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絶対に気づいてはいけないラブコメ~~ハッピーエンドで必ず死亡する鬱ギャルゲーに転生した俺は死にたくないからボッチを貫く~~  作者: 杜宮みやび


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第37話 絶対に伝えたい、私の正体

 放課後、私は図書室での勉強を創太に提案した。放課後図書室は生徒の自習用に開放されているし、何よりヒロインたちに見つかりにくい。

 詩織はともかく、舞美と小鞠の二人は図書館にはあまり来ないタイプだからだ。

 

 図書室の中にある自習スペースは4人掛けの大きな丸テーブルが10卓以上並んでいた。私たちは一番過度の比較的目立たないテーブルを選び準備を始める。


 図書館の一角に席を確保し、私たちは教科書を広げた。


「さて、どの科目から始めようか?ぼくは数学が一番苦手なんだよね、佐伯さんは何か苦手ある?」


 気さくに話しかけてくる創太。そんな創太とは対照的に私は非常に緊張していた。


 図書室の周囲を見渡す。私達以外にも数人の生徒が自習室を利用していたが、そのどれもが特徴のない典型的なNPCだ。ヒロインやヨシオの姿がないことを確認し安堵する。今なら創太に私の正体を伝えられるかもしれない。


「そうなんですね、私は……」

 みのりが答えかけて、言葉を飲み込んだ。私が話し出した途端図書室の空気が変わった。


 創太は気づいていない。今この部屋のすべてのNPCの目が私たちに向いている。私の言葉、動きを監視している。


 監視者はヨシオだけではなかったのだ。彼が情報通な理由。


 ヒロインと主人公の行動を監視できる秘密はこのNPCからの情報を得ているからなんだわ。創太が私を勉強に誘った時からヨシオは私を監視対象に加えていた。駄目だ、ここで下手な行動はできない。


「わ、私も数学は苦手です。一緒に頑張りましょう」

 ひとまず、自然な形で創太と関係を持とう。私はカバンから数学の参考書を取り出しテーブルに開いた。

 

「この問題、解けました?」


「うーん、ちょっと難しいな」


「私も悩んでます。でも、この手の問題って、パターンがあるんですよね」


 私は今の状況を忘れて、普通に創太に勉強を教えていた。

 懐かしい、学生時代テスト前はいつも一緒に勉強をしていた。今は姿も立場も違ってしまったが、創太との会話は気持ちが張り詰めていた私に安らぎを与えてくれた。


 この世界に来て、私はずっと一人だった。誰に頼ることもできず、日々自分が侵食されていく恐怖におびえていた。

 それが今、監視されているとはいえ親友と自由に話ができる。その幸せに浮かれすぎていたのかもしれない。


 しかしそんな気持ちも、創太の次の質問によって私は現実に引き戻されることとなる。


 

「佐伯さんって、この学校生活をどう思う?」


 真剣な瞳が私の顔を見つめている。私の正体に気づいたわけではないのだろうが、私がただのNPCと違うということは何となく感じ取ったみたいだ。


「この学校生活?」

 私はゆっくりと言葉を選ぶ、周囲からの視線が再び厳しくなる。下手なことは言えない。でも、今伝えなくては二度とこんなチャンスは訪れないかもしれない。


 意を決して口を開こうとする。すると、体から私の意識が切り離されたような違和感を感じた。私の中のみのりが勝手に口を開いてしゃべりだす。 


「うーん、そうですね。まだ始まったばかりですけど、楽しいですよ。私はどちらかと言うとおとなしい方だからまだ友達とか少ないけど、いろいろなことにチャレンジしていきたいと思っています」

 キャラクターに会った模範的な回答を返す。


 違う!私が言いたかったのはそんなことじゃない!


 気力を振り絞って体の主導権を取り戻す。翔に伝えなきゃ……


「この世界は……ゲーム……」


「え?」

 やっと絞り出した言葉はゲームのシステムそのものに影響を与えた。世界が慌てて調整に入る。


 私の意識は再びみのりの体から切り離された。


 主人公である創太にもシステムが何らかの影響を与えたのか頭を押さえて体を折った。

 

「大丈夫?神代君?」

 私じゃない意識のみのりが創太を支える。


「ああ、大丈夫、ちょっとめまいしたみたいだ」


「今日はもう帰った方がいいわ」

 危険を感じたシステムが強制的にこのイベントを終了させようとしているのだろうか。


 「そ、それより、さっきの『この世界がゲーム』ってどういうこと」

 苦しそうにしながらも創太は私に向けてさっきの言葉の真意を訪ねてくる。しかし完全に体の制御を奪われた私にこたえるすべはない。


「え?何のことですか?」機械的に私の口が答える。


「さっき何か言いかけただろ、ゲームが何とか」


「さあ、何のことでしょう?」


「ついさっき、ぼくが倒れる前のことだよ。何か言いかけただろ?」


「え?何のことですか?」


「覚えていないのか?」


「さあ、何のことでしょう?」

「え?何のことですか?」

「さあ、何のことでしょう?」


 機械のように繰り返す私を見て、創太は椅子から立ち上がり、私との距離を測るように一歩後ずさった。


 倒された椅子の音が静まり返った図書室に響いた。

 創太の表情が困惑から疑念に変わっていく。

 

 

 その時、図書館の入り口から声が聞こえてきた。


「神代君はいないかしら?」

 詩織の声だった。


 途端に私の体の自由が戻る。入り口を見るとヒロイン三人が創太を探しに図書室内に入ってくるところだった。


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