四人目の誰か~after~
四人目の誰かに関するその後
事の始まりは街で飲んでいるときに声を掛けられたことがきっかけだった。
‘充分に酔ってる’俺は特に深く考えるという事をせずに、ただの興味本位な好奇心から二つ返事で承諾し前払いで‘記憶を予約’した。
‘ネズミには関わるな’そう俺の周りは口にし、俺自身もネズミと関わる気がなかった。
そう、ネズミには関わらないでいようとしていたのに。
今では俺自身が‘ネズミになってしまった’という現実を受けいれたくなかった。
◇
‘ネズミの巣’からネズミが俺を迎えに来てネズミの巣に‘運ばれ’俺は酔ってたとはいえ過去の自分を恨んだ。
しかしもう遅いのなら開き直るしかない、もともと記憶体験には興味があっていつか記憶体験をしようと思っていたのだ。
その記憶体験が‘破格の値段’ででき、しかも‘過激な記憶’を体験出来るのならいいじゃないか。
そう‘過激な記憶’を体験できるのだ、‘普通の記憶’ではなく‘過激な記憶’を体験するのだ。
どこか今までと違う緊張がはしるなか、受付のネズミから説明を受ける。
今回は‘ネズミ屋志望’のルーキーのテストのため‘あの値段’で受けられるということと、‘帰り道から‘黒いコートを着たネコに用心しろ’と告げられた。
ネズミ屋志望のルーキーのテスト、そのテストの実験体になって体験した記憶。
これからネコに怯える日々を過ごすことになる代償の記憶。
俺は深くため息をついた。
◇
ネズミの巣から住居へ‘一人で戻る’途中、自らネズミであると名乗り出るため‘ネコの部屋’に行くか悩んだが‘噂される罰則’を思い出しやめることにした。
極度の緊張で喉が渇くが早く住居に戻りたい、できるだけ‘自然に’街を歩く。
話しで聞く‘過激な記憶’に期待してたが今回は‘ルーキーのテスト’での記憶で、このなんともいえない記憶を体験したおかげで自身の記憶のように思い出す。
‘紙のノート’には自分で書いたらしい妄想話しと落書き、それをそっと閉じてまた開き別の書かれている言葉を見て再び閉じ。
「はぁ、、」
記憶の内容にため息をつく、有り難いことにノートに書かれた内容まで思い出せる。
「はぁ、」
ついため息が出てしまう。
bとdを書き間違える程の疲れってどんなんだよ、徹夜何日目だよ。
しかも‘高級品の紙のノート’に書くなよ、それになぜ表紙と裏表紙を雑に黒く塗りつぶしてるんだ?どんな富裕層だよ。
こんな記憶のために今日からネコに警戒して外出し、ネコに狩られないようにしなきゃいけないのか。
一瞬、ネズミを乗せる‘ネズミ取り’が横を通り過ぎた気がしてつい立ち止まりそうになった。
気のせいだろう。そう自分に言い聞かす。
今日会ったネズミ曰くネコは必ず黒いコートを着ているらしい。
‘黒いコートに注意しろ’そうアドバイスされた。
さりげなく周りに視線をやり、黒いコートを着た奴がいないか確認するがどうやらいないようだ。
しばらくの間は外出しないでいよう、周りにも今回のこと‘自分がネズミになった’事を言わないように飲むのも控えよう。
そう考えながら少し足を速める。
交差点を曲がりしばらく歩き遠くに住居スペースが見えてくる。
「ふっ、」
本日何度目かのため息、というか安堵のため息を漏らした時だった。
ふいに後ろから手首を掴まれ‘ぐっ’と仰け反るような形で足を止められたと同時に、目の前に‘すっ’とどこからか黒いコートを着た男が現れる。
‘ネコだ’そう思いながらもどこかでネコではないことを望みながら、後ろで手首を掴んでる奴の方を向く。
俺の手首を掴んでいるのはやはり黒いコート着た男だった。
その男は静かな口調で
「記憶についてお伺いしたいのですが?」
と言い道路の方に視線をやる。
ネコがネズミを狩る瞬間を行き交う奴らがわざとゆっくりと歩きながらじっと見る。
ネコが視線をやった道路には‘ネズミ取り’がいつの間にか止まっており、中からドアが開き黒いコート着た女が降り微笑みながら右の手のひらを上にし
「こちらへお乗りください。」
と俺をネズミ取りの中へ案内した。
読んでくださりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。それでは次話で。