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disappear  作者: 黒土 計
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chapter2 赤い花の群れ

「キャ〜!一番乗り!」


そうハシャギながら、ステージ最前に陣取ったエリゴン達。


喜んでる彼女達と正反対に私の心は複雑だった。


1列目じゃない方が良い。


と言うよりは、1列目じゃ困る。


乗りに乗った人並みにもみくちゃにされて、髪型が乱れる心配もあるけれど


一番の理由は、YUIちゃんから見えない場所に居たい。


YUIちゃんに私の存在が見えない場所から、私がYUIちゃんを見ていたい。


「どうして?1列目だよ!?」


「良いの本当に!そんな前じゃなくて後ろで見てるから」


「え〜?何で!?」


「じゃあさ、あと2人来るから。誰かいないと後ろの子達が割り込んでくるし」


遅れて来る子の場所取り。


その子達が来たら、後ろから見てる約束で2列目に陣取った。


どんどん場所は埋まり後ろが何列目ぐらいなのか見えない。


携帯の時計は6時42分。


未だに着てないYUIちゃんの返信にヤキモキしてると誰かの携帯が鳴った。


「うちらは篤側の1列目だよ!あ!見つけた!」


客席側に振り返った彼女に合わせてエリゴン達が誰かに向って手を振っている。


1番後ろから振り替えす誰かの手だけ見える。


その手が人混みを縫って近づくに連れて、見え隠れする赤い花。


「何か更にパワーアップしてない!?花デカ!」


「スゴイ!スゴイよエリゴン見える?!あれ目立ち過ぎだって!」


「私背低いから見えないよ!って、え〜!!?」


「久しぶり〜!場所とって置いてくれて、ありがとうね!」


「ちょっとハイジ!やり過ぎじゃねえ〜!?」


遅れてきたハイジと呼ばれた彼女。


金髪と言うよりは、白に限りなく近い金髪。


どこの国か判らないけど、ヨーグルトのCMでみたような民族衣装に


頭の飾りに付けられた沢山の赤い花。


カゴバッグにも沢山の花を持った人形のような彼女に、全ての思考を奪われた。


「何かハイジ通り越して、スゴイ事になってるジャン!」


「こんなのどこで売ってるの?」


「東京にあるんだけど、花は100均で買って自分で付けて」


「このバッグの中の花は何か意味あるの?」


「これも全部100均。で、この下は普通に荷物」


「何て言うの?こういう服って」


「ブルガリアの民族衣装でトラキアって言うんだけど」


「ゴッドって言うより、ドーリーになってない!?」


「ドーリーじゃないし!化粧は普通でしょ!?」


「いや。一見ドーリー族だよ!」


「私はアナタのお人形って、夜1人萌えてんじゃないの〜?」


「ただ見つめているだけ〜死にタクテも死ねない刹那〜ってヤバ!」


みんなが話に盛り上がる中、ただ1人着いていけない自分。


ハイジの登場で更に声が大きくなるエリゴン達。


「ペーターは?」


「今、トイレ。あ!来た!」


後ろから割って進むペーターと呼ばれる子。


ハイジと違って背が高く


後ろの方からでもハイジの男版のような服を着てる事さえ気がついた。


「うち等は、ここで良いの?」


「ユウナンが取って置いてくれたから大丈夫!」


「ユウナン?」


「あ!そっか!紹介するね!」


流れでエリゴンに紹介された私。


上品な口調のハイジ。


自分の事を俺と言う、ボーイッシュを通り越して男にも見えるペーター。


「初めまして。ハイジと申します。」


「で、この背が高い迷惑なのが、ペーター!」


「迷惑言うな!一応気にしてるんだぜ?」


「私達、始めて会った人とは抱き合うようにしているのですが」


「もう4日も風呂に入ってないし。俺ら臭うんだよね」


「その代わりと言っては何でしょうが、どうぞコレをお受け取り下さい」


セリフのような言葉と共にハイジから手渡された一厘の赤い造花。


「この赤い花は、きっとアナタに幸せをもたらしてくれるでしょう」


「え〜!私も欲しい!」


「陽ちゃんは、黄色って感じだけど、赤しかないからコッチかな」


「私は、大きいのが良いだけど!」


大きな名前も判らない造花。


ハイジに貰って頭に付けオドケテル子と、私を含めて花を持った総勢8名。


「うちら、超目立ってない!?」


「何て名前にする?フラワー族?フラワー・・・」


「ダッさいって!やっぱり命名は、篤君に決めてもらおうよ!」


そうハイテンションでハシャグ中、ふと誰かの視線に気がついた。


見渡すと、会場の誰もがエリゴン達に注目してる。


他の子達の視線に、私も仲間として囲われてるような気がする。


でも、嫌な気分じゃない。


私もこの軍団の1人。


この空間の中で、何がとは言えないけど、何かにおいて1番の軍団に感じる。


きっかけを見つめて話しかけようとしてるように見えるドギマギしてる子。


視線が合ったと同時にニッコリ会釈をしてくれる子。


周囲の視線に心地良ささえ感じて、私のテンションまで上がっていく。


「ユウナンはハイジの隣の方が良いんじゃない?俺っち結構暴れるから隣でも見えないよ?」


「大丈夫!私聞こえれば良いだけだから」


「本当にユウナンって良い子だよね〜!出会えて嬉しいよ!」


ハイジの言葉に倍増していくライブに来た喜び。


2人が来たら後ろに行く約束なんて忘れ、1列目にエリゴン達。


2列目ハイジとペーターに並んで。


7時ジャスト。客電は消え、先行のライブがスタートした。

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