その後
その後、一行は、笑界の王城に招かれた。世界を救った勇者一行として、国王から、正式な称号が与えられることになったのだ。世界を救った勇者一行として、国王から、正式な称号が与えられることになったのだ。
謁見の間で、国王は、厳かに語った。
『この度の功績に対し、勇者の称号を授ける。これより、お前たちの代表者には、笑界の歴史において、特別な称号が与えられる』
長介は、クラスメートたちに背中を押され、国王の前に進み出た。
『怒長介。お前に、勇者の称号「べえ」を授ける』
「……べえ?」
長介は、思わず、聞き返した。
『そうだ。「べえ」とは、笑界において、最高位の勇者を意味する、古来からの称号である』
クラスメートたちが、互いに顔を見合わせる。
『怒長介……以後、お前は「超助兵衛」として、この世界に名を残すことになるだろう』
「……超助兵衛……」
長介は、自分の新しい称号を、ゆっくりと噛み締めた。どこか、聞き覚えのある響きだった。
謁見が終わった後、クラスメートの川村が、長介に近づいてきた。
「……超助兵衛さん、これから、どうするの?」
「……どうするって?」
「この世界に残るのか、元の世界に戻るのか」
長介は、少し考えてから、答えた。
「……まだ、わからない。でも――」
長介は、窓の外の青空を見つめた。
「……この世界で、色々な奴らと出会って……それぞれに、それぞれの『笑い』があるんだなって、思った」
「うん」
「……俺、これまで、誰の話にも笑えなかったけど……今は、ちょっとだけ、わかる気がする」
「何が?」
「……笑いって、誰かを傷つけるためのものじゃなくて……誰かと、繋がるためのものなんだな、って」
川村は、優しく笑った。
「……長介、本当に、変わったね」
長介は、少し照れたように、空を見上げた。
その後、長介――「超助兵衛」は、何百年にもわたり、笑界の人々から、語り継がれる存在となった。彼の物語は、「笑いながら死んでいく世界で、笑わない少年が、最後に、本当の笑いを見つけた物語」として、世代を超えて語られ続けたという。と同時に超助平という名前はネタにされ、いじくり廻された。あの世の長介が「だめだこりゃ」と言っているように感じた。
そして、ボケスライムは、その後も、相変わらず、何も考えずに、世界のどこかを、ぽよぽよと漂い続けているのだった。
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THE END
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この物語を最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
「笑いながら死ぬ世界」という、およそ前代未聞の設定から始まったこの物語は、書き進めるうちに、私自身が思っていた以上に、深いところへ向かっていきました。
笑いとは何か。
誰かを傷つけるためのものではなく、誰かと繋がるための、最も柔らかい手段――そう気づいたのは、実は、怒長介本人と同じタイミングだったかもしれません。
長介は、笑えない少年でした。クラスでは「面白くない男」と呼ばれ、誰のギャグにも反応せず、空気を凍らせると陰で言われていました。しかし笑界では、その「笑えない」という性質こそが、最大の武器となりました。
冷静さ。欲のなさ。感情に流されない態度。
これまでコンプレックスだったものが、異世界では「強さ」に変わる――この逆転が、この物語の根幹にあります。
登場するモンスターたちは、それぞれ「お笑いの型」を持っていました。誇張するワイバーン、自虐するリッチ、誤解を生むミスアンダースタンド、ギャップを抱えるドラゴン、矛盾を突くデーモン……。
しかし、よく考えてみると、彼らはみな、どこかで「誰かに気づいてほしかった」存在でした。誇張するのは、本当の自分を見てほしいから。自虐するのは、認めてほしいから。誤解を生むのは、うまく伝えられないから。ギャップを抱えるのは、怖いから。矛盾を突くのは、正直でいてほしいから。
長介が彼らと向き合えたのは、彼自身が「正直」だったからだと思います。嘘をつかず、矛盾を認め、欲張らず、ただ目の前の相手を、その存在のまま受け止めようとした。
そして最後に世界を救ったのは、長介でも、魔法でも、レインボーでもありませんでした。
何も考えていない、ボケスライムの「クスッ」という、たった一度の笑い声でした。
意図しない優しさが、世界を動かすことがある。これが、この物語で一番伝えたかったことかもしれません。
お笑い連邦大学魔法研究所の5人の指導者たちについても、一言触れさせてください。
タケ、滝川、おっさー、嵐山、岩田――彼らはそれぞれ、笑いの「型」を持った人物でした。落語のオチ、ピン芸の肯定、漫才の間、コントの連携、そして「細かすぎて伝わらない物まね」。
笑いには、こんなにも多くの「形」がある。そのことを、彼らは身をもって教えてくれました。
特に、おっさーの言葉は、今も胸に残っています。
「20年間、誰にも認められなかった。でも、ある日、一人の客に『おっさーさんのネタ、好きです』って言われたんです。それだけで、続けられたんです」
誰かに「好き」と言われることの力。それは、魔法よりも、レインボーよりも、もしかしたら強いのかもしれません。
橘と宮下のコンビについては、書いていて、一番胸が痛かった場面でした。
宮下が最後に言った言葉――「お前との漫才、楽しかった」。
笑いながら死んでいく世界で、それでも笑い続けた宮下は、ある意味、この物語で一番「笑界らしい」人物だったかもしれません。
橘がその後、一人でピンとして立ち続けた姿に、おっさーの20年間が重なりました。
そして、怒長介――のちの「超助兵衛」。
彼は何百年にもわたり、笑界で語り継がれることになりました。しかし、「超助兵衛」という名前は、後世の人々に盛大にネタにされ、いじくり廻され続けたそうです。
あの世の長介が、「だめだこりゃ」と言っているように感じます。
笑えない少年が、最後に、自分の名前でみんなを笑わせることになるとは――これ以上の「オチ」は、ないのではないでしょうか。
それが、滝川が教えてくれた「オチ」というものの、本当の意味だったのかもしれません。
最後に、根本・川島・田辺のトリオについて。
全員ボケになったとき、全員ツッコミになったとき、進行役の田辺が半泣きになりながら「俺、本当に困ってるんだ」と叫んでいた姿を、どうか忘れないでください。
チームには、進行役が必要です。目立たないけれど、いなくなると誰も止まらなくなる存在が。
これは、笑界に限った話ではないと思います。
笑いながら死んでいく世界で、笑わない少年が、最後に本当の笑いを見つけた。
そして、その笑いは、一人ではなく、みんなと一緒に作るものだった。
そのことを、この物語を通じて、少しでも感じてもらえたなら、これほど嬉しいことはありません。
また、どこかの笑界で、お会いしましょう。
著者より




