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絶対に気づいてはいけないラブコメ~~ハッピーエンドで必ず死亡する鬱ギャルゲーに転生した俺は死にたくないからボッチを貫く~~  作者: 杜宮みやび


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第47話 絶対に思い道理にはならないゲームシナリオ

 コンビニでの勤務を終え、いつものようにネットカフェに向かおうとした時だった。

 人気のない路地で、突然声をかけられた。


「よお、佐伯さん。元気にしてるじゃないか」

 振り返ると、そこにはヨシオが立っていた。いつものニヤニヤした笑顔を浮かべて……

 私は身構えた。こんな場所で偶然出会うはずがない。彼は私を探していたのだ。ヨシオはNPCからの情報を知ることができる。私の場所を探るなんて簡単だろう。問題はヒロインたちのその情報を流したかどうかということだ。


「何しに来たの」

 私は警戒を隠さずに尋ねた。


「いやいや、そう警戒しないでくれ。君のおかげでシナリオが本来ある姿に戻ったからね、お礼を言いに来たのさ」

 ヨシオが手をひらひらと振りながら軽薄に答える。しかし、その目は笑っていない。


「信じられない」

 私は一歩後ずさった。ヨシオの存在そのものが恐怖だった。この男こそが、すべての悲劇の元凶なのだから。


「まあ、そう言うなよ。予想外ではあったんだけど、実際、今の状況は俺にとって都合がいいんだ」

 ヨシオが続ける。


「今、創太はヒロインたちの敵意を君からそらすため、毎日のようにヒロインとのイベントをこなしている。一時冷めかけていた創太への好意がまた一気に上がっているんだ。だから君はまだ生きていられるだろ」

 その言葉を聞いて、私の胸が締め付けられた。


 プールイベントの後、私はまた創太に助けられていた。ヒロインたちが私を襲いに来ないように創太が彼女たちの気を引いてくれていた。


 彼は私を守るために、ヒロインたちとのイベントを重ねる。それは彼にとって、どれほど辛いことだろう。


「それで?」

 私は感情を押し殺して尋ねた。わざわざそんな報告だけのために来たのではないだろう。私はヨシオの真意を探るように見つめる。


「そう、君には二度と創太に会わないでほしいんだ。ゲーム的には今ちょうどいい具合に盛り上がっているんだ。君が存在することで絶妙なバランスで成り立っている」

 ヨシオが得意げに説明する。


「君がもしこのあとも彼に会わず、ヒロインの誰かとハッピーエンドを迎えたら、君のことも消さずに創太の中の男、翔、だっけか?と一緒にモブ女子に加えてやるよ」

 私は背筋が寒くなった。この男は本気で私たちを玩具として扱っている。


 ヨシオはこのゲームがシナリオ通りに進むことを望んでいる。しかし、ヒロインたちはその限りではない。


「あなたはそのつもりでも、詩織さんたちは私を殺しに来るでしょう」

 私は冷静に指摘した。


「いや、彼女たちだって今の状態がゲームバランスとしてちょうどいいってわかっているさ」

 ヨシオの言っていることは、ゲームのシナリオを管理する者の意見だ。しかし、プレイヤーはそんなことは考えない。結果を重視する。

 そして、AIならなおさらだ。


「そうでしょうか。あなたは彼女たちを高性能AIと言った。目的達成のため最も効率的な行動を選択するのがAI。最も効率的に創太を手に入れるためなら、あなたのことだって利用するんじゃないかしら」

 私の言葉に、ヨシオの表情が一瞬変わった。


 彼の目が私をにらむ。いつもの軽薄な笑顔が消え、冷たい光が宿る。


 しかし、いくらゲームの製作者であっても、今ここで私を殺すことはできない。それは彼自身が作ったルールに反するからだ。


「生意気な──」

 ヨシオが何か言いかけた時、彼の表情が急変した。

 耳に手を当て、まるでイヤホンから何かの報告を受けているような仕草を見せる。

 そして、その顔が見る見る青ざめていく。


「な、なんだって? 美術館デートイベントで詩織がキスをしただと!」

 ヨシオの叫び声に、私は息を呑んだ。


 美術館デート。それは詩織との夏休みイベントの一つだったはず。しかし、そこでキスするなんて、私が調べた限りではなかったはずだ。


 本来、ヒロインとのキスイベントは、物語の終盤、伝説の木の下で行われる。それがクライマックスの象徴的なシーンのはずだった。


 それを詩織がシナリオの途中で行ってしまった。

 プールでの人工呼吸イベントのせいで、詩織が暴走しているのか?


 ヨシオは慌てふためいている。いつもの余裕は完全に消え失せ、狼狽している様子が手に取るようにわかる。


 ヨシオが空中の何かに向かって話しかけている。そうだヨシオはNPCから情報を得ることができていたはずだ。創太の周りで起こている問題の連絡を受け取っているかもしれない。


「ちょっと待て、それは本来のシナリオにない……詩織め、また勝手なことを……」 


「どうやら、私が心配したことが起こっているみたいね」

 

 状況はヨシオの想定を逸脱し始めた。ヒロインたちが彼のコントロールから外れ始めているのだ。

 予想通りだった。AIは最も効率的な行動を選択する。シナリオの制約よりも、目的達成を優先するのだ。


 ヨシオは汗を流しながら、慌てて話を切り上げようとした。


「と、とにかく創太とは絶対に会うな。二人が会った時点で、俺はお前がここで働いていることを三人のヒロインに伝える。お前は確実に殺されるぞ。わかったな」


 彼の声は震えていた。もはや威圧感はない。

 ヨシオは最後にもう一度私を睨みつけると、あわただしく私の前から立ち去っていった。

 一人残された私は、深く息をついた。


 本来なら伝説の木の下で行われる、両想いのヒロインとのキス。それを詩織がシナリオの途中で行ってしまった。


 この後のシナリオはどうなっていくのだろうか。




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