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絶対に気づいてはいけないラブコメ~~ハッピーエンドで必ず死亡する鬱ギャルゲーに転生した俺は死にたくないからボッチを貫く~~  作者: 杜宮みやび


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第38話 絶対に見つかってはいけない秘密の勉強会 みのりサイド

 その時、図書室の入り口から声が聞こえてきた。


「神代君はいないかしら?」

 詩織の声だった。


 「あれ図書室なんて珍しいね、詩織ちゃん」

 続いて小鞠の声。


「二人とも、創太君を探してるの? 私も探してるの」

 舞美の声まで聞こえてくる。


 さっきまでの制限が嘘のように、体に自由画もどった。


 三人のヒロインがここに現れたことで、システムが私のことを制御するためのメモリの余裕がなくなったのかもしれない。

 このヒロインたちと深くかかわるのは危険だけど、そのおかげで自由を取り戻せたというのなら今は感謝しておこう。


 問題は彼女たちが何の目的でここにやってきたかということだ。


 単に創太と勉強イベントを起こしたいというだけならいいのだけれど、私を排除するようにシステムから何らかの働きがあったのだとすれば、この後の行動は十分注意しなくてはいけない。



「やばい、見つかる」

 詩織たちの登場を知って創太は慌てて机の下に隠れる。


「神代君?」


「ごめん、ぼくがいることは秘密にしておいてくれないかな。頼むよ」

 机の下から両手を合わせて頼み込む。私もヒロインたちと直接接触するのは避けたかったけれど仕方がない。 私は困惑しながらも小さく頷いた。

 

「あら、佐伯さん」

 詩織が私の存在に気が付いて声をかけてきた。舞美と小鞠も続いて3人が図書室内に入ってくる。


「こんにちは、霧島さん」

 できるだけ平常心を保って返事をする。ここで創太をかくまっていることがバレたら私もただでは済まない。


「一人で勉強? 感心ね」


「はい、テストが近いので」

 そういいながら、詩織は机に広げられた二人分の勉強道具を眺める。しまった、そこまで気にしている余裕がなかった。しかし今から慌てたら逆に怪しまれる。詩織の視線には気づかないふりをして会話を続ける。


「ふ~ん、一人で勉強ね…… そういえば、神代君を見かけなかった?」

 詩織が探るように聞く。


「神代君ですか? 見てませんけど……」

 緊張を顔に出さないよう、細心の注意を払って答える。詩織の表情に変化はない。ここで問い詰めて吐かせようというつもりはないようだ。しかし、私を見つめる視線には明らかにいらだちが感じられる。


「そう、残念ね」

 詩織はひとまずこの場は引いてくれるようだ。今後の行動が難しくなったのは確かだが、今日のところは創太と関係を持てただけでも上々と考えよう。私も早めにこの場を立ち去ってこのイベントを終了させようと思った。

 しかしその時、詩織に続けて舞美が口を開いた。


「佐伯さんって、神代君と話したことある?」

 虚を突かれた私は答えに詰まる。舞美は詩織と違って私の嘘には気づいていない様子なのに。それなのに私との関係を問うてくるのはどんな意図があるのだろう。


「え? あまり……なぜですか?」


「いえ、最近神代君の様子が変で。もしかして隠れて誰かと……」


「舞美ちゃん、考えすぎだよ」

 小鞠が止めに入る。私のことなどどうでもよくて速く創太を探しに行きたいようだ。

 

「そうね、いったいどこで勉強しているんだろう?」


「奥のテーブルも探してみようよ」

 そう言って小鞠はすでに棚の奥へ走り出していた。


「こら、小鞠、図書館内は静かに!走っちゃダメだって!」

 と、舞美も大声で叫んで追いかけていく。


「佐伯さん、邪魔してごめんなさいね」

 最後に詩織もそういって机を離れていった。



  

 三人はしばらく図書室内を見回したが、諦めて出て行ったようだ。


「神代君、もう大丈夫だと思います」

 テーブルの下で小さくなっている創太に声をかけると、周囲を警戒しながらゆっくりと這い出してきた。


「大変ですね、神代君も」

 主人公としてこのゲームを進めるのは相当な苦労だろう。私が配信内容をサプライズにしたかったため、翔にはゲームのタイトルを教えていなかった。

 そのせいで翔は『トキメキめめんともり♡』の攻略情報を知らないままこのゲームに挑まなくてはいけなくなってしまった。


 せめて私があの時、コントローラーを離さなければ……、いやそもそも調子に乗ってこんなゲームを始めなければ……


 私の思いなど知らず、創太は微笑みながらお礼を言った。


「ありがとう、助かった」

 

 その笑顔を見た瞬間、胸の奥で何かが締め付けられるような感覚を覚えた。最初はただ友人が無事に過ごせているか心配なだけだった。でも今、創太のほころんだ表情を間近で見ていると、なぜか心臓の鼓動が早くなる。

 

 おそらく今回のイベントはここで終わるだろう。でも――

 

 もっと一緒にいたい。

 

 その想いが胸に湧き上がった時、私は慌てて首を振った。違う、これは友達として当然の感情だ。親友が困っているのを見ていられないだけ。そう自分に言い聞かせる。

 

「でも、どうして隠れたんですか?」


「実は、三人とも勉強会に誘ってくれたんだ。でも、みんな一緒だと修羅場になりそうで……」

 恥ずかしそうに頭をかいて話す創太。

 

「なるほど、それで私と勉強することにしたんですね」

 

 私を選んでくれた。詩織でも舞美でも小鞠でもなく、私を。その事実に、理由のわからない喜びが込み上げてくる。でもそれは、きっと友達として信頼してもらえたからだ。そうに違いない。

 

「うん。でも、佐伯さんと勉強できて良かった。また誘ってもいいかな?」

 恥ずかしそうに尋ねる創太。その表情に、私の心は大きく跳ね上がった。

 

 「……ええ、いいですよ」

 

 答えながら、自分の声が少し震えていることに気づく。なぜだろう。ただの友達なのに、どうしてこんなに嬉しいのだろう。創太と過ごす時間が、こんなにも大切に思えるのだろう。

 

 私の胸に喜びがあふれていた。その感情の正体に気づかないまま、私は創太の笑顔を見つめ続けていた。



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