第五十四話 「必四矢」
整列する百名を今一度見渡してみた。……見た目で判断は良くないよね!
俺は一つ咳払いをしてから、声を張り名乗る。
「俺が隊長のマサヒロだ。まずはじめに、この中でもっとも軍属が長い者、前に出ろ」
呼びかけに応じ、前に出てきたのは先程目に付いた腰の曲がった爺さまだった。
爺さまは俺の前に跪く。
「恐らく、儂がもっとも長く戦場を駆けてきた者でしょう」
「名はなんという?」
「はっ。ボルと申します」
「じゃあ、ボル爺。今からお前は俺の後ろに侍り、俺と同じ目線で兵達を見ろ。副官を務めてもらう。いいな?」
地面から頭を僅かに上げ、ボル爺は俺の顔をまじまじと観察するように見た。
言い様のない迫力を感じた。この爺……ただの爺ではない?
だが、そんなのは瞬き程の時間で終わり、ボル爺は穏やかな口調で返事をした。
「失礼ながら、隊長殿は良き面構えをしておられますな。老骨が役に立てるかはわかりませぬが、副官の任、しかと承りました」
俺がボル爺に期待するのは長い軍属経験で培ってきたであろう『経験』。
それに一瞬だけ見せた鋭い眼光。大雑把な決め方だったが、意外にも悪くない人選になったかもしれない。
「おい、ちょっと待てよ」
サクッと任命が終わろうとしたその時、どう猛な唸りを上げながら一人がズカズカと前に出てきた。
見ずともわかっちまう。ため息を吐きながら声のする方に視線を向けると案の定、バルカンに直談判しに来てた悪ガキだった。
「そんな老いぼれに副官やらすくらいならオレ使えよ。つか、あんたの胸に付いてんの少佐の徽章か? なあ、それくれよ! 将軍になれるじゃねーか!」
こいつぁ、レヴィ以上のアホだ。
ギラギラと目を光らせ、俺に歩み寄ってくる悪ガキ。めんどくせえと思いつつ、ファヴにぶっ飛ばして! とお願いしようとした時、ゆらりとボル爺が俺と悪ガキの間に立ち塞がる。
「これ、小僧。隊長殿に失礼であろう。大人しくしておれ。血気盛んなのは結構じゃが、すぐにでも殺し合いが始まるのじゃ、もうちと辛抱せい」
「説教はいらねえ。そこをどけよ。オレは将軍になるんだ」
「愚かな。いいか、小僧。将軍とはな、なにも印があれば将軍と呼ばれるわけではない。将とは、智・信・仁・勇・厳を有する者をいうのじゃ。おぬしには、そのどれもが足りておらぬ。わかったのなら、早う隊列に戻れい」
「……ジジイ。オレは年寄りだろうと加減はできねえぞ?」
悪ガキから殺気が滲みだし、空気が張り詰める。
流石に止めなきゃまじぃなと、周りの部下に指示を出そうとした瞬間――。
一瞬だけ早く悪ガキがボル爺に掴み掛る。が、軽くその手を払いのけ、鞘に収まったままの剣をひと呼吸のうちに三度。膝を打ち、腹を打ち、膝を地面に付けた所で脳天に一撃。流れるような一連の動作で悪ガキの意識をボル爺は奪ってみせた。
「誰か、この小僧を担いでやれ。そうじゃな、そこの大きなの。お前が運んでやれ」
ボル爺が指名したのは目立っていた走れそうにない巨漢。
「オ、オラですか?」
「そうじゃ。早うせい」
「わ、わかりました」
どすどすと走り寄ってきて、気絶した悪ガキを担ぐと早々に後ろに下がっていった。
下がったのを確認するとボル爺は目を見開き、整列する兵達に大声で言う。
「この一度きりじゃ。無礼な態度や、混乱を招く真似をした愚か者はこの隊に必要ない。この禁破ることがあらば、次は鞘から放たれた真剣がおぬしらの脳天をかち割ると覚えておけ」
良い。良い雰囲気だ。隊に締まりが生まれ、一体感が形成されつつある。
俺は苦笑を漏らす。とんでもなく優秀な奴が副官になってくれたもんだ。
ボル爺は打って変わり、穏やかな口調で俺の指示を請う。
「隊長殿。これでよろしいか?」
「おう。ご苦労だ、ボル爺」
場を収まったと同じタイミングで大音量のラッパが鳴り響いた。進軍の合図だ。前から順に進み始める。
「じゃ、俺らも行くぞ」
軍事国家バルカンから、フィヨンド軍が陣を敷いている場所まで約三時間程の道程を小走りで進軍する。
フィヨンド軍は一時撤退し、近郊の草原より更に離れた位置にまで下がっていた。大将のフィヨンドの怪我が酷いなら本国にまで引くのが常道。しかし、その場に留まってリベンタ連合軍と戦おうとしているのはフィヨンドが指揮をとれることが窺い知れた。ま、ブラフの可能性もなくはないが、そんな博打は打たないだろう。
それに忘れてならないのは、こちらに圧倒的数の有利があるということ。リベンタ連合軍の規模は約十万。対するフィヨンド軍は約三万。三倍以上の差があるのだ。通常の戦闘であれば、無難にこちらの勝利となるが、フィヨンドとて数の差を重く見ているはず。きっとなにか策を講じてくる。間違いなく。
しかも、俺には一つだけ懸念があった。それは兵の質にある。リベンタ兵のほとんどは武装しただけの一般人ということ。普段は八百屋をやってる奴、鍛冶屋をやってる奴。それこそ様々だろう。日頃から剣を握っていないというのはいざという時に顕著に表れるものだ。対してフィヨンド軍、もといアークガルドは軍事国家。徴兵制ももちろんあり、兵卒に至る一人一人が戦う者、戦士なのだ。
兵数では三倍と大きくな差があるが、実際戦うとなると……。
……油断ならない状況なのは変わらんな。ネガティブな事ばかり考えていても仕方のないことなので、自分にできる事に全力で取り組み、戦闘に備えるしかあるまい。
俺は今、ファヴに乗って移動してるわけだが、隣を駆けている副官のボル爺に話しかける。
「ボル爺。遊撃部隊の中に目ぼしい奴はいるかい?」
目を細め、鋭い視線で何人かを挙げ始める。
「数人おります。まず、先程小僧を担ぐように命じた大きな男。毛むくじゃらの仙人のような男も何かを感じますな。……あとは、威勢の良い新人二名が見所があるかと」
ボル爺の言ってる奴らって、最初に目に付いた五人の内の四人の特徴とばっちり合致してる……。ちなみに腰の曲がった爺さんがボル爺なので、目立っていた五人が使えそうだと……。
「わかった。戦地に着いてから良い。全員俺のとこに呼んどけ」
「承りました」
そこからは粛々と進軍し、戦地となる場所に着くころにはすっかり日暮れだった。
小高い丘に立ち、戦地を見下ろす。すーっと血が冷えていくような感覚に、ずしりと空気が身体にのしかかる。
……懐かしいな。これが戦場の空気だった。大きく息を吸い込み、思いっきり吐く。じき夜になる。今日は一先ず戦闘はないだろう。翌日からフィヨンド軍と戦いが始まる。
とくれば、今夜は英気を養わなきゃなんねえよな。
バルカンの本陣の片隅に場所を貰い、天幕を張り夜営の準備を完了させ、ボル爺に指示を出す。
「ボル爺。数人使って、配給貰ってきてくれ。もちろん酒もな」
「ふぉっふぉっ。今夜は親睦を深めるためにも大いに飲み食いしましょう。すぐに行ってこさせますじゃ」
「あぁ、それとボル爺が目付けてた四人。俺のとこに来るよう伝えといてくれ」
「直ちに。しばらくお待ちを」
とりあえず、指示を出し終え俺はファヴの背中に寝っ転がって伸びをした。
なんでかわからねぇが、心臓の音がはっきりと聞こえてくる。落ち着かない。けど、不安や恐れとかではない。不思議な気分だ……。
(マッサヒロくーん。どしたの? ニヤニヤしてるよ)
「ん? レイちゃんか。……いや、なんだか落ち着かなくてよ。駆け出したいっつーか、でっかい声出してぇとか、よくわからんがそんな気分でよ」
(あー。それってあれじゃない? 武者震い! 的な!)
「武者震い? 俺が? ないない。昔、俺が兵士やってた頃仲間に呼ばれてたあだ名知らないだろ? 『ゲロ吐きマサヒロ』って呼ばれていじられてた」
(ほうほう。それはまたなんで?)
「……戦場ってのは、そりゃ恐ろしい所でよ。数分後には殺し合いを始めなきゃなんねぇって状況なわけよ。隣にいた奴が首だけになって転がってたりするし。自分も死ぬかもしれねぇし、隣にいる奴も話すこともなくなっちまうかもしれねえ、とか。なんか色々考えてると死ぬほどブルって気持ち悪くなって吐き散らしちまうんだ。そんな俺が武者震いとかはないだろ。ビビッて震えてるってならまだしも」
(ま、それだけマサヒロくんが強くなってるってことじゃない。あ、腕っぷしってことじゃなくて、精神的にって意味ね。あなたはそれだけの道を歩んできてるよ。もっと自信持ちなよ)
「……くくっ」
(え、怖い。なに笑ってるの? 怖くて頭おかしくなった?)
「やかましいポンコツレイス。――いや、面白くてよ。今日のレイちゃんはいつにも増してまともなこと言ってると思ってさ」
(ちょっと! 前々から気になってたんだけど、ポンコツレイスって間違ってるから! 私、超優秀! 知識の指輪に宿る頭脳明晰の美人なお姉さんなの! 復唱して!)
「ズノウメイセキノビジンナオネエサン」
(あー! またバカにしてぇ! ちゃんと復唱しなさーい!)
ぷんすか怒るレイちゃんの姿はどこか可笑しくてゲラゲラと笑いが止まらない。
涙が出るほど笑い、呼吸を落ち着かせ噛み締めるように素直な気持ちを言ってみた。
「ありがとう。レイちゃん」
(む。マサヒロくん、それは卑怯……)
「お? 照れてる? 照れちゃってる? レイちゃんにしてはめずらしいじゃねぇか。レアだ、レア!」
(もう……! あったま来るなぁ……)
ぶつくさ文句を言うレイちゃんは本当にめずらしく、しおらしかった。
そんな感じでお喋りをしていると、遠くからボル爺と例の四人がこちらに向かって来るのが見えたので、名残惜しかったがレイちゃんとの会話を打ち切ることにした。
「さて、お喋りの時間は終わりだ。また寝る前にでも話そう」
(はいはい。あんまり夜更かししないようにしなさいよー。じゃ、またあとでね)
レイちゃんが指輪に戻ったのを確認し、ファヴから飛び降りる。
地面に降りるとそこには跪くボル爺と四人が俺の言葉を待っていた。
「ご苦労。まず、順番に名乗れ。ボル爺はわかってるから言わなくてもいい」
左から順に、名前を言い始める。
「オ、オラの名前はベムブル」
巨漢の名前はベムブル。近くで見るとまじでデカい。タッパだけならオルガよりもデカい。
「ニューラーです」
仙人のような毛むくじゃら男の名前はニューラー。見た目に反し以外に若々しい声だ。
続いて問題児の悪ガキの番なのだが、名乗ろうとしない。それに目ざとく叱るのはやはりボル爺。
「小僧。早う名乗らんか。また痛い目にあいたくはなかろう」
悪ガキは舌打ちをしながら、渋々名乗る。
「ベーオウルフ。オレの名前はベーオウルフ・レスクヴァだ」
へえ。こいつ姓を持ってんのか。それなりの家の生まれなんだな。結構意外だ。
「僕はセタンタと言います。宜しくお願い致します、隊長殿」
ボンボンの名前はセタンタ。どう見ても貴族だが、姓を名乗らないのは何か事情があるのか。まぁ深く詮索するつもりもないが。
四人の名前を把握し、改めて本題に入ることにした。
「なんで呼ばれたか不思議に思ってるだろうが、呼んだ理由は至極簡単。ボル爺の推挙もあってお前らに役職を与えようと考えてる」
「随分と安易な決め方をするのですね」
「ニューラー。その通り。安易だ。なにせ、俺はお前らを含め預かった遊撃隊百人のことを誰一人として知らない。だから正直誰でも良いんだよ。ただ、集団には決め事や上に立つ者がいなければならないのも事実。要は仮だ。明日から始まる戦闘で資格なしと俺が判断すれば容赦なく外す。もちろん、ビビッて辞退するのもアリだ。さぁ、どうする?」
急な展開だった事もあり、四人ともすぐには返事をしようとはしなかった。
ベムブルが恐る恐る疑問に思った事を聞いてくる。
「た、隊長さん。べ、別にオラ達はそんなに活躍する場面が、な、ないと思うんです。きっと、終わるまで待機してるのが、お、落ちですよ。た、多分この戦いは我々リベンタ連合が勝ちます。余り者の寄せ集めのオラ達に活躍する時なんてきやしませんよ……」
なんとも自虐的な言い方だな、この太っちょベムブルめ。
「そうか? 俺はまったくそうは思わない。五分、もしかするとこっちが不利の可能性だってある」
「か、仮にそうだとしても、百人でどうこうできるので、し、しょうか?」
「なんとかなるようにお前らを選んだんだ。見たところ、ベムブル、お前は如何にも怪力そうだ」
「ち、力は人一倍あ、ありますが、動きが遅くて隊列をいつも乱してしまいます……。愚図、ノロマと厄介者扱いされていますし、か、買い被りですよ……」
「だったら活躍できる場面を見つけろ。そこに注力すればお前の力を最大限生かせる。常に頭を働かせろ。力任せに戦うのは動物だってできる」
俯きしゅんとしちゃうベムブル。打たれ弱ぇ……。
まぁ、これしきでへこたれるようじゃこの先やってけねえだろうし、ガッツがあることに賭けよう。
続いて毛むくじゃら。
「ニューラー、お前が得意なことはあるか?」
「……力には自信ありません。ただ、背後から静かに殺すのは得意です」
「ほうほう。面白い。暗殺とか隠密に長けてるのかもな。で、セタンタ、お前はなにができる?」
「なんでもできます。あえて言うなら、速さですかね。平均的な騎士の剣なら、当たらない自信がありますよ」
「せいぜい怪我はするなよ。期待してるぞ。最後にベーオウルフ。……長えな。略してベオ! お前はなにができ?」
「勝手に変なあだ名付けん……!」
ギロリとボル爺に睨まれ、言葉を引っ込めたベオはいじけるように質問に答えた。
「オレは、将軍になる。将軍にすぐなれねぇことはなんとなくわかった」
今頃? おバカさんかな?
「だから一から始める。一から始めて将軍になる日までオレは休まず戦い続ける」
「気合いは誰よりもあると。悪くねえと思うぞ」
「あんたの下についてもいい。ただ条件がある」
「言ってみろ」
「フィヨンドの首はオレにくれ。デカい武功が欲しい」
無謀、浅はか。ほとんど騎士がそう嘲るだろう言葉。
しかし。俺はベオの熱い心意気に賭けてみたくなった。最近の若い奴しちゃあ、面白い男だ。
「ボル爺。俺はこいつにフィヨンドの首、任せようと思ってんだが、反論はあるか?」
ボル爺は立派なあご髭を撫で付けながら、ベオに鋭い眼光を向ける。
「なんだよジジイ。お前もバルカン達みたいにオレを笑うか?」
「ふぉっふぉっ。笑わんとも。跳ねっ返りの無茶に付き合ってやるのも老骨の務めじゃろうて。背は任せよ。口だけではないこと、証明してみせい」
どうやらボル爺も賛成してくれたようだ。
「ベオは同意した。ベムブル、ニューラー、セタンタ。お前らはどうする?」
まずセタンタが答える。
「僕も同意します。戦いを求めここにいるので」
「いいだろう。よろしくな、セタンタ」
「はい、隊長殿」
次にニューラー。
「私も条件がありますが、よろしいですか?」
「言ってみろ」
「褒賞を三倍」
「……要は金か」
「はい。騎士として、不純な動機とみなしますか?」
「いや、立派な動機だ。下手な信頼関係よりはっきりしてていい。シトラに頼んで金は用意させる。全員の前で約束しよう」
「そういうことでしたら、私もあなたの手足となることをお約束しましょう。全員の前で」
毛むくじゃらの癖に、妙なとこ艶があるというかなんというか。掴み所のない男だが、これで残りは一人。
「ベムブル。さぁ、最後だ。どうするんだ?」
ベムブルは俯いたまま、肩を震わせている。
「……無理強いはしない。やりたくなきゃ、やらなくてもいいんだぞ」
「オ、オラは……っ」
がばっと顔を上げ、真剣な眼差しを向けてくる。
――良い眼をしていた。
「オラは家族を養う為に傭兵をしてます。元々争うのが嫌いで、戦争も毎回怖くて怖くて、敵を殺した後、手に着いた血が嫌いでした。仲間のはずの同僚からもバカにされて……。オラはなんの為に戦うのか何度も自問自答を繰り返してきたんです。いつも同じ答えになります。家族の為です。オラには小さな娘がいて……」
「所帯持ってたんだな。娘はいくつになる?」
「今年で六つになります。その娘がいつも言うんです。鎧を着てるお父はカッコいい、って。情けなくて泣きそうになる。娘はカッコいい父と思ってくれているのに、実際は仲間にバカにされお荷物扱いを受けてる。オ、オラはそんな自分を変えたい! た、隊長! オラは娘に誇れるような立派な騎士になれるでしょうか?!」
泣きそうになってるよ、大の男が。ただ、その姿を情けないとは一切思わなかった。
「ああ。なれるさ。お前がなりたいと強く思えば、必ずなれる。カッコいい騎士、いいや、カッコいい父親になってみせろ」
「う、うぐぅぅ! なる! オラ、なります! 共に戦場を駆けることをここに誓います!」
ようやくこれで、特殊遊撃隊の体裁が整った。
俺を隊長に、副官にボル爺を据え、更に特別に名付けた新たな役職『必四矢』という俺が放つ必殺の矢を務める四人の騎士ベムブル・ニューラー・ベオ・セタンタ。
柄にもなく、血が騒いだ。こんなこと初めてかもしれない。戦うことを待ち望む自分がいた……。
あとは配給持ち帰ってくる部下待ちなんだが、どうにも遅かった。早くパーッと騒ぎたいのになにやってんだ、とぼやきたくもなってきた時。滑り込むように俺達六人の間に一人の男が倒れこんだ。
「副隊長……。はっ! 隊長殿も……っ!」
「いや、お前大丈夫か? なにやってんの? つか、なんか怪我してねえか?」
どうやらこいつは遊撃隊の隊員のようだ。しかも、顔に擦り傷のようなものが痛々しく刻まれている。
「た、助けて下さい!」
「とりあえず落ち着け。なにがあった?」
「は、はい! わ、私は数人で配給を受け取りに行っていたのですが、意地の悪いことに渡そうとしなかったので、抗議したのです。そしたら、ごく潰しに食わせるものはねぇ! と袋叩きにされて……。私はなんとか逃げ出せたのですが、まだ仲間が何名か残っています! どうかお助けを!!」
「…………はっ?」




