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第四十九話 「止まり木の国主」


 自由都市リベンタ。それは、小国の密集した地域の総称である。総人口は二千八百万人。アークガルドの六千万人、シルフヘイムの四千七百万人と比べても見劣りしない規模にまで昇る。

 そもそも自由都市とは、絶対王政のもとに敷かれる支配や規制、重い税などからの解放を目論んだ四人の大商人達のクーデターにより勝ち取った戦果なのだ。

 その昔、シルフヘイム・アークガルド・ミルドラードなどの大国が生まれ、それぞれが繁栄を極めていった。そこで大きく活躍したのが商人という職業だった。様々な国を渡り歩き、交流や貿易を行い国の発展に陰ながら尽力していたのだ。しかし、褒め称えられるのはいつも王や皇帝達だった。商人達は正当な評価をもらえず、ただの商売人で人生を終えるのか納得いかずにいた。商人とは良くも悪くも貪欲であり、何事も損得で生きる人種なのだ。そうして、秘密裏に大商人達により会合が開かれるようになり、度重なる議論の結果、独立という道を選ぶことになる

 その選択は大陸の貿易を滞らせ、国の運営を脅かすほどの事態を招いた。国の代表達は慌てふためき国民は飢えに苦しむことになり、商人の存在を身をもって知らしめられたのだ。

 何十、何百という話し合いの場が設けられ、ついにそれぞれの王や皇帝も大商人達の案を飲んだ。新たな国家の誕生である。

 今でこそ百以上が加盟する小国の連合になっているが、始まりは四つの小国からだった。独自の法律、独自の自治、それぞれの国が二つとない独立した文化形態を築き、また国を発展させていった。それに乗っかる形で独立を望むたくさんの人々が集まりさらに国土を広めていくことになる。咎めようにも、王や皇帝さえも不可侵の領域にまで発展してしまったリベンタに強く出ることもできず、牽制するのが精一杯。最終的には現在の大国達に比肩するほどの規模にまで成長するのだから、商人とは恐ろしい人種であると言える。

 国家誕生という奇跡を勝ち取り、建国の立役者となった偉大な大商人達の名をそれぞれ『リカルド』『ベルツ』『ンターチ』『タオレ』と言い、その頭文字が取られ、自由都市の密集する地帯を『自由都市リベンタ』と呼称されるようになったそうだ。


 ……という説明をたらたらと続けるシャノンさん。

 翌日から行軍が始まり、暇を持て余したピサが、「っていうか、自由都市ってなに?」と質問した所、スラスラと眠くなるような長ーい説明をしてくれたわけだ。国家の誕生がどうのと言っていたが、それぞれが町程度の規模。それを国家と呼んでいいのかわからんが、まぁ、シャノンが言うんだから一応国なのだろう。

 ピサは国の成り立ちに興味深そうにしていたが、俺にとってはそんなことよりも重要なことがあった。自由都市、それはシルフヘイムや他の国とは文化形態を逸する。それは法律も同じ。つまり、シルフヘイムで禁止されてる事も一部は合法という事だ。

 最近ご無沙汰過ぎてマイサンの使い方を忘れたかと思っていたが、ぴくぴくと息を吹き返している。自由都市のとある国では、シルフヘイムで禁止されているハッピーになれる煙草や、性感を高める特殊な媚薬とやらの使用が禁止されていないというのを酒場で働いていた時に聞いた事があったのだ。

 うまく話をつけ、同盟結んだ暁には接待としてそういうのを所望するしかねえな。……いえね、ボクはあんまり興味ないんだけどアホの部下レヴィがそういうの大好きだから仕方なく付き合うだけっていうか、上司として面倒見なきゃいけないから。


「ぐふふ……」


 思わず変質者のような声を漏らしてしまう。


「おいピサ、シャノン嬢。この男の後頭部を撃ち抜いても? きっと良からぬ事を考えている」


「ま、まあまあ。いつもこんなだから見逃してあげて。近付かなければ無害だから」

「ええ、そうですリズさん。触らぬ変態に祟りなしと言いますから、あまり自分から関わらない方がいいです」


 俺を性獣かなにかと勘違いされているようだが、あいつらの話のネタになったみたいだから良しとしよう。

 手綱を握りながら後ろを振り向くと、三人仲良くお喋りをしていた。オルガ達は陣形を形成しつつ、周囲を固めてもらい行進させているので今竜車に乗り込んでいるのは俺も含め四人だけだった。

 シャノンとリズは互いをリズさん・シャノン嬢と呼び合い案外仲良くやっているようで安心した。仲睦まじい三姉妹みたいで思わず顔がほころんでしまう。


「なーに? マサヒロ。なんか嬉しそう」


「なんでもねえよピサ」


「そう? ならいいけど。それにしても、シャノンにも見せたかったなー。虹の橋」


 背中にパンチをしながら愚痴をこぼすピサちゃん。結構痛いです。


「まだそんなこと言ってんのか? ありゃしょうがねえだろ。つか、お前も納得してたじゃねえか」


「でもさぁ……。ぶーぶー」


 アールヴを後にした俺達は虹の橋を渡りエルインガングに舞い戻ったわけだが、そこで一つの出来事があったのだ。

 エルインガングの人々は俺達の帰還を心から喜んでくれ、ミミなんかいの一番に俺の胸に飛び込んで狂喜乱舞してたっけ。暖かく出迎えてくれて、また町の人々が宴を催しましょうと提案してくれたが、シャノン達が首を長くして待っているかもしれなかったので、丁重にお断りをした。

 本来なら小休止程度で済ませすぐに発つべきだったのだが、やっておかなきゃならない重要な事が二つあった。

 まず一つ目が、虹の橋をエルインガングの人々に託すということ。要は、竪琴をエルインガングに預けてきたということだ。実はいま、グローリエンから譲り受けた竪琴は手元にない。ピサがぶー垂れているのもそのせいだろう。

 フェンリル攻略の鍵となる『魔法の紐(グレイプニル)』を作成できるのはアールヴの錬金所だけらしいので、材料を集め再度アールヴまで行かなくてはならない。

 基本的に俺は軍のトップとして、前線に張り続けるためアールヴに行く時間は割けない。だから、材料集めやその運搬は誰かに依頼することになる。そのような人材がいればの話だが。

 依頼が個人ならそいつに竪琴預ければ済むが、複数に依頼する場合もあるし、下手をすれば竪琴だけ持って逃げられちまう可能性だってある。色々な状況を想定した結果、エルインガングの人々に託すのが安全だし、パクられる心配もないとの結論に至った。

 それにこれは二つ目の事にも絡んでくる、大事な役目を任せる前置きだ。

 俺が望むのは、『虹の橋の守り人』になって欲しいというもの。町の人々は困惑したが、俺ははっきりと言った。もう、町に蔓延る呪いは消えた、と。男が何かに惑わされ霧に消えることは金輪際起こらないと宣言したのだ。

 戦士の魂剣の受け渡しを完了した時点で、グローリエンは誘引の魔法を解除していた。つまり、もう初代ミルドラード王がエルインガングの人々に任せていた『巨壁の門番』の役目は必要なくなったのだ。

 最初こそ信じられないと言った様子だったが、虹の橋やピサやブラッドの言葉もあり、町の人々は肩の荷を下ろし、呪いに恐れることなく愛する者たちと平和に過ごせるようになった。

 竪琴の管理には一応責任者を設け、それはミミに任せることにした。不安がっていたが、俺がミミに任せたいと強く望んだため、最後には力強く頷いてくれた。

 そうして、後ろ髪を引かれる思いで天空の町エルインガングも後にしたというわけだ。


 ……そういうわけだったのだが、ちゃんと理由があるとわかっていてもピサはまたあの虹の橋を歩きたくてしょうがないといった風な不満顔だった。好奇心おばけのピサからすればとんでもないご馳走をおあずけされているような状態。まっ、ここは我慢してもらうほかねえんだけど。


「姫様、わたしもいつかその橋を渡ってみたいです。もしその機会があったら一緒に連れて行ってください」


「もちろんだよー! 皆で行こっ! 絶対楽しいから!」


 シャノンの絶妙なフォローも入り、ピサの機嫌も元通りだ。

 それにしても微笑ましい光景だった。未来の予定を計画し、その日を待ち望むありふれた会話。それがとても尊くあるように思えた。

 そんなありふれたものさえ亡き者にしようとするアークガルドはやはり潰す以外に道はないだろう。俺は前方に向き直り大地の先を見据える。

 いまだ全貌が見えない敵の姿。いつ会えるのかわからないが、俺も未来の予定を楽しみに待つとしようか。まだ見ぬ敵のツラを思い切り殴り飛ばす日を。


 それから数日間はなんの問題もなく行軍は続いた。

 その日も行軍を終え、野営の準備をし平原のど真ん中で駐留することになった。



「あと数日でリベンタに到着します。今の状況下において同盟を拒否される事はないと思いますが、リベンタの人達は大国の人間を嫌っている傾向にあります。世論は同盟反対の声が大きいと予測されますね。そのために、なにか案を用意してくださればと」


「いやいや。シャノンさん? それ結構無理難題よ? ボク政治家じゃないの。騎士。戦うのが仕事。おわかり?」


「でも、嘘ハッタリが得意です。人を騙す詐欺師の才能もありますから期待しています」


 相変わらず口の悪いお子様だよ、こいつは。その横では俺とシャノンのやり取りをピサとリズがケラケラと笑いながら聞いている。

 リベンタに到着してからの事を話し合いたいという事で、飯が終わった後に俺の天幕まで来てもらったんだが、何故かピサとリズのおまけ付きだった。ここを溜まり場がなにかと勘違いしてやがる……。


「わたしも一緒に考えますから」


「……わーったよ。考える。つか、それには情報が不足してる。もっと情報寄越せ。そもそもリベンタに加盟してる国は百以上なんだろ? 一個一個説得して回ってら一年掛かっても終わるかどうかわからねえぞ」


「その点については大丈夫です。隣接する国同士ですから多少トラブルもあるそうで、そのような国同士のトラブルを当人達だけで解決するのは互いに私情が入り過ぎて困難になります。そのためリベンタには連合評議会という国の代表達による話し合いの場が設けられています」


「……その評議会に乗り込んで説き伏せろと言いたげだな」


 シャノンは言葉を発さず、ニコニコとした不気味な笑顔で首を傾げたみせた。

 確信犯過ぎてこの子怖いです。誰に似たんだか、ドSに間違いない。


「へえへえ、やるよ。やらせてもらいますよ、軍師殿」


 ニッコリ笑いながらシャノンが返事をする。


「そう言って頂けると確信していました。頼みますね、少佐様」


 まーためんどうなことをさせられそうだと肩を落としていると、シャノンが付け加えるように説明し始める。


「ちなみに、評議会内にも役職というものがあります。重要なのは議長です。その人物を説得できるかどうかが鍵になってくると思います」


「へえ……。そうなの……」


 どうでもいい……。


「議長は確か、四人の大商人の家系で唯一血を繋いでいるリカルド家の者が務めているそうです。リカルド家現当主の名前を『シトラスー=リカルド・ロイネル』。まだ若い女性だと聞きました。それにとても美しく、聡明な方とも」


「っしゃ! 俺なんか気合い入ったわ。めっちゃ口説くわ!」


「いえ、口説くではなくて説得をですね……」


「ぐふふ……。待ってろよ、シトラスーちゃん。絶対口説き落としてみせる!」


 ジト目で睨んでくるシャノンを無視して、リベンタの美女シトラスーに思いを馳せる。無理難題を押し付けられたのだから、少しくらい楽しみを見出しても罰は当たらないはずだ。

 三人娘は呆れながら天幕を出て行こうとしたので、慌てて呼び止める。


「おっと、ちょっと待ちたまえ娘さんたち」


「はい?」


 機嫌が悪そうなシャノンの返事。なにか気に障る事でもしたかしらととぼけながら――


「いま兵を呼ぶ。お前らの天幕まで護衛させよう」


「……別にその必要はありません。警戒は十分にしていますし、この陣内に忍び込める者はいません。わたしが考えた陣を掻い潜るのは不可能です」


「まあまあ。一応だよ、一応。用心に越したことはない」


 食い下がろうとするシャノンをピサとリズがなだめ始める。


「シャノン、別にいいじゃない。なにもないならそれで」

「うむ。そうだぞ、シャノン嬢。むしろここにいた方が危うい」


「おい、どういう意味だリズ」


「さてな。では、お暇させてもらうぞマサヒロ。おやすみ」

「私も~。また明日ねマサヒロ」

「……おやすみなさい。マサヒロ様」


「おう、ゆっくり休めよ~」


 護衛の兵に三人を預け、天幕の中に戻る際周囲を確認する。ふむ、人の気配はないな。

 となれば、もういいだろう。


「出て来いよ。いるんだろう? それとも恥ずかしくて出てこれないのかな、お嬢さん」


 天幕の中を照らす火の揺らぎに紛れていた影から、すっと姿を現す一人の女。

 その女の顔はとても綺麗な顔立ちだった。まだ二十前半といった所だろうか。洗練された大人の女の色気がある。しかし、ただ美しいわけではなかった。その目が、野獣のようにギラつき明らかに堅気の人間ではない。チンピラ? とにかく危険な香りがする女だった。

 その危なそうな女は自分の存在を感付かれた事に驚きを隠せない様子だ。


「……なんでわかったんだい? あたいが潜んでる事。はじめてだよ、バレちゃったの」


 普通忍び込んだのがバレたら焦ると思うが、この女はケラケラと笑って焦りなど微塵も感じなかった。それが、少し不気味に見えた。


「俺ぁ、鼻が利くんだ。特に美女に対してはな」


 まあ嘘だが。

 実は、飯を食い終え天幕に戻るとレイちゃんが教えてくれたのだ。侵入者がいると。とりあえず、危なそうな奴だけど敵意を向けているわけではないということだったので俺一人で対応することにした。もしかしたらこの女の仲間が別の場所に潜伏しているかもしれないので用心のためにピサ達に護衛を付けたというわけだ。


「今まで気付かれたことなんてなかったのに。あんた、相当な場数踏んでるわね」


 壮絶な勘違いをしてくれているが、良い方向に勘違いしてくれてるみたいだからそのまま放置しよう。うん、そうしよう。


「まぁなんだ。とりあえず名前を聞こうか。夜這いにきた訳じゃあるめえ。ちなみに俺の名前は――」


「あんたの名前は知ってる。さっき聞いた。マサヒロってんだろ? 変な名前だね」


「うっせえ。以外にカッコいいだろうが」


「そういうことにしとく。おっと、名乗らなきゃね。あたいの名はロメリア。『ロメリア・オーヴ』ってんだ。好きに呼んでくれてかまわないよ」


 ロメリア・オーヴ……。はて? どこかで聞いたことがあるような……。何年か前に聞いたことがあったような気がするんだが、如何せん思いだせない。

 まっ、そのうち思い出すだろう。


「そうかい。じゃあ、ロメリア。俺になんの用だ?」


「あんた……面白いね。早速本題? あたいの素性とか気にならないの?」


「んなもんはどうだっていい。美しい女が俺に用があってきた。それだけで話を聞くには十分な理由になる」


「……へえ。なかなか良い男じゃないか。気に入ったよ」


「だろ? じゃあ、早速あっちの毛布の中で話を聞かせてくれ」


 俺が手を伸ばすが、ペチンとはたかれてしまう。


「相手をしてあげてもかまわないけど、それはあんた次第。あたいのお願い聞いてくれる?」


「……内容による」


「まどろっこしい前置きはなしで単刀直入に言うわ。スーを、リベンタ連合総統のシトラスー=リカルド・ロイネルを救い出して欲しい」


 シトラスー。それは先程シャノンが話してくれたリベンタの議長の名前。そいつを救う?


「ってーと、ロメリアはリベンタの人間か」


「そうさ。リベンタに加盟してる『止まり木のアルスト』って国名の国主やってるよ」


「……まじでか? 一国の王様やってんのかよ。すげえな」


「名ばかりさ。あたいの国は三百人もいないからね」


「それにしたってすげえだろ。たいしたもんだ」


「もう、そんなに褒めたってなにもサービスしないよ。それより、どう? スーを救ってくれる?」


「いや、待ってくれ。話が全然見えてこねえ。なにがどうなってる? そもそも救うって誰からだよ?」


「……情けない話なんだけどさ、要するに内輪揉め。いま、アークガルドがリベンタに向かって侵攻中なのは知ってるかい?」


「いんや。初耳だ」


 動揺しないように冷静さを保って聞いていたが、アークガルド軍がリベンタにも牙を剥こうとしてんのは流石に焦りが募る。ここでリベンタに期待する兵力を奪われたりなんかしたら勝ち筋がなくなっちまう。


「スーを筆頭にあたいも含め徹底的に抗戦する派と、さっさと尻尾振って降伏しようとする恩知らずの裏切り者派にすっぱり分かれちまってね……。連合評議会でバチバチやり合ってたんだけど、あの裏切り者達が一線超えやがったんだ。スーを拉致りやがったんだ! このまま連合総統の首を手土産に降伏するとか言い出してさ! もうその場で裏切り者を八つ裂きにしてやろうかと思ったよ。でも……それをやっちまったらリベンタ内で戦争さ……。そんなことしてたんじゃ、スーを助け出せたとしても……」


 なるほどな。ロメリアの考えがようやく見えた。ロメリアは内輪で揉める事こそが最大の愚策だと理解しているのだ。リベンタ内で消耗した戦力ではアークガルドが攻めてきた時に対処しきれなくなってしまう。とくれば、内ではなく外に意識を向ける必要がある。外にある戦力を頼り、なるべく消耗を抑え一気にシトラスーを奪還。さらには降伏派の鎮圧。それこそが自由都市リベンタを存続させる唯一の道だと導き出していたのだ。

 つか、ロメリアって見た目や言動が粗暴で学のねえ感じだけど、しっかり先の事まで見据えてるのは流石は一国の国主だと感心してしまった。


「リベンタにもさ、噂が流れてきた。邪知暴虐のアークガルドに一矢報いた奴らがいるって。あんたらなんだろ?」


「……俺ではねえけど、確かに俺の部下ではあるな」


「やっぱり。だからさ、力を貸しておくれよ。スーを助け出してくれた暁にはなんだって言うこと聞く。なんでもあんたの言う事聞くし、この身体だって好きにしていい。だからお願いだ。スーを救ってくれ」


 気が強そうな女なのに、目に涙いっぱい溜めちまってまぁ。

 答えは考えるまでもなく最初から決まってるし。


「安心しろよ。俺は和姦派だ。身体なんか差し出さなくてシトラスーは救う」


 ロメリアの提案は俺達シルフヘイムにとっても見過ごせない事態だからな。互いの利益のためだ。


「ありがたい。感謝するよ、マサヒロ」


「おう、気にすんな。…………あの、やっぱりおっぱいくらい揉んでも?」


 ロメリアは呆れ顔で笑い、やれやれとはち切れそうな胸を差し出した。

 どうなったか気になるだろうが、その後の展開については伏せさてもらうとしよう……。


 数十分後――。

 ホクホクしながら天幕の外に出て夜空を見上げる。

 どうしてだろう。世界はこんなに美しかっただろうか? なにもかもいつもと違って見える。


「満足したかい? 報酬の半分は払ったんだ。しっかり頼むよ」


「任しとけ。大船に乗ったつもりでいろよ。早速だが、すぐにリベンタに向かおう」


「あたいはかまわないけど、いまあんたの部下おねむの時間じゃないのかい?」


「どうせ向かう先は一緒なんだ。先に行って出迎えてやるとするさ」


 俺は指笛を吹き、相棒を呼び出した。

 俺達の前に降り立つファヴ。ロメリアは驚愕の表情で呟く。


「噂で聞いたけど、本当に竜を使役する人間がいるとはね……。あんたって見た目よりすごい奴なの?」


 今更思い知ったか。俺は竜を駆る騎士。だから、一人でリベンタに殴り込みに行っても問題ナッシング。やばくなったら、ファヴに一掃してもらえばいいだけだからな。

 ここからは時間の勝負だ。アークガルド軍にシトラスーを引き渡すのが先か、それとも俺が救い出すのが先か。

 俺はファヴに跨り、手を差し出す。


「乗れ。ロメリア」


「あいよ」


 俺はロメリアを連れ、一足先にリベンタに向かい飛び立った。



 

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