろう。教養のいい静川さんにとって、道徳性を無視したような言動は簡単に放っておけるはずがない。これは、一種の妥協なんだろう。友達間ではよくある事だ。まあ、彼女の場合、それとは少し違うのだろうが。
神崎さんの死体を隅っこに移動させ終わると、秋山はさっさと隣の車両へ入ってしまった。早足気味に歩くその背中は、確固たる決意を醸し出しているようだ。
会話が目切り減ってしまった。
中村と山本の死。長時間による、閉塞的な空間への監禁。そこら中に転がる、痛々しい死体の数々。要因はいくらでも考えられる。
軽々しく陽気に振る舞えない雰囲気が僕達を包み込んでいた。たった数十分しか過ぎていな筈なのに、もう何時間も言葉を口にしていない気がする。何かを喋りたい。だけど、見えない力が、まるで僕の喉元を押さえこんでいるかのように、声を出す事が出来ないのだ。
鉄の金槌を打ち付けるような音が、間隔の短い二拍子で鳴り響く。電車の走行音にしてはあまりにも生々しい。生きた屍の呻き声とでも言った方が相応しいだろう。
僕と静川さんは肩を並べて歩いているのに、秋山は先を急ぐように前を歩いている。ここから脱出する事が出来ずにイライラしているのか。あるいは、山本の仇を早くとろうと焦っているのか。とにかく、今の秋山は気が立っている様に見える。
静川さんはと言うと、目線を斜め下に落とし、床の木目を追うようにそろそろと歩いている。お面のような横顔で、心ここにあらずと言った感じだ。死への恐怖、どうすればいいか分からない困惑が入り混じり、歪な形をした不安が纏わりついているのだろう。
僕達はこのまま死んでしまうのだろうか。死んだ後も、永遠にこの電車を彷徨い続けなければいけないのだろうか。死にたくない。僕は必ず生き抜いてやる。だけど、それをこの電車が簡単に許してくれるとは思えない。
『……ザザッ……』
テレビのノイズに似た音が、僕達を包み込む静寂を切り裂いた。
『……に到着……た。この電車は……い……停止といた……します。……後に、発車いたします』
聞き取りにくいアナウンスが流れ終わったかと思うと、蒸気を立てるような音と共に両側の扉が開かれる。相変わらず扉の向こう側には、全てを飲み込まんとする真っ暗な世界がどこまでも広がっていた。死後の世界があるとしたら、きっとこんな感じなんだろうな。
「気にせず進むぞ」
秋山は一言そう言い残し、先に進み続ける。
「いいのか?」
僕は確認のために聞いた。電車内の風景が一向に変わる気配は無いし。それならいっその事、思い切って外に出てみたらどうだろうか。運が良ければ幽霊に接触できるかもしれない。
秋山は足を止め、大きく肩を落としてからこちらを振り向く。
「外は危険だろ? これはあいつの罠に決まってるって」
あいつ――僕達をここに閉じ込めた犯人、引いては幽霊の事だろう。
確かに、その可能性は非常に高い。中村や山本も幽霊に直接殺された訳では無く、その場所に仕掛けられた罠のような物に殺された。かく言う僕も、大量の血が溢れだす車両で死にかけたのだ。電車の外が安全である保証はどこにも無い。心の底から安心出来る場所なんて存在する訳が無いんだ。
「ねえ?」
静川さんが遠慮がちに声を出した。
僕と秋山が黙っていると、静川さんはそれ以上は何も言おうとしない。発言してもいいか戸惑っているのだろうか。そこまで周りに気を遣わなくても……。
黙っていても仕方ないので、彼女に話の続きを促す。
「どうしたんだ?」
「……あのね。これが罠なら、霊もその近くにいると思うの。脱出するために霊と接触しないといけないなら、むしろ、これはチャンスじゃない?」
そうか。そこに罠があると言うなら、何らかの理由でその罠を監視する人物もそこにいると言うだ。獲物がかかるのを、その人物は今か今かと待ち構えている筈。人殺しを楽しんでいる奴なら尚更の事だ。
秋山は驚いたように目を大きく開き、納得するように深く頷いている。親友を殺した霊に会いたがっていたものの、その点に関しては見落としていたらしい。
「そうだな……」
長くは無い沈黙の後、秋山は「よし!」と小さく声を漏らし、
「外に出て見るか」
考え直したのか、爪先の向きをさっと変えて、開かれて間もない扉の前に向かう。自分の都合に合えば、考える振りをしてころっと意見を変える。クラスでの話し合いの時はいつもそうだった。そんなこいつとは中学の頃から一緒だったけど、根は友達思いのいい奴だ。秋山らしいな。
やれやれと若干呆れつつも、束の間に訪れた日常にふっと肩の力が抜ける。少しだけ気持ちに余裕が出来たような気分だ。
秋山は真っ暗な世界を前に一度立ち止まり、心を鎮めるように深呼吸をした。僕と静川さんの交互に目線で合図を送ると、扉の中へ入って行った。
今度はどんな場所に出るのだろうか。自分から飛び込む未知なる場所へ身構えつつ、意を決して秋山の後に続く。闇の中へ入る直前、ふと、電車の走行音が聞えなくなっていた事に気が付いた。
僕が降り立った場所、そこは線路だった。
握り拳ぐらいの大きさをした石ころが転がる地面に、別れ道など無く真っ直ぐと引かれた一本の線路。線路の上から外に出ようにも、辺りには当然のように暗闇の壁が立ち塞がっている。太陽の光も無い筈なのに、ここだけは不思議と明るかった。
ここは……電車の中か?
後ろを見てみると、目と鼻の先に茶色い空間が広がっていた。
「うわっ!」
前と後ろでの風景の違いに驚き、僕は二、三歩ほど後ずさりをした。
すると、茶色をした空間は僕の視界に収まり、食パンのような形へと姿を変える。中央ら辺に数枚のガラスが取り付けられているものの、暗いせいか中の様子を窺う事が出来ない。どうやら、これは電車のようだ。止まっている――と言うより、死んでいるように見える。手で触れてみると、ささくれのあるざらざらとした材質の木で、ひどく腐敗しているのが分かる。何かを焼いたような、そんなきな臭さが漂ってきた。この質感と雰囲気からして、さっきまで僕達が乗っていた古臭い電車なのだろう。
あの恐ろしい電車の中から脱出したのか? いや、たぶん、ここはまだ電車の中だ。体を締め付けるような重苦しい空気。言語化できない神秘のような、得体のしれない畏れさえ掻きたてられるこの感じ。電車の中と全く変わらない。
「ここからは一本道だな。さ、行こうぜ」
秋山が歩き始めたので、僕と静川さんもそれに続いていく。
秋山は本当に頼りになる。僕は自己主張が乏しいから、人をまとめられるような出来た人間ではない。もしこの場に秋山がいなかったら、みんながこうしてまとまる事は無かっただろう。自分の意見を出し合ったり、何とかしようと行動を起こしたり。こいつがいたからこそ、僕達は勇気を出して前へ進む事が出来た。
このままじゃいけない。僕は秋山に頼り過ぎだ。もっと、人に頼られる存在に成長しないと。ここに閉じ込められて、自分がいかに無力なのかを嫌と言うほど痛感した。為す術も無いまま、中村や山下が目の前で死んでいく。友達を誰一人救えない僕。僕はなんて無力なんだ!
「裕介」
「……! なんだ、秋山」
「お前、少し気張りすぎじゃないか?」
秋山にそう言われて、僕は必要以上に力んでいた事に気が付いた。食いしばった歯を緩め、ゆっくりと肩の力を抜く。
「気張ってないよ」
「嘘つけ。お前とは中学からの付き合いなんだ。なんか、一人で悩みこんでんだろ? 話してみろよ」
秋山は難い表情を崩して、僕の肩を軽く叩いてきた。
こいつには敵わないな。頼るまいと思っていても、思わず頼りたくなる。自分勝手に生きている様に見えて、ちゃんと周りの事を考えて生きているんだ。学校でも、不良みたいな秋山の周りに自然と人が集まってくるのも、なんとなく納得がいく。
「僕さ、何も役に立ってないよな」
話すかどうかを迷う前に、口が先に動いていた。
「誰かに頼ってばっかりで何にも出来ない。友達が死んでいくのを、ただ見ているしかない。そんな無力な自分が嫌になってきたんだ」
「無力って、あれは仕方ねえよ。山下も中村もほぼ即死だったし、裕介が気に病む事じゃなねえだろ?」
「でも、何も出来なかったのは事実だ。僕がここにいる意味なんてないよ」
「そんな事ねえ!」
秋山は急に声を荒げ、僕を鋭く睨みつけてきた。
「山下が死んで、俺が感情的になって冷静な判断が出来なくなっていた時。お前が俺を叱ってくれたじゃねえか。あの時、俺がぐずったままだったら、山下に続いて俺や静川まで死んでいたかもしれない。お前は自分が役に立たないとか言ってるけど、少なくとも俺は裕介に助けられてるぜ」
「私だって」
秋山の後に続くように静川さんも話し始める。
「美咲ちゃんが死んじゃって、私が泣いていた時があったでしょ? 正直言って、どうしたらいいか分からなくなって。そうしたら宮本君が、美咲ちゃんの分まで生きる努力をしよう、って言ってくれた。私が今、何をすべきなのか。それを宮本君は教えてくれたの。だから、宮本君は無力なんかじゃないよ。だって、人に分け与えるだけの力を持ってるもの」
静川さんはにっこりと微笑む。秋山も鋭い目つきを緩め、照れくさそうに微笑みかけている。
二人とも、ありがとう――と、僕はお礼を返そうとした。舌の先まで出かかった矢先、黒板をひっかくような鋭い音が耳を突き抜ける。
耳を両手で塞ぐ頃には、その音はすっかり止んでいた。まるで嵐のように通り過ぎ、僕の耳に幻聴を残していった。針が突き刺さるような痛みと、耳鳴りが鼓膜を襲う。何の音だったんだ?
がたっ………………がたっ、がたっ。
今度は金属同士が打ちつけ合うような音が、線路を伝って体に響いてくる。非常にのっそりとしたテンポで、耳鳴りよりかすかに大きいぐらいの音量だ。僕達からは随分と距離が離れているのが分かる。
「さっきから、なんなんだ? ここには線路以外に何もねえだろ」
秋山の言う通り、線路以外にある物と言ったら無限に広がる闇だけ。ただ、何かが引っかかる。それに、この音を僕は知っているような気がする。すごく身近で、ほぼ日常的に聞き慣れた音。確か、これと一緒に流れゆく景色をどこかの窓から眺めていたような。
そうだ! これは電車の足音だ。じわじわとスピードを上げながら、背後から迫ってきてるんだ。そして、この線路は一本道。
列車の汽笛が、僕の導き出した答えを裏付けるように聞えてきた。
「秋山、静川さん! 前に走れ! 全速力でだ!」
汽笛と僕の言葉で全てを理解したのか、二人は電車が迫りくる方向とは逆の方へ走りだした。それを確認してから、僕もその場から駆け出す。
がたっ…………がたっ、がたっ。
走行音が段々と早く、大きく膨らんでいく。まだ大丈夫だ。まだ、電車との距離は十分にある。
だけど、逃げ道は? 右を向けど左を向けど、深い闇を刻まれた壁が途切れることなく続いている。線路の脇によける事も出来ない。電車の速度がある程度まで出てしまったら、後は時間の問題だろう。
「だから、俺は行かない方がいいって言ったんだ!」
秋山は一息で愚痴を吐き出した。
最終的に行こうって言ったのは秋山じゃないか。
がたっ……がたっ、がたっ。
背筋に悪寒が走るのを感じた。走りながら後ろを振り返ると、目の高さの所で小さく光が瞬いた。空に浮かぶ星のように手は届かないが、いずれは僕達に降り注ぐだろう。いずれ、か。電車の速度はすでに100キロを超えているはず。だとしたら数分もかからず僕達に追いつく。
「おい! 扉が見えるぜ!」
秋山が息を切らしながら言う。
見間違いじゃないかと思いつつ、目を凝らして線路の先を見つめる。焦げ茶色した長方形が辺りの闇に溶け込んでいた。十数メートル先にそれはある。これだけでは、それが扉だと断言はできない。それでも、これに賭けるしかない。
がたんっ。がたんっ、がたん!
背後を確認した。もう電車の輪郭が見え始めている。走行音も細かい所まではっきりと聞こえるようになっていた。
扉まで約十メートル。間に合うか?
口でも呼吸しているせいか、乾いていた喉が外気にさらされ干されていく。唾液さえ出ない口内は極端に収縮し、心臓は張り裂けんばかりに命を燃やしている。
苦しい。
生きたい。
電車は更に加速するように汽笛を鳴らし、叫ぶ。
がたん! がたん! がたんっ!
もう少しで、扉に手を伸ばせば届く。
電車がもうそこまで迫っている。
ようやく、扉のドアノブに手が触れた。頼む、開いてくれ。
がちゃ。
「開いた! みんな早く」
扉の中に入る寸前、列車のライトがまぶしく僕達を照らし出した。
素早く扉を閉め、安堵し切った背中をそこへ預ける。助かった。僕は死んでない。生きている事に喜びを感じているのとは裏腹に、体は溜まり切った疲労を素直に訴えていた。そのまま床に座り込もとすると、
(あれ。もう来ちゃったの?)
人の声――それはただの人ではなく、多重録音したの男児のような声――がした。地に足が付いていない声とでも言うのだろうか。ただ純粋に僕との格別な隔たりを感じた。
「てめえが山下を殺したのか。姿を見せやがれ!」
秋山は声の主に向かって言った。
辺りは薄暗く、どこに何があり誰がいるのかが上手く把握できない。
(ちょっと待ってね。いま、明かりを点けるから)
かちかちと音を立てながら頭上の方で何かが光った。電球でもあるのだろう。その光は何度か瞬きを繰り返し、辺りを明るくしてくれた。
最初に僕の目に飛び込んできたのは、複数の幽霊達だ。
ざっと見た感じで十人以上は軽くいるだろう。全員子供のようで、僕の身長よりも背が低かった。霊の体は青い光みたいに淡く、後ろの景色が薄く透けている。ほとんどの霊はどこかしらに傷を負っており、軽傷に見えるものからかなりやばそうな傷跡まである。こいつらが、僕達をここに閉じ込めた張本人。
何やら、一つの死体を囲むように霊達は群れていた。その死体はほとんど腐食していない比較的新しい物のようだ。髪の長さからして女性、体格からすると成人と言ったところだろうか。腹部付近にはたくさんの木材が突き刺さっていて、恐ろしい量の血液が床に染み込んでいる。不可解なのが死に顔だ。苦しそうな表情は何一つ見られず、それどころか安らかな笑みすら浮かべている様に見える。この人は、もしかしたらあの手帳に書いてあった野中汐梨さんではないだろうか。
(まずは、おめでとう)
この群れのリーダーらしき霊が含み笑いながら、僕達の前に進み出る。この場にいる霊の中では恐らく最年長ではないだろうか。したたかな黒い長髪を肩から下ろし、全てを見通すような漆黒の瞳を細い目から覗かせている。顔の所々が黒ずんでいる以外に、目立った外傷はほとんど見られない。この少女は高校生の僕よりも大人びいた雰囲気を身に纏っている。
「ふざけんじゃねえ! 何がめでたいんだよ。俺の友達を殺しておいて、良くそんな事が言えるな」
秋山は今にも飛びかかりそうな勢いだ。拳を震わせるほど強く握り締めて、相手を威嚇しているのが分かる。僕だって同じ気持ちだ。だが、ここは耐えてもらわないと困る。僕達の命は、決して自分達だけの物では無い。中村と山下の命も背負っているんだ。なんとしてもここから脱出しないと。
霊には聞こえないように、小声でこっそりと秋山に話しかける。
「……秋山、落ち着け」
「落ち着け? これが落ち着いていられるか。目の前に山下の仇がいるんだぞ」
「秋山。良く考えてみるんだ。僕達がここで死んでしまったら、先に死んでいった山下達も報われないだろ。そして、周りを見るんだ」
秋山ははっとし様子で静川さんに顔を向ける。
「分かるだろ。僕達はみんなで一人だ。誰かが勝手な行動を起こせば、みんなが巻き込まれる」
秋山は悔しいそうに下唇を噛んだ。いきり立つ自分を必死で押さえようとしてくれている。
(何をこそこそと話してるの? まさか、私達を浄霊しようと画策してるんじゃないでしょうね)
僕達は霊媒師でも何でもない。浄霊なんて出来る筈がないだろ。
「違う。僕は、君達と話し合いたいんだ」
(ほんとかしら。ふふっ。まあ、別にどうでもいいけど)
不敵に笑う少女の霊。
(で? 何を話し合いたいの? どうせ、こっから出してくれとか言い出すんでしょ)
顔は笑っているものの、少女の霊は内心つまらなそうに聞いてきた。
「ああ、そうだ。君が僕達を閉じ込めたのなら、解放する事も出来るはずだ」
(桐原玲香)
「えっ?」
(私、ちゃんと名前ぐらいあるから。君、なんて子供っぽい呼び方しないで)
少女の霊……じゃなくて、桐原玲香は不機嫌そうに目つきを鋭くさせた。空気を凍りつかせるように冷ややかで、殺気をもろに剥き出した睨み方だ。子供扱いされたのが相当嫌だったのだろう。あの瞳に睨まれただけで、僕は殺されたのではないかと思わず錯覚してしまった。桐原玲香を怒らせるのはまずい。
「ごめん! えっと、桐原……」
(そう、それでいいの)
桐原の後に、ちゃん、をつけようとしたら遮られてしまった。呼び捨てがいいと言う事か。次から発言する時は細心の注意を払った方がいいな。
「それで。桐原は俺達を解放してくれる気があるのか、ないのか。どっちなんだ」
桐原玲香と僕のやり取りに痺れを切らしたのか、秋山は乱暴に発言した。これでも、本人は控えめに言ったつもりなのだろう。出来れば、後もうちょっとだけ言葉を優しくしてほしい。
(そうね……。ん~)
桐原玲香は両目を静かに閉じて、瞼で床を見つめる。まじめに悩んでいるのか。結論は出ているのに意地悪っぽく焦らしているのか。何にせよ、桐原玲香は異常だ。人の命運を握っていると言うのに、命の重みを感じている様子がまるでこれっぽちもない。こいつ、本当に人間の子供なのか?
(決めた。いつもは、ここまで辿り着く事の出来た人達から、一人だけしか還さないんだけど。今回は特別に……)
全員、生きて返してくれるのか?
(二人までにしてあげる。あはっ! 私、いい子でしょ)
狂気が色濃くあらわになった瞬間だった。
狂ってる。こいつはわざと二人まで帰してやると言ったんだ。僕と秋山、静川さんの中から二人だけ。人間が生に貪欲だと知っているからこそ、桐原玲香が仕掛けた狂気の宴。友達同士で殺し合いをさせ、自分は高みの見物でもして楽しむつもりだ。くそっ! もう我慢できない。
「桐原。人を弄ぶのがそんなに楽しいのか? 人を惨殺するのが、そんなに面白いのか?」
(うん! すっごく、楽しいし。すっごく、面白い)
声を生き生きさせ、濁りのない笑顔をこちらに向けてくる。
全身から水分と言う水分が一気に噴き出す。体中の毛は逆立ち、戦争で言うところの臨戦態勢を無意識にとっていた。手足をうまく固定する事が出来ず、体が言いようのない戦慄を覚える。屈託のない笑顔にこれほど恐怖したの初めてだ。
「……本気で言ってるのか」
自分で聞いておきながら愚かな質問だと思った。返ってくる答えなど分かり聞いている事なのに。
(当たり前でしょ? お人形遊びや裁縫よりも、ずっと遊戯な娯楽じゃない)
善悪の判断がつかない幼児が笑いながら虫を殺すような。桐原玲香はまさにそれと同じ。自分のしている事に罪悪感を覚えるのではなく、自分の欲求を満たす快感を覚えてしまったのだ。ここには彼女をしつける親もいなければ、道を正してくれる友人さえいない。まさに孤独な世界。あるいは、その孤独さを紛らわすために人を殺していたのかもしれない。それがいつの間にか、手段が目的化してしまったとも考えられるだろう。
桐原玲香と言う少女の過去に何があったのか。それを僕は知らない。だが、今こいつがしている行為は決して許されない事だ。
(そんな事より、早く決めてよね。この世界で生きているのはあんた達だけなんだから。次の人間を早く補充したいのよ)
ここに残していく奴を一人だけ決めるなんて出来る訳ないだろ! ……ん? ちょっと待て。今、次の人間を補充しに行くとか言わなかったか。
「お前、こんな事をまだ続けるつもりか」
(あなたは、楽しい遊びを途中で止めたりする? しないでしょ、普通。誰だって、時間が許す限り遊び続けようとするわ)
子供が考えそうな理屈だ。終わりを知らない子供だからこそ、桐原玲香は質が悪い。
「同じ事が二回も起こると、さすがに警察も黙っていない。それに、そんな怪奇現象が起こる電車には誰も乗らなくなる」
(くっ! あははははっ!)
桐原玲香は突然吹き出し、甲高い声で笑い転げる。
意味が分からない。僕がおかしな事を言ったか。
「何がおかしいんだ?」
(だって、あんたが大きな勘違いをしてるんだもの。分からないの? だったら教えてあげる)
くすくすと小さな笑いを引きずりながら、はきはきと口を動かす。
(まず第一に、私は幽霊なんだから警察なんかに捕まったりはしない。第二に、これは六十年くらいも前からやっているから、今回が初めてじゃない。第三に、こんな危ない列車に乗っているのはどこの誰ですか?)
六十年間もこれを繰り返しているのか。国や警察は何をやっているんだ。何故、電車の運営をストップさせない。
(それはね。人間は危機感が無いからだよ。最近は五回ぐらいだったかな? それだけ、列車の乗客を丸ごとこっちへ誘拐したのに、それでも列車に乗る人間は後を絶えないんだよ。全く馬鹿だね~。便利な生活からは簡単に抜け出せないのが、人間の性なんだよね。まあ、一部の地域だけ鉄道機関を停止しても、他の地域に列車が走っていれば意味無いんだけど。私が作ったこの幽霊列車があれば、あんた達の世界にある全ての列車に繋げる事が出来るんだもの)
桐原玲香は両手を高く掲げ、天井に向かって「ねっ!」と声を上げる――恐らく、この幽霊列車に言ったのだろう。部屋がだだっ広いのか、桐原玲香の声は水面に生まれた波紋のように響き渡る
そんな。僕達の世界から鉄道機関そのものを完全に廃止しない限り、こいつの凶行は止められないのか。
「おい。桐原」
さっきから全然喋らなかった秋山が、不意を突くように声を発する。
(何?)
「俺をここに残せ。かわりに、裕介と静川を解放しろ」
「お前! 何言ってるんだ」
秋山がとんでもない事を言い出し、僕はすかさず待ったをかけた。顔をきつく睨みつけてやったが、決意を固めたようなその表情は一片たりとも緩まない。いつになく真剣な顔つきに、僕は言葉を継ぐのを忘れてしまった。
「裕介。気にすんなって。俺はどっちにしろ、このいけすかねえクソガキに一発もかませないまま、還るつもりはなかった。桐原がせっかく二人まで……いや、違うか。二人もの友達を無事に生還させてくれる、って言ってるんだ。お前らを差し置いて、俺が厚かましく生き残れるわけがねえだろ」
「でも、良く考えれば、三人で脱出する方法が……」
「そうよ。秋山君、死に急いじゃ駄目。最後まで悪あがきをしてやりましょ」
僕も静川さんも、秋山を引きとめようと必死で試みる。
「……分かったよ。桐原。一つ確認するが、俺達をここへ連れてきた時みたいに、還る時も一瞬で済むんだよな?」
(そうだけど)
桐原玲香は機嫌が悪そうに答える。自分の思い通りに事が運ばず、イライラしているのだろう。
良かった。案外あっさりと思い止まってくれた。あそこまで真剣そうな顔をしていたから、僕なんかの言葉で引きとめられるか正直自信が無かったんだ。
「桐原! 強制的に二人を還せ! 早く!」
秋山がそう叫ぶと、桐原玲香は、にっと嫌な笑顔を浮かべた。
とっさに、僕は秋山の腕めがけて片手を伸ばす。
「秋山! 待っ――――」
気がつくと、僕は駅のホームにいた。
待合室の椅子に腰を落ち着けていた僕。隣には静川さんが目を閉じて座っている。眠っているのだろうか。僕はなんでこんな所にいるんだろう。
窓の外に目をやり、外の様子を確認する。
人だかりが出来ていた。ぐるりと待合室を囲んでおり、サラリーマンや学生と思わしき人がたくさんいる。空はまだ明るいが、時刻はもう夕方になろうとしているのだろう。今は夏だからな。外の明るさを門限にしている学生にはちょっぴり嬉しい、昼の時間帯がすごく長い季節だ。
「君達、大丈夫かい? 怪我はないかい?」
駅員さんが待合室の中に入ってくるなり、僕は声をかけられた。
中年のおじさんのような駅員さんは、しきりに僕と静川さんの安否を確かめてくる。優しそうな人には見えるが、これはいくらなんでも少しお節介過ぎるのでは。僕は健全で立派な高校生で、酔い潰れている通行人では無いんだから。
「大丈夫です」
「でも、服が血で真っ赤に汚れているけど」
駅員の言葉を疑い、僕は自分の衣服に目を落とす。そんな馬鹿な……うえっ! 本当に汚れている。てか、ほぼ真っ赤に染められてるよ。なんでこんなになってんだ?
上手く思い出せない。昨日の記憶がすっぽり抜けているようだ。何か、きっかけでもあれば少しは思い出せそうなんだが。
待合室の扉が開き、警察官を二人引きつれた私服の男性が中に入ってきた。私服の男性はたぶん刑事だろう。体格が大きく顔に威厳のある人で、低く見積もって四十歳前後だと思う。
刑事は警察手帳のような物を取り出し、僕にそれを示す。
「君が現在、行方不明中の宮本裕介だね。隣にいる女の子は、同じく行方不明中の静川沙織。間違い無いね」
「行方不明? 僕かですか?」
「そう。乗客大量失踪・列車事件で行方不明になった者の一人だ。次に、君と同じ高校に在学中の生徒で、同じく行方不明中の人名を列挙していく。その中に友達や何らかの関わりを持つ人物がいたら教えてくれ」
「あ、はい」
「総数三十名だ。まずは君と同じクラスの生徒から。赤木俊子、秋山健一、佐々木則武、高橋恭子、中村美咲、藤原凌佑、山下朋樹。次に……」
秋山、中村、山下。そうだ! その三人と僕と静川さんの五人で電車に乗って下校していた。電車に乗っている途中、訳の分からない所に閉じ込められたんだ。その場所から脱出しようとして、中村や山下が殺された。秋山は僕と静川さんを助けるために、自ら犠牲となってくれたんだ。
僕はこの後、他に色々聞かれた。何があったのか。他の乗客はどうなったのか。
どうせ話しったって信じてくれないだろうな。そう思っていたけど、意外にも刑事は真面目に話を聞いてくれた。
一通りの事情聴取が終わると、僕は自宅までパトカーで送られる事になった。
僕が体験した今回の出来事は一生話忘れる事は無いだろう。友達を失った悲しみ、絶望と恐怖に冒され、心に開いた傷穴は大きい。僕に何か出来る事は無いだろうか。こんな悪魔の連鎖は早々に終わらせなければいけない。秋山が救ってくれたこの命、桐原玲香の凶行を止めるに使おうと思う。
幽霊列車の走行を食い止めてやる、と僕は決心した。
グループ一・高校生 エンド




