第40話 絶対に伝えたい!この世界の真実
それからもヒロインたちの私に対する監視は、主に詩織を中心に続いた。
テストまで残り三日を数えたある日、私は下駄箱の前で創太に呼び止められた。
「佐伯さん」
突然のことに私は戸惑う。詩織たちヒロインは一緒ではないようだけど、ここではNPCの監視が厳しい。緊張しながら言葉を返す。
「神代君……どうしたんですか?」
「ちょっと話がしたくて。喫茶店でも行かない?」
創太としてもヒロインと離れて私の話が聞きたいと機会をうかがっていたようだ。
そうだ、校舎を出てから校門までの区間であればシステムの制御がかからない。それにあのとらわれている女子生徒の姿を知ってもらうには直接見てもらうのが一番だ。
「わかりました。ちょうどいいので神代君にも見てもらいたいものがあります。私は校舎の外に出るけど、神代君は校舎から出ないで、そこからほかの生徒のことを見ていてもらえますか?」
創太が頷くのを確認して私は一歩校舎を出た。
「あれを見てください」
私が帰宅する女子生徒たちの姿を指さす。
ガラス窓から帰宅する生徒たちの姿を眺めていた創太の表情が固まった。
「な、なんだこれ……ぼくが帰るとき、こんなことは今までにとなかったぞ。」
創太が絞り出すように言葉を発した。
「たぶん主人公がいる場合は情報が上書きされるんだと思います」
創太は驚愕で言葉がつづかない。
「校舎を出て、校門をくぐるまでの間。なぜだかわからないけど、この区間だけはゲームのシステム制御から一時的に解放されるんです。私も校舎から出ているので、比較的自由に行動できます。見てください。叫んでいるのは全員女子生徒です。特徴の無い男子生徒は無表情のまま歩いています」
そこまで話すと私の足が勝手に校門に向けて歩き出した。いつまでも校舎前に立ち止まっていることはできないようだ。
以前は自由に動いて叫ぶ女の子たちに話を聞くこともできたが、さいきんはただまっすぐ校門までの歩みが固定されている。それはまるでベルトコンベアーで運ばれる荷物のようだ。
「そろそろ私も行かなきゃいけないみたい」
「ま、待って!」
歩き出した私を追って創太も校舎を出る。すると、それを合図に世界は塗り替えられた。
阿鼻叫喚の世界は、和気あいあいとした学生たちの放課後へ変わる。楽しげに談笑して帰宅する女子生徒たち。さっきまでの悲鳴はどこにもない。
「どうなっているんだ?」
不思議そうに帰宅する生徒の列を眺める創太。しかし、ここでは今はまだ話せない。
「私の話せる範囲ですべてお話しします。ついてきてもらえますか?」
校門を出て体の自由を取り戻した私は、調査済みのNPCのほとんどいない喫茶店に創太を案内した。
喫茶店で私は創太にこの世界の仕組みを話した。この時点で伝えられることはすべて伝えたと思う。
本当は最後に、このゲームをハッピーエンドでクリアすると女子生徒としてモブ女子生徒として永遠にとらわれてしまうこと、そして私が隼人であることを伝えたかった。
でもそれはシステムの禁則事項に触れることになる。
私はシステムによって体の自由が奪われる前に話を切り上げ創太を一人残して喫茶店を去った。
これから創太が主人公としてどう行動するのかはわからない。私も少し無理をして動きすぎた。ヒロインたちにも目をつけられている。今伝えた情報もシステムには許容されないだろう。しかし情報は伝わった。この後シナリオがどのように分岐して進んでいくのか、それは創太の行動次第だ。




